Interview by Shizuo ”EC” Ishii
2016年9月にRiddimOnlineに掲載されたインタビューです。
8月頭にはジカ熱のためにカナダのショーをキャンセルというニュース。その直後には横浜レゲエ祭などのジャパン・ツアーのハードワークを経てジャマイカ帰国。そしてついに発表されたVPAL(VPインディ配給)からのニュー・アルバムのリリース。それも10年ぶりの入魂の大作である。タイトルが『アンストッパブル』。だったらキングストンにSKYPEするしかねえな。
●もう体調はバッチリかい?
Beenie Man(以下、B) : ハッハッ〜ハ、ファーザー!久しぶり!もちろん。
●この前は見に行けなくてゴメン!腰が痛くて、アッハッハ!元気だね、じゃあインタヴューするよ。始めてDeejayをしたのは5歳だって? たしか90年代にブレイクする前に子供時代にDeejayデビューをしていたんだよね?
B:そう、子供の頃から音楽をやっていたよ。僕は5歳の時にDeejayを真剣に始めて、8歳の時にはレコーディングを始めたんだ。1983年には初めてのライブ・ダンスホールレコーディングを(Bunny Leeの)Lee’s Unlimitedから出したんだ。77年からミュージック・ビジネスに入って、King Jammy’s Sound、Black Scorpio Sound、Lee’s Unlimited、Volcano Sound、Gemini、Wah Dat、The BoogiemanことBarry Gなどのジャマイカの大きなサウンドと仕事をしてきたよ。もちろんもっと沢山あるけど、僕は彼ら全ての専属Deejayだったわけではなくて、Lee’s Unlimited Sound, Master Blasterの専属だったんだ。Master Blasterは僕の叔父のサウンドで、そこで歌い始めたんだ。今までの人生でずっと音楽をやってきて38年、スターって呼ばれるようになってからは26年だよ。
●たしか生まれはWaterhouse(King TubbyやJammy’sがあるエリア)だったよね?
B:そうだよ。僕の叔父はJimmy CliffのパーカッショニストでSidney Knowlesと言うんだ。彼に勧められて始めたんだけど真剣に取り組む様になってTastee Talent Contestで優勝してTVに出演して、それでBarry Gと一緒に働く様になったんだ。
●それで、一度は休んでいたんだっけ?それともずっとやっていて90年代にブレイクしたんだっけ?
B:あれは音楽業界が大きく動いた時期だったんだ。みんながレコーディング・アーティストになりたいと動き始めた。僕が始めた頃(70年代後期)は知っての通りまだサウンドシステムの時代だ。ヴァイナルのプレイだったしターンテーブルも1つで、現在のDeejayとは別物だった。サウンドシステムのライブで歌う僕たちのことをDeejayと言ったんだ。そして、音楽が変わってどこのサウンドもDeejay & サウンドという形をとらなくなってきて、そこからミチガン&スマイリーなどのアーティストがレコーディングを始めてヒットした。要するにジャマイカンDeejayがスタジオに入るようになったんだ。だから85年辺りになるのかな?音楽が変わって、僕たちの様なライブ・アーティストの入る余地がなくなった。だから少しブランクを取らざるをえなくなって、一度ジャマイカを出て88年に戻ってきたんだ。
●どこに行っていたんだい?
B:カナダだよ。
●それでは、今度のアルバム『Unstoppable(止められない)』のリリース、おめでとう!コレは何枚目のアルバムになるのかな?
B:インターナショナルにリリースした枚数でも20枚以上は出しているのは間違いないんだけど、その前にもアルバムを何枚も何枚も出しているから正式な数というのはきっと20枚よりももっと多いはずだね。ただ初めて出したアルバムは10歳の時だよ。
●前のアルバム『Undisputed(議論の余地も無い)』が2006年8月29日でした。ちょうど10年前だね。10年間もアルバムを出さなかったのはなぜ?
B:Virgin Recordsとの契約が切れて、またどこかとすぐ契約するということをしたくなかったんだ。アルバム制作の話しをすれば色々なレーベルがサインをしたいと言ってきたけど、関係を切らさない程度に距離をおいてジャマイカから静観していたんだよ。
●前のアルバムと比べると、シンガーBeenie Manのイメージがちょっとあるけど。
B:それはまだ僕のアルバムをきちんと聴いてないね。このアルバムは様々な角度からダンスホールをやっているんだ。Christopher Martinとの曲は彼に歌わせて、僕はversionを担当した。Bounty KillerとTriston PalmaはTristonが歌を担当して、Bountyと僕がDeejayをやった。これらは違うものに聞こえるかもしれないけどストレートでハードコアなダンスホールDeejayなんだ。だからもっとじっくり聴いてよ。僕はシンガーではないから歌ってもいないしチャントもしてないよ。
●では、アルバムのことについて聞く前に、357Recordsというのはあなたのレーベル? 誰とやってるの?
B:Mario Campbellとやってるよ。一緒に曲も作って今年で12年になるね。
●アルバムと言えば、普通10~15曲くらいだけど、今回のアルバムには22曲も入っているけど、どうして?
