MUSIC

ACKEE & SALTFISH

 
   

Text & Photo by Shizuo Ishii

2015年2月にRiddimOnlineに掲載された記事です。

どうやらAckee & SaltfishがジャマイカのあっちこっちのフェスやLiveで大ウケらしい。実は20年以上前に初めて彼らに出会ったのもここキングストンだった。その時も既に島では話題の主だったが、さて今回は?

●去年も一度来てるんだよね? 今回のジャマイカはいつから来ているの?

Saltfish(以下、S):今回は14年末の12月4日に着いたんです。

Ackee (以下、A):今回の前が2014年の1月に来たんですよ。僕たちは長いことジャマイカを留守にしていました。

S:去年来た時Rebel Saluteに出たんです。

●それはYouTubeで見たよ。あのQueen IfricaとのRebel Saluteはどういう繋がりだったの。

A:Kingston Dub Clubに遊びに行ったらQueen Ifricaがいて「覚えてる?」「久しぶりです」みたいな感じから。

S:「Rebel Saluteに行くんでしょ?」って言われて「いや、そんな予定は無いしチケットも無い」って言ったら、「チケットなんかいらないから、電話かけてきなさい」みたいな感じで。アーティスト・パスを貰って、車から全部セットしてくれて。(メジャー)マックレルと話しとって「だったら遠く離れた日本から来たんだから1曲ちょっと歌わせてもらえませんかってQueen Ifricaに頭下げてこいよ」って言われて。「だったら私の近くにいなさい。私の時間を特別にあげるから」って会場で言われて、彼女がステージに呼んでくれて「日本人のAckee & Saltfishよ、みなさん聴いて! なんでAckee & Saltfishっていうか不思議でしょ、彼らが出るよ」って言って紹介してもらって。で、歌ってウケて「あ〜、良かった良かった」って。

A:あれが凄い宣伝効果ありましたよ。

●ウケてたね。

A:途中で引き上げても良かったくらいウケてましたね。押し切っちゃいましたけど。

S:あれ「Jamaican Gal pickney」ですからね、マックレルと作った。

A:その時に「Go to Thru」にするか「Jamaican Gal pickney」にするかどっちかみたいなのがあって。

S:実は振りがあったんですよ、Queen Ifricaの曲「straight」って分ります? 要するに性のstraight man、ああもうその振りからいったら「Go Thru」よりもギャルネタだなっていうことで、「僕たちは日本から来たけどstraight manだからジャマイカのstraight womanが好きなんです」って言ってそれで「Jamaican Gal Pickney」。

●それで、つかんで。

S:その最初の喋りこそが客をつかむ為には凄く大事で、落語じゃないけど枕があって。

A:でもあれは本当に感謝してます。その時に5ヶ月間位いたのかな。

●そして今回また来て、それはStings出演が目的で?出るのはもう決まってたの?

S:うん、決まってた。

●では去年来たきっかけとか目的っていうのは何だったわけ。割と長く来ようと思ったわけでしょう。

A:僕Ackeeの意見で、Saltfishの意見は別として、日本で色んなアルバムを出して結構政治的なアルバムも出して色んな事をやったので、いっぺん原点回帰じゃないですけど、レゲエを知ったジャマイカに戻ってもういっぺんやれる事をやってみたいなっていうのが最初の目的ですかね。ひねくれた事はなんもなく、日本ではある程度やったし、それはちょっと置いておいてジャマイカでやってみようかなっていう、そういった感じです。

S:僕たちがやれる事をやる。これだけ間を空けてたからどうかなと思いましたよ。

●俺がアキ・ソルと最初に会ったのって1991年だったかな?その頃は俺もShabba Ranksのコンサートを日本でやったりしていて、それでプロデューサーのスペシャリスト(C. Dilon)が言ってたんだよ。あいつらどう思うか?たしか声がかかってたんだよね。マネージメントしようと。

A:はい、かかってました。

S:サインしたよ。

●えっ、したのかアレ。

A:だけど世界的なことでね、ちょっとなんか色々ややこしい契約で、どうしようかなと思って止めました。

S:やっときゃ良かったかな。

●やったら面白かったね。見たかったな。

S:うんうん。

●実は急に一昨日セント・アンまでRebel Saluteを見に行ってきたんだ。アルボロジーのクルーのバスの後について行ってパスもらってたから、プロデューサーのSP(スペシャリスト)にも会ったよ。
あの当時、彼がやってたShabba、リッチー・スティーブンス、パトラ、コブラ、バウンティ・キラ、その全員のショーを次々に俺は日本でやったからね。

