MUSIC

Zeebra [Black World/White Heat]

 
   

Interview by 有太マンーYutaman

2011年12月にRiddimOnlineに掲載された記事です。

●4年2ヶ月振りとなる今回のアルバムは2in1パッケージで、タイトルにある「Black」と「White」は「Zeebra」の名前に由来もするキーワードであり、多岐に渡る豪華な客演陣、プロデューサー陣が集結し、ある意味「集大成」的な意気込みを感じました。リリースに至る道程をお聞かせ下さい。

Zeebra(以下、Z):初めは、単純に次のアルバムを作ろうというところからファースト、セカンド・シングルを出して。なんとなく全体像をイメージし始めた頃は、ここまでのボリュームになる予定はありませんでしたね。近年「KUROFUNE」(日本語RAPをPLAYするDJ集団)を通じて、「日本語の曲がフロアでかかるように」みたいなことで動いていたんで、それがパーティ・チューンでもちょっとハードな曲にしても、「クラブ映えするような曲は多めにしたい」とは思っていましたけどね。最初はそれくらいだったんです。でも多分、(リリースまでの)日にちが空いたからか、自分の中で「表現したい欲」みたいな、「こういうのも聴かせたいし、ああいうのもやりたい」というのが結構高まってきて。例えば、今回ホワイトの方に4つ打ち系の曲が3、4曲入っていて。ヒップホップの中でそういうのが本当に当り前になったのは、ちょうどオレがアルバムを出していない、ここ3、4年だと思うんです。だから自分もそういうことが表現できてなくて、「Butterfly City」一曲やってそれで満足かと言うと、「もう少しこういう曲やりたいな」というのがありました。でも同時に、それが今特に目新しいわけではない。そこで「この次はどういうものかな」と。それはやっぱり、「もっとヒップホップの原点の方向にシフトしつつ、さらにまた違う試みを入れること」と考えると、「The God」みたいな曲が生まれたり、やってるうちにベクトルが2方向に分かれてきたんです。今回ボーナストラック的なところでDEXPISTOLSやDJ Mitsu the Beatsの曲が入っているんですが、そのへんも全部ひっくるめていくと「これはもしや2つのアルバムになるんじゃないか」と。あとは実際、「自分のファン層が両方にいる」という意識があって、「Black」か「White」のどちらかだけを好きなやつがいると思うんですよ。もちろん「両方好き」って言ってくれるやつもいるんですけど。

●世代によってはどちらかしか知らないとか。

Z:例えば、ちょっとギャルみたいな娘とかは、それこそDJ MAYUMIや安室ちゃんにフィーチャーリングされているオレとか、それはそれで「White Heat」の方で楽しんでもらって、「Black World」の方はもっと「コアな野郎向け」みたいなものをメインにして。だから、「男/女」で分けてもいいのかもしれないし、「ハード/ソフト」や「コア/パーティ」でもいいかもしれないし、何かオレの中で昔からずっとある「陰と陽」というか、そこを2つに分けてみた感じです。今まで、2ndアルバムがこれで言うと「Black World」だったんですけど(それに対して)3rdアルバムが「White Heat」で、3rdを出した時にすごく賛否両論があって。やっぱり、2枚目みたいなものを求めていたファンは「違う」ってなったし、普段からR&B聴いたり、ダンサーだったりする人達からは「今までで最高傑作」って言われたり。そういうことは当時から感じていたんで、すべてを1枚にコンパイルして出すと次のアルバムまではそのカラーがメインになっちゃうし、「それも、もったいないな」というのがあって。だから結局4、5枚目は両方バラエティに富んだ感じにしたんですが、やはりもともとPublic Enemyにしても、「一枚を通して同じテンションで聴けること」みたいな、コンセプト・アルバムが好きなタイプだったんで、もう一度そういうところに立ち戻ろうと。それで「同時発売とかは?」って相談したら、「このご時世にそんなギャンブルはやめて」ということになり(笑)。じゃあ例えば、2枚をシュリンクしてまとめて一つにして「それ開けたら2枚になる」みたいな、「そういう形ならいくらで出せる?」と聞いたら、3800円だと。それまでずっと考えていたのは、アルバム1枚が3千円とかって、輸入盤が1890円とかで買える時にどう考えても高いと。去年DABOのアルバムが出る時にツイッターでそれが結構話題になり、あいつは頑張って値段を結構おとして出したということがあって。オレもその時は、「下げられるよう頑張るべきだ」と言っていたから、今回は初めから価格について話していたんです。でも、普通に出すとどうしても2500円は切れないと。そこを切ると宣伝費も全部削ることになるし、そこでちょうど「2枚で3800円なら、1枚1900円じゃん」ということで「それ、いいね」と。それで後は、とりあえずオレが一つの箱に2枚入るのが大嫌いだから絶対それじゃない、「なんとかなんない??」って散々言ってなんとかしてもらった感じなんです。2枚組がもともと嫌いで、Disc1聴いたらDisc2聴くみたいなのが、すごい面倒臭いんすよ。今はiPodとかで平気かもだけど、昔は車でCD聴いててDisc1終わったらDisc2入れて、Disc1出しっ放しにしたら傷だらけで折れてとか、そうことになりがちなのがホントに嫌で、ビギーやウータンでも、2枚組のアルバムって通して聴けたことがない。途中で飽きちゃうし。だから、「どうしても2枚組みたいな印象を与えたくない」ということをすごい言ってて、「でも2枚同時に安く発表したい」となると、こういう形になるしかなかった。だから全然「『Black World』」聴いたら『White Heat』聴け」とか、そういうことではなくて、何だったら片方ずつ飽きるまで聴いて欲しい。またはタイミングに合わせて、遊びにはWhiteで聴き込む時はBlackみたいな、用途に分けて聴いてもらえるものになって欲しいな、という感じです。

