Text & Photo by Tochino Jun
2012年2月にRiddimOnlineに掲載された記事です。
新年一番乗りで行われたシャギー主催による国立こども病院基金寄付コンサートは大成功で終了。このコンサートはジャマイカを代表するインターナショナルDJのシャギーが、ワンチケット・ワンライフ「一枚のチケット収益でひとりの子供を助けられる」をスローガンにして、2009年から始まり今年で3回目となった。毎年シャギーの意志に賛同したアーティストたちが無償で出演しているが、今年はトーラス・ライリー、マキシ・プリーストをはじめ、アメリカからはローリン・ヒルなど、錚々たるメンバーが出演した。
2012年1月7日、新年一番乗りで行われたシャギー主催による国立こども病院基金寄付コンサートは大成功で終了しました。このコンサートはジャマイカを代表するインターナショナルDJのシャギーが、ワンチケット・ワンライフ「一枚のチケット収益でひとりの子供を助けられる」をスローガンにして、2009年から始まり今年で3回目となりました。収益は設備の行き届かない国立こども病院ブスタマンテ・ホスピタルに寄付をすることになっています。
毎年シャギーの意志に賛同したアーティストたちが無償で出演しますが、今年はジャマイカからはトーラス・ライリー、マキシ・プリーストをはじめ、アメリカからはローリン・ヒルなど、錚々たるメンバーが出演しました。
このコンサートのチケットは3種類用意されており、まず一番安いシルバーは5,000Jドルで飲み物付き、ゴールドは10,000Jドルで飲み物と食べ物付き、そして一番高いプラチナムは何と25,000Jドルでディナーと飲み物付き、さらにプラチナム・シートには特別オークションが用意されており、シャギーがミュージック・ビデオで着た衣装やベンツ、BMWなどの高級車がスポンサーの厚意で出品されていました。
このオークションの売上の全てが病院の寄付になるのですが、中でもジャマイカ・オリンピック協会から出品されたロンドン・オリンピック決勝戦5種目のチケット(もちろん100M陸上男子も入っています)にはなんと2500,000Jドル(約250万円)の値がついていました。
気になるショウの内容ですが、プラチナム・シートのディナーやオークションが6時からスタート、8時半からのショウはジャマイカのナイヤビンギ(太鼓演奏)による国家斉唱、その後ホストのシャギーとトーラス・ライリーが1曲歌ってアーティストを次々と呼び込んでいくという形で始まりました。
まずは若手からロメイン・バーゴ、タミー・チン、ウエイン・マーシャル夫妻、そのあと飛び入りでフューチャー・ファンボとティファのスワッグ・クルー、そしてアメリカからのデニス・ウイリアムス(ゴスペル・シンガー)。シャギーがデニスのことを「彼女の名前を知らない人もいるだろうけど、曲を聞いたら絶対みんな知ってるから」と紹介。なんとあの映画「フットルース」の中の「Let's Hear It For Boy」というヒット曲を歌ってる人だったんですね(!)・・・この曲で一気に会場は大盛り上がり(実は年齢層が高かったもので)。
お次はシャギーとマキシの生「That's Girl」のコンビネーション(豪華!)。マキシはやはり年齢層高めの方に大受けで大合唱でした。続いてスペシャル・シークレット・ゲストとしてアメリカから参加した女性ラッパーのイブは、ジャマイカ人の女子ダンサーを引き連れ素晴らしいステージを見せてくれました。引き続きハーフ・パイント、ジプシャン、Mr.ベガス、ココティー、Jr.リードに引き継がれ、そして今度はジャマイカ側のシークレット・ゲストのスティーブン・マーリィ登場。スティーブンはダミアン・マーリィを呼んで「ミッション」を歌い会場は爆発状態。スティーブンの後、遊びに来ていたベレス・ハモンドまでもが特別にステージで歌ってくれました。