A:じゃあ繋がり長いですね。

●だからまあ、付かず離れず20年以上かな。俺はRebel Saluteにレンタカーで、SPは目立たない乗用車で、バンドはバスで行ってゲートの前で待ち合わせしたんだよ。余分な話しだから後はカットするけどさ。

S:そのスペシャリストはねWackiesのブルワッキーの息子さんのレノックスっていう人がブロンクスでナオキ(Nahki)君とかスーパー・キャットとかシャインヘッドとかが着てたリネンのスーツのお店をやっていて、その友達がスペシャリストなんだけど、そのレノックスをサブ(ソニー落合)さんから紹介してもらって、僕たちがその洋服屋でバイトしとって。
僕たちはアイロンかけたり、ボタン直したりサイズ直ししたりしておった時にスペシャリストが来て「あれ、こいつらレゲエやってるAckee & Saltfishだ、こいつら押さえるべきだ、ちょっとサインしろ」って言われて連れて行かれて。

S:マンハッタンのSONY(Music)の一番上の階まで挨拶に連れて行かれて、そこで歌わされて、下に丁度シャバの事務所(Shang)があって。

A:「お前、歳いくつじゃい」って、23、24だっけ?

S:25歳くらいだったかな、23階で止まったから「とりあえず23歳って言え」って。

●アハハ、彼は他人と違う発想とコネクションを持ってるやつだから面白い。

A:ちょっと違うんですよね動きが、本当に。

S:最初会った時に「ちょっとDee Jayやってみろ」って、やったら「スーパー・キャットはもうやめろ、その歌い方もやめろ、これにしろ」って言って。

A:ケツを繋ぐ韻の踏み方をしてたんですよけど「逆でできるか?」って回転がもの凄い速いんですよ。

S:日本人だから僕たちが直接行くって言ったら「ダメだ、お前らが直接話しをしたら俺が出る立場が無くなるから、それはダメだ」って言われて一緒に行って、その担当の前で俺たちが歌って、それでその後サインしてっていう話しですよ。
その時はマンハッタンのShangレコードの事務所だったね。

●それはShabbaで大成功した後だよね。俺がSPから聞いたのはそのずっと前だったはず。

S:たしか成功した後でShangのマンハッタンの事務所にバウンティ・キラの写真があって。

A:こいつが今からジャマイカで凄い事になるぞって言ってた。

S: その事務所から一緒にSONYの本社ビルに行くんだけど、その前に「ちょっとついてこい」ってダウンタウンに行って「この服着ろ」って、上から下まで、靴から鞄まで揃えてもらって、「よし行くぞ」って、それでSONYのあの事務所に挨拶しに行ったの。

A:凄かったですよ。
これでひっかかったんだな、みんなはと思いながら。

●いやもうShabbaだってベンツ買ってもらってた気がするね、あれがギャラなんだろうなって想像してたよ。そこ(ニューキングストン)のタワーに事務所があって、俺も最初はShabbaとコンサートの契約するのも手探りですっごい大変だった。電話して直接行くんだけど、段々分ってきたら、“バブジ“グリンジっていう女性で大臣やったりなんかする大物も関係してるわけ。

A:はいはい。

●だから俺、SPとバブジの家も行った事あるよ。何度もやってるうちにバブジも俺には、途中からちゃんと対応してくれたけど。

S:わざわざShabbaの件では自分で足を運んでここ(Kingston)まで来たの?

