ART

管野秀夫 #空でつながる

 
   

Text by Shizuo Ishii 石井志津男

2014年2月にRiddimOnlineに掲載された記事です。

「 #空でつながる 」というプロジェクトをやっている管野秀夫はX JAPANのhideやGLAYなどのアーティスト写真を撮っている音楽写真家。そんな彼とはもう30年以上の旧知の仲。しかも同じビルの中に事務所を持ってからでも20年以上になる。こんなに近くにいるのに仕事上でのつきあいは1981年に一緒にNYに行ってもらった以外はほとんどない。だが、「 #空でつながる 」という311以降の復興プロジェクトをやっているらしいことは、何となく知っていた。突然、俺の事務所にやってきた彼にインタヴュー。

●カメラマンになって何年ですか?

管野秀夫(以下C): 35年ですね。

●そんなに長い間、たくさんのアーティストを撮ってきて、たとえばB’zとかデヴューの時から撮影しているわけだけど、このアーティストはきっとスゴくなるなっていうのは、分ったりするわけ?

C:分かります!

●具体的にはどういうことですか?

C:それは抽象的な感覚なので、ロジカルに説明するのは難しいですけど、実は人として、あたりまえの事でもあるんだと思います。先ずリスペクトと感謝、向上心、努力、好奇心、根性、怠けものではない人、義を重んじる人。あともうひとつ、タイミングを見逃さない感覚。そして当然メロディーメーカーとしての才能があっての事です。

●では写真を撮るうえで最もこだわっていることは何ですか?

C:被写体を好きになる事です。

●今やってる「 #空でつながる 」プロジェクトというのは、どういうものなの?

C:北海道から父の仕事の都合で福島に転居し、中一から育ったのが伊達郡(旧)の保原町なんですよ。あの震災の年の12月に、田舎の旧友から何かやってくれないか?と言う電話があっったんです。震災以降、自分でも何ができるのか思い悩んでいた時で、とにかく一度帰ろうと、すぐに行ってみると自分が慣れ親しんでいた風景があまりにヒドいものになっていたんです。あちこちに除染の袋も仮に集積されているっていう悲惨な現実を見て、何か自分もできないかというのが始まりだったんです。僕ができる事は写真なんで、撮ってきたミュージシャンの写真を使って、何か元気づけられる事ができないかなあと考えて、伊達市から依頼された次の年の夏にミュージシャンたちの力を借りて 1ヶ月間だけ、伊達市梁川美術館のギャラリーで写真展をやったんです。それが「管野秀夫 J-POP&J-ROCK PHOTO EXHIBITION #空でつながる Dearest Fukushima」というもので、地元出身の映画監督とかのトークショーとかミュージシャンのミニ・ライブなどもやったりして、人口が3万くらいの町に普段だったら来ない福島県外からのたくさんの人たちが来てくれたんです。その時の反響を見て、クリエイターたちが直接除染するとかお金を出すとかという事じゃなくても、何かできるんじゃないかと考えたんです。一番感じて欲しかったのは、僕の撮ってきたナマの写真を見てCDのカバーを思い出したり、一瞬でも現実を離れて、青春時代を共に育った音楽の記憶とか、ジャケットの写真はこうだったのかとか、何かを感じて元気になってくれたら嬉しいということです。実際に会場にいるときに声をかけてもらったり、喜んで写真を見て帰ってくれて、これはこれで 繫がれるんだな、と思ったんです。
このプロジェクトで、何かが良くなったとか、目に見えた何かが分るわけではないけれど、続けていけば被災された人たちのことを一緒に共有できて、同じようにカラダの中にとり込めるということを感じたんです。その展覧会を1ヶ月やって最終日に思ったんです。これは続けるベキだと思って始まったのが今やってる「 #空でつながる 」なんです

●そして現在やっている「 #空でつながる 」にはどう「つながる」んですか?なんちゃって(笑)?

C:形としてはSNSの交流なんですけど、具体的には皆で空の写真をとってWEBに上げて、TwitterでつぶやいてFacebookとブログの投稿サイトにアップしてもらうというものなんですね。今回はこの投稿された写真に加え、また協力してくれる無理の無い範囲でのゆかりあるアーティストさんにも参加してもらった写真を展示して、僕の写真も若干展示するという企画なんです。

地上には、個人の土地から始まって都道府県、国などたくさんの境界線が存在する。しかし境界線とは無縁の「空」で「つながる」というこの「プロジェクト」。素晴らしいではないか。
2014年 03月06日から都内で写真展もスタートする。この写真展には俺も1枚参加させてもらうことになった。

CANNO写真環境化生活
http://blog.livedoor.jp/cannosan/

「#空でつながる」
http://www.sora-pro.com