B:それは10年間アルバムを出さずにみんなを待たせていたからね。
●とても幅広いアーティストたちやプロデューサーたちとやっているけど、、、ビッグネームで言えばMajor Lazerとやっているけど、これはどういうきっかけかな?
B:彼らは大物プロデューサーで僕はスーパースターだからね(笑)。 僕はプロデューサー(彼ら)を尊敬していた。彼らはタレント(Beenie man)を愛していたってことだね。自然とそうなったんだ。
●どちらが声をかけたのかな?
B:もちろん向こうさ。
●Yellow Claw(オランダ・アムステルダム出身EDMユニット)もかい?
B:そうだね、それも彼らが声をかけてきたね。
●前のアルバムでもAkonとやってたけど、今度もアルバムタイトル曲でもある「Unstoppable」でAkonとやってるね。相性がいいのかな?
B:そう、Akonはブラザーだよ。”Brother from another mother(唯一無二の大親友)”だよ。
●そしてTony Kelly,Rory(ストーンラブ)なんていうベテランともやっているね。
B:Tony Kellyは「King Of The Dancehall」のプロデューサーだし、前のアルバムでも「Hmm Hmm」をプロデュースをしてくれている。そういう人達と一緒に仕事しないわけにはいかないよ。アルバムを制作する上では正しく作っていかなきゃね。
●アルバムは10年振りだけど、その間も色々と曲をリリースしていたよね。では、今回のアルバムを作るにあたっての基準は何でしょう?
B:アルバムを作ろうとするなら、アルバムの曲を作らなくてはいけない。アルバムを作るのなら、それはまだ誰もが聴いた事のないものにする必要があるんだ。だから選んだり選ばれたりした曲はないし、アルバムの為に曲を作り、作った曲をアルバムに入れる。そしてもしシングルを作ってどこかでヒットしてアルバムに入れたいと思ったのであれば入れれば良い。
●Beenie Manならメジャーのレーベルともやれたと思うけどなぜ今回は自分でやっているのかな?
B:さっき、ちょっと触れた事にも繋がるんだけど、メジャー・レーベルとサインをする事にちょっと疲れてしまったね。自分で独立してやることによって進むべき方向がきちんと分かるし、自分がどこに行きたいかも明確に分かる。メジャーとやるということは「この曲はやらなきゃだめだ、Britney spearsとの曲だからとか、この曲はJanet Jacksonが歌っているからリリースしなきゃダメだ」という具合にね。自分でやるということは自分に選択肢があり、何を与えて何を与えてもらえるかを自ら決める事が出来る。 だからとても良いということさ!
●僕がBeenie Manと初めて会ったのは1993年、まだ20歳だったよね。当時僕がマネージメントとプロデュースをしていたThriller Uが、絶対に君とやりたいって言って、コンビネーション曲「I Just Can't Believe」をmixing Lab Studioでレコーディングしたよね〜。実はあの曲が記念すべきジャマイカで2度目のOVERHEATレーベルの第一弾7インチだった。あれからもう23年が経ってしまった。この曲は今でも好きだよ!
B:うわ~! イイネー! RASTA RASTA!! ヤーマン!
●Beenieはあれからずっとジャマイカのフロントラインを走って来たね。振り返って、何が一番の事件だった?思い出でも良いですが。
B:僕がスターになった日だね。僕は何も後悔しないし、悪い思い出も何もない。物事の全てには理由があるからね。
●僕らがレコーディングした93年の後半のBounty KillerとのBeefやClashはどこまでが本当なんだい?
B:それはリリック上だけだよ。言葉上だけで身体でのぶつかり合いはないよ。だからそこまでシリアスではなくて、言ってみればハートのぶつかりあいだね。だからその後に誰も傷ついてないよ。それに今は友達だよ。一緒にレコーディングした「 Blue Lights」という曲が今度のアルバムにも入ってるよ。
●あなたの一番のストロングポイントは何だと思いますか?リリックですか?声ですか?それともメロディーですか?
B:自分らしくいる事がストロングでいる事の秘訣だと思う。常に自分に正直で音楽に真剣に向き合う事。だからメロディーでも声でもない。それらは外から来るものだ。ストロングポイントは自分自身である事。自分の中にあるエネルギーだね。自分自身を信じていればどこにもそれを止められるものはない。ただ、はっきりしている事は自信過剰は良くないね。それは間違いが起きるもとになる。
●あなたが20歳の頃に、ほとんど同じ年齢のBuju Banton、Bounty Killer、 Beenie Manの3人は3Bsと呼ばれていました。彼ら2人についてのコメントを。
B:2人とも素晴らしいアーティストだよ。輝かしいキャリアもあるし持っている能力を最大限に使っていると思う。2人ともリスペクトしているよ。
●OK、今日はありがとう!!じゃ、またアルバム聴き込みます。
ということで、他の2つのBに対しては、わりとあっさりした、言ってみれば余裕さえ感じる答え。それだけ今のBeenieは迷い無くアンストッパブル(邁進している)という事。そして新しいアルバムにも大きな自信があると解釈。