●BlackとWhite両面を持ってるというのは、ずっとある感覚ですか?

Z:もともとはやっぱり、たぶんBlackな方がメインだったと思うんですよ。ただ「Zeebra」って名前を名乗った頃から、「オレは両方を現す奴だ」ということは意識してのその名前だったんで、当時幅は狭かったかもしれないけど、その狭い中でも両方をやろうとしていたという気はします。

●改めて「Zeebra」の名前に込められたものは?

Z:「陰と陽」ということの、世の中の必要悪みたいなものまで全部考えた上での陰陽のバランスみたいなものは絶対必要だと思っているので、そういったものは昔から意識していたかもしれません。その中で振り幅が広くなったということで、たぶんBlackに行こうとすれば行こうとするほど、バトル・ライムならハードで残忍なことをどんどん言うようになっていくし、逆にWhiteの方にいこうとするほど、きらびやかな話をするようになったかもしれないし。ただその幅がどんどん広がっていったということだと思うんです。

●聴いていて、そのハードときらびやかの間にさらに新しく、言葉で言うと「情緒的」なものが増えてきているような気がします。

Z:それはやっぱり、そういうことが言えるだけの経験を積んだということなんじゃないですかね。20歳そこらのガキが何を言っても、今思い返せば生意気なことも言ってましたが(笑)、とにかく経験して、色々言えるようになったのかなと思います。たぶんそういうのは「Street Dreams」以降ですね。

●そして、これはその振り幅のBlack側だと思うんですが、昔と同じ「鼻息の荒さ」を今もふんだんに感じる楽曲があります。何に対してずっと鼻息が荒いのですか?

Z:それは結局は、2曲目の「Take Over」で言ってる「All guns up」とか、つまり「ヒップホップの現状に対して宣戦布告」ってことだと思うんです。それって、オレの2ndの一曲目「ヒップホップ解放戦線」で言ってることと同じなんですよ。何を言ってるのかというと「ヒップホップを取巻く日本の現状に対する闘い」というか、ある程度自分たちが満足できるような状況ができたら、闘いはまた別な方にいくのかもしれない。ただ、一つオレの「ライフタイム・バトル」みたいなものは、今のところそれですよね。まだまだ満足できるような結果が世の中に出ていない気がする。

●何をもって満足としますか?

Z:やっぱり「認知」じゃないですかね。または「市民権」だと思うんですよ。この前、飛行機に乗って日経新聞読んでたら、日本が中国とかにエンターテイメントの輸出産業みたいなことを少し始めていくらしくて、その記事によると「日本ではアジアでは稀に見るバンド大国だ」と。他の国にはバンドがほとんどいなくて、むしろアイドルやダンス・ミュ—ジックだったりすることが多くて、バンドがすごく少ないと。だから「日本のバンドは今後中国とかで愛されるんじゃないか」みたいな記事で、逆に言うと、日本はオレらみたいな音楽にとっては、アジアの中でも最もアウェー。だからそこはそんじょそこらの闘いじゃ崩せないと思うし、今のチャートとかを見ていて、やっぱりちょっとおかしいでしょう?色々問題はあっても、チャートって結局消費者が一番乗っかりやすい、わかりやすい指針だから、そこはもう少ししっかりすべきだなと。2000年くらいから2004、5年くらいまでは、もう少しチャートの中にいる人たちも、音楽も、良かった。またそれがずいぶん変わったと思うし、そういった部分も含めて、単純にヤバいラッパー、シンガー、レゲエ・アーティストが当り前のようにチャートの上位にいるような状況ができてくれないと、それまでずっと闘いは続くことになっちゃいますね。