このベレス終了後、あとに残るはローリン・ヒルのみ。この時点で12時過ぎでしたが、バンドチェンジに時間がかかりすぎ、ローリン・ヒルが出てきた時にはなんと1時半を過ぎていました。ジャマイカでもローリン・ヒルの人気は高いのでみんなが観たかったのでしょうか、この時点ではみんなが待っていました。ところが彼女が舞台に立って1曲目のロックバージョンの「Killing Me Softly」を歌い始め、彼女を一目見たと同時に、お客さんは帰り始めてしまい、彼女が終わった段階でほとんどの人が帰ってしまった状態でした。結局ショウの終了は3時半でローリン・ヒルは2時間弱歌ってはいましたが、はじめのうちは新曲や知らない曲ばかりでフージーズ時代のヒット曲を歌ったのは3時を過ぎてお客がほとんど帰った後だったので、大変残念なステージングでした。ジャマイカのショウでは、帰りの駐車場の渋滞を嫌い最後のアーティストがよっぽど良くない限り一目見た瞬間にお客が帰り始めるのが、普通のスタイルです。そのために今回もこのような事態が起こってしまったのだとは思いますが、本当にかわいそうな感じでした。ただローリン・ヒルがあの状況でもステージを止めずショウを最後まで行なったことは、本当にプロフェッショナルとして素晴らしいことだと思います。(普通のジャマイカのアーティストならふてくされてショウを中断して終わっていたでしょう)
このコンサート最終収益は今まで行われた3回の中でも最高額3,200万Jドル(日本円で3,200万円)を記録しました。(ちなみに最初の2009年は2,700万Jドル、2年目は3100万Jドル)
このコンサートは、当初年末の12月30日に企画されていたのですが、選挙が突然29日に決まったため、新年に日程を移して開催されました。そんなわけで、これを目当てに年末ジャマイカに来ていた日本人観光客は見ることができず、残念な思いをされたのではないでしょうか。アーティスト一人が約3〜4曲で15分ほどのショウという展開も大変スピーディで、出演者全員がビッグアーティストですからジャマイカでは少々高いチケットではありましたが、このコンサートは年間ベスト5に入る素晴らしいショウでした。
国立こども病院ブスタマンテ・ホスピタルはキングストンのナショナル・アリーナの横にあり、ジャマイカで唯一の子供専門の国立病院です。診療費をはじめ薬代は全て無料なのですが、予算が少ないため医師の数も足りず、抗生物質や高価な薬のストックはありません。施設も老朽化が進んでおり未熟児用の生命保持システムや心臓手術用の血液循環マシーンなどの高価な設備は揃えることができません。そのため毎年多くの乳幼児が命を落としています。シャギーはこの状況を見かねて、毎年一回この病院の施設補充基金のためにチャリティーコンサートを開いています。
1月31日日にはこのコンサートの収益を発表するプレス発表があり、シャギーは次のようにコメントをしました。
「急な選挙の影響で、日程を変えざるを得ず余分な経費と決まっていた海外アーティスト、例えばNEYOがキャンセルになったりと大変だった。Shaggy & Friends、その名の通り、このコンサートは友達の助けが無ければ成立しないコンサートだ。今回は特にマーリィ家やベレス・ハモンドをはじめとしたジャマイカ人アーティスト達のステージが良かったと思う。ジャマイカの子供達を助けたいという気持ちは、外国人では無くジャマイカ人だからこその想いだ。今回の成功は助けてくれた全てのアーティスト、日程変更で大変な苦労をかけた全スタッフによるもので、感謝している。もっと大きな会場でより良いコンサート、そしてもっと多くの寄付ができるように頑張りたいと思っている」
賛同するアーティストも多いこのコンサート、是非これからもずっと続けて開催して欲しいと思います。One ticket One life save Jamaican children. Respect sShaggy!
(とちの淳)Sister Chinの名前でジャマイカ・キングストンでゲストハウス「ラブリッシュ」を経営。ジャマイカのガイド・ブック「JAMAICA BOOK」を執筆。