●アメリカのチャートは?

Z:少なくとも、ある程度食い込むやつはいるじゃないですか。頭数というか、あとは例えば、ケイティ・ペリーみたいな娘にしたってフィーチャリングにスヌープが出てくるから、それでいいんですよね。音楽性があまりにも違い過ぎるけど、そういう役割をするアイドルちゃんに、例えば、MACCHOやSEEDAが普通にフィーチャリングされてるってことになれば、「勝ち」ですね。そこまでなってくれれば、オレはあんまりもう気にしなくていいかなと思うんですが、一時期FIRSTKLASをやった時期はだいぶそこを攻めたんです。それで実際、安室ちゃんからBoAちゃん、EXILEから全部やって、あの時期はある程度そういう風にはなっていけてたんだけど、でも当時はシーンがバラバラで一丸感が出せなかった。それでちょっと浮いちゃったからそこが面白くなかったけど、今ならだいぶ一丸感があるんで、ここからもう一度ああいう風に攻めるともうちょっと変わっていくんじゃないかなと思いますね。

●これだけ違うスタイルの楽曲をまとめきる上で、大きな役割を果たしているのは、その高いラップのスキルではないかと考えます。ラップの技術では、これはご本人の感覚で、もともとの才能なのでしょうか?

Z:たまに今井君(FIRSTKLAS)に言われるのは、フッと歌メロ歌うと「絶対キー外してない」と。「意外と絶対音感系だよ」と言われていて、コードの一つも知らないのでそんなつもりもないんだけど、オケつくる時もなんとなく思ったメロディ弾いて、そこをなぞって「あ、ここ叩くと変に聴こえるから触らないようにしよう」くらいの、コードを覚える気すら無い奴なんですよ。ただ、メロディとかポコポコ出てくるし、そういうのはあるかもしれないです。でも基本は秀才型というか、向こうの曲をひたすら聴いて研究して、そこからできてるラップのスタイルが基盤になって、それが日本語にトランスフォームされた後、そこでできた色々な技を組み合わせたり、違うアプローチを試しながら、今のオレがあります。すっげえ色んなのを聴いてきて、「こいつのラップはこうやってる」というのを真似してみて。初めの頃は「ビッグ・ダディ・ケインの真似のラップ」、「Qティップの真似のラップ」みたいなのを、全部やってましたね。

●努力の賜物であると。

Z:だから天才ではなく、秀才なのかな、と。ただ踊ったりとか、そういうのはもともと好きだったから、多少なりとも素養はあったかもしれませんが、それプラス、勉強ですね。

●「Last O.G.」という、MAJOR FORCEの曲のリメイクもやられています。これは高木完さんとのイベントHARDCORE FLASHから生まれたのですか?

Z:完ちゃんとは最近すごく仲良くしていることと、または完ちゃんだけに限らず、あの世代の人たちと色々やらせてもらうことが多くて。それこそYOU THE ROCK★となるとモロにあそこのベイビー、あそこが産み落とした子供みたいな感じなんだけど、オレは全然そういうのがなくて、影響を受けたとかいうことがほとんどないんですよ。とはいえ、一番初めにDJミュージックみたいなことになった時、音楽的に色々なことをやれているなと影響は受けたと思うんですが、「ラップ」というところではまったくなかった。

●リアルタイムでは聴いていたんですか?

Z:一応「Last Orgy」と、Tycoon Toshの「Thumpin’」と、とにかくMAJOR FORCEの初めの3枚はその時に買って、聴いてみたりして。だからまさに「Last Orgy」はオレが初めて買った日本語ラップの12インチという感じです。88年だったんで、オレがラップを始めた年なんですよ。その時はまだ英語だったんですが、「日本語じゃまだできないな」と正直あの時思ったし、でもやっぱり曲は「すげー。こんな曲ができて、12インチとかできて、羨ましい」と思ってたし、実際外タレのライブに行ってもフロントアクトは必ず彼らだったし。だから、「日本でヒップホップをやってたら嫌が応でも通る」という感じのところだったと思うんですよね。でも実際そこにずっぽりではなかったんで、今まであんまり交流もなかったんですが、今回HARDCORE FLASHを通じていきなりガーッと普通に超仲良くなって。お互いの家族を連れてオアシス(海の家)にいたりとか(笑)、昔で考えたら、スーパーレアな、そういうことも結構やってました。それに完ちゃんの他のまわりの先輩たち、それは(いとう)せいこうさんにしても、大貫憲章さんとか、すごく良くしてくれて、やっぱり「オレなりにその世代への何かオマージュがつくりたい」とずっと思っていたんです。それは「やるなら『Last Orgy』だな」とずっと思いつつ、「これやったらYOU THE ROCK★が怒るんだろうな」とも思いながら。いつものように「オレに一言かけろよ!」って、泣きそうになりながら怒るっていう(笑)。

●日本へのヒップホップの伝わり方は、それが「海外で始まったもの」ということでおのずと、それをキャッチできる高いアンテナを張る経済力の持ち主か、英語を理解できる語学力の持ち主たちにまず響いた側面があると思います。それらはZeebraさんにも備わっていたことと理解しています。同時に、それはヒップホップについて語られることの多い「社会的弱者から生まれた」という側面と、相反してしまうこともあったのではと想像します。その部分に対するコンプレックスを感じることはありましたか?

Z:研究、勉強し狂ったのは、たぶんそれだからじゃないですかね。だってそれ言われたら、ある意味オレにとってはどうにもならない。だとしたら、「それ以外のところが、すべてが誰よりも優れてなければいけないな」と思ったし、「有無を言わさず『かっけえ』と言わせればそれでいいんだな」と思いました。それから、セカンドくらいの時に一番「不良性」みたいなことを前に出していたのは、それが理由でもあったと思うんですよね。「ゲットー」というより「不良」が先かなと考え、自分がやれるところとしては「ゲットーじゃない」けど「不良だから」というところでした。例えば向こうの奴らでも、「KRSワンはホームレスだった」とか言われるけど、もちろん全然プアーですが、ホームレスになったのは自分が家出したからだとか、ディディとかは結構恵まれた環境で育ったとか。

●RUN DMCも大卒だとか。

Z:Public Enemyもそうですし、日本からすると、向こうのゲットーに対する幻想も少しあるんですよね。全部が全部そうだと思うと、意外とそうでもない。

●とはいえ、たまに本当に酷い人もいて。

Z:本当に酷いやつは本当に酷い(笑)。だから17の時に初めてNYに行って、そこで色々見て、実際その時はスーパー貧乏旅行で友達の家に転がり込んで、タクシーにも乗らず地下鉄と、歩きでは4、50ブロック平気で行く感じで、知り合う奴らは酷いジャンキーとか、そういう奴らばっかで(笑)。でも思ったのは、例えばブルックリンの方とか行っても、ポジティブなやつはどんな生活しててもスーパー・ポジティブですよね。だからオレはなんか、「そこなのかな」と。結局NYの活気にしても、「やってやろう」と思う奴らがたくさんいるからあの活気がある。「そこに尽きるんだな」というのを痛感したということはありました。

●その中で、今回のアルバムに参加しているAnarchyも然り、一般的に「ヒップホップ的」とされる環境から出てくる存在が増えてきたように感じます。

Z:もちろん「頼もしい」と思いながら、あんまりそこの部分をクローズアップし過ぎると「ちょっと違うことになりがちかな」と、逆に少し心配もしています。それはそれでもちろんいいんですが、例えば「ラップを聴きたい」と思ったら、向こうだったらラジオで無料でかかってるじゃないですか。だからラジオかけときゃ無料で聴けるからどんなゲットーなやつでも楽しめるんですが、日本だと少なくともパソコン持ってないと無料では聴けない。しかも、その中で「じゃあどれだけゲットー層が若者の中心なのか」ということになると、それはアメリカとは絶対的に感覚が違うんですよね。だってブルックリンにいるだけで、街中にいれば全然すごくお洒落なのに、でも「ブルックリン」って言うだけで下町感は出せちゃう。つまり、あんまりそこを言うことで逆に枠が狭くなっちゃうと思うんですよね。「低所得者層のための音楽」みたいにしちゃうことで、それ以外のやつが興味を持たなくなっちゃうし、だからそれはそれで「そういうやつもいる」、「こういうやつもいる」ということでいいのかなと思っていて。これは「ストリート感覚」、「フッド感覚」というのと「ゲットー」はイコールじゃないということかな。実際例えば、何をもって「ゲットー」というのかとか、「プロジェクト」って「団地」じゃないですか。青山にも団地がありますが、そこから一歩出ればゲットーじゃないし、その辺のことの線引きみたいなことというか、向こうだと「プロジェクト」って言った瞬間にバーッとイメージが広がるかもしれないけれど、別にプロジェクトのすべてがすべて、あんなに危ないところじゃない。マンハッタンにあるプロジェクトなんていたって普通だし。

●だから特に気にしていない。

Z:そうですね。それらの中で一番大切なのは、「フッド」だと思っています。そこの地元に根付いているかどうか。それが根付いていなければ、何を言っても、説得力の一つもないというところかなと思うんです。だからMACCHOは横浜、Anarchyは京都をレップしてなんぼ、オレは東京をレップしてなんぼかなと。それであとはそれぞれ、そいつなりの掴めるやつというのは今いるポジションから広がっていくものだから、例えばAnarchyが掴めるやつをオレが掴めないかもしれないし、オレが掴めるやつをAnarchyが掴めないかもしれない。だからこそ、「一緒にやってお互いのやつを掴もうとする」ということかなと思っています。

●「Last O.G.」のリリックに、「Stay fresh、Stay tough、Stay on point」とあります。「on point」で在り続けられていることも、自然とできているのか、それもやはり何らか努力の賜物でしょうか?

Z:それは、オレに関しては、見事にヒップホップ以外に何もないんですよね。例えば趣味とか一個もない。パソコンちょっとイジるくらいで、本当に何もないんです。趣味のためにお金とか使わないし、あるとしたら音楽とパーティくらいですね(笑)。だから、考えることがヒップホップのことだけで、あんまり面白くない奴というか。常日頃から誰かが何かやったら「あれってどうだんだろう」、「プラスになるのか、マイナスのなるのか、どうなのか」ってことばかり考えて、他人のことは良くチェックしてますし、自分に置き換えて「こういうことやると、どうなるか」ってことばかり考えています。自分が「興味がないことに興味がない」ってことをそろそろ変えたいなとも思います。宇多丸とか、何でも超詳しいから、ああいう人をリスペクトですよ。ああやって趣味がいっぱいあって、趣味を追いかけるので間に合わないくらいなわけでしょう?観たいDVDや雑誌を時間ある時に観まくるみたいな、オレは全然物事にそこまでの興味がないのが問題なんです。

●でもヒップホップには興味が尽きない?

Z:というか、やっぱり「音楽」に興味があるということなのかな。

●「音の歴史染みついた細胞」というリリックもありました。小さい頃から家は音楽の絶えない家庭でしたか?

Z:親はFEN(現AFN:米軍放送)聴く人だったから、基本邦楽は聴かず洋楽だけでしたね。親父はカントリー・ウェスタンがメインで、お袋はR&Bとかディスコとか。だからレコードも親レコードはだいぶありますね。ソウルやディスコみたいなレコードはお袋の方が持っていて、お袋は遊び人だったんで、そういう気質だったのかもしれません。

●その環境をベースとして、それにしても今回の客演陣、プロデューサー陣は若手から大御所まで、層がとても広いです。

Z:今回はそういう意味ではdj honda君とかDJ YUTAKA君、スカパラとかもいたり、同時に超若いトラックメーカーもいるんで。それは、最近はDJをやる時に和物をかけるんで、それをやることによって色々知れたということはありますね。SIMONとかBESが頭角を現してきたあたりから、「あ、次世代すごいことになってるな」と思って、一気に色々聴いていってハマっていったんです。今はもう、ヒップホップ・シーンに関しては、才能は宝庫だと思っていますね。層がすげえ厚いし、だから必要なのはあとは突破口。でも、今となってはその時みたいに「誰か一人が突破口」という時代でもないと思うんで、みんなが色んなところで花火を上げれは全部引火してドカーンとなると思うんですよ。だから今は、「その一端を担えれば」という風に考えていますね。

(11/30/2011@乃木坂SONY)