●もちろん。

S:それをすると契約は全然違いますもんね。

●そうだね。

S:スーパー・キャットもみんな直接僕たち会いに行ってますからね。

A:アーティストに会って、説明するとちゃんとやってくれる。大事な信用問題です。

S:「何でREGGAE BREEZEは呼べるんだ」ってみんな言ってましたけど、僕たちは、キャットを呼んでニンジャ呼んでマバド呼んでブジュ呼んで、アイオクテンも呼んだしモーガン・ヘリテイジも、みんな直接です。

●あれは、凄いよね。大したもんだよ。

S:それはやっぱり僕たち、そういう意味ではジャマイカにいた時のコネクションがある。

●それは全然違うんだろうね。

A:昔とった杵柄じゃないですけど、それがありますよね。ごめんなさい、話しが逸れすぎちゃって。

●じゃあ91年の話に戻そう。SPとサインしたことは初めて聞いたけど、あの時、ジャマイカに来て「Ackee & Saltfishって日本人を知ってるか?
ってジャマイカ人に言われて「なんだそりゃ、今朝食ったぞ」って(笑)。

A,S:ハッハッハッ(笑)。

●初めて会ったのはGermainのペントハウス・スタジオの階段だよ。

A:そうそう、僕がサブさんに貰ったMUTE BEATのTシャツを着てて。

●そうだ!着てた。それで俺のホテルに来て「トイレットペーパー貰ってっていいですか」って。

A,S:ハッハッハ(笑)。

●「こいつらオモシロイなー」って。

S:石井さんが買ってきたケンタッキーを分けてもらったの。

●そうだっけ、それは忘れちゃったけど。それでこっちの生活をちょっと聞いて、ヤバいなコイツらと。油を買う金だけはあるとか言ってたよね。木からアキーを採って油で炒めてるんだなんて言ってて、それで「トイレットペーパーが無いんで貰っていいですか」みたいな(笑)。そういう生活をしてたんだよね。あの時はどこに住んでたの?

A:ワルタム(Waltham)、キングストン13ですね。ローラーンド・アルフォンソさんの家です。

●スカタライツのサックスの?

S:その息子がニューヨークにいて、ノエル・アルフォンソっていますよね。

●うん、いるいる。あのドラムやってる。ニンジャマン来日の時に来てたのはそのつながりだった?

A:そうそう。以前ジョニーPやタフェスト、フォクシー・ブラウン等と一緒に日本に来て、仲良くなってたんです。

S:その繋がりでニューヨークに行って、「ちょっとジャマイカ行こうと思っとる」って言ったら「じゃあ俺のとこ行け」って。「明日行く」って電話したら、「ジャマイカ行って泊まるとこあるんか」「無いけどなんとかなる」って言ったら「そりゃダメだ、ちょっと待て、紙とペン持ってこい、住所を言うでそこに行け」って。行った所がローラーンド・アルフォンソさんのお父さんの家だよね。

A:ローラーンド・アルフォンソさんが育った所。だから行ったら壁にローラーンド・アルフォンソさんのレコードとか。

S:スタジオ・ワンのジャケットとかね。

A:そこにお母さんが一人でいて、マージーっていうんですけど、そこでお世話になったんですよ。敬虔なクリスチャンで、その時僕らはスカタライツなんてあんまり興味ない感じだったかな。

S:チャーチに行くもんだから夕方、僕たち2人で毎日送ってましたよ。
そこで、ド貧乏してました。

A:そこで暮らしとって、ローランドさんがニューヨークからジャマイカに来た時に20ドル貰いました。

●あああ。

S:情けない。ローランドさんがジャマイカに帰ってみんなに配る。

A:ジャマイカに帰って来るとみんなに小遣い配るんですよ。その時僕たちも一緒に小遣い貰いました。そんな事やっとる場合じゃ無かったと思うんですけど。

S:要するにゲトーですよね。僕たちはその暮らしが本当に凄い役に立ってます。

●なるほどね〜。

S:だからよく僕たちは「ジャマイカへ来たらそういう所を見て帰ったほうが良いよ」って、まあ余計なお世話だけど。

A:たまたまそういう境遇になっただけ。色んな人がジャマイカに来て人それぞれの接し方で、友達がいてそういうとこに入ったりもあると思うんですけど、僕たちは僕たちのこういうジャマイカの人達との接し方で言葉とか音楽やらを吸収して。

S:ちょっと話しを戻すんですけど、ニューヨークにいた時にメジャー・マックレルと出会って、「お前たちは何なんだ」と。「Dee Jayをしたい」と言ったら、「英語も分らんのにDee Jayが何で好きなんだ」っていう話しになって「いや、やりたいんだ」って言ったら、「Dee JayやるならDee Jayだけじゃダメだ。それには生活や色んな事を勉強しなあかん」って、歩き方とかナイフの回し方とか飯の作り方とか凄く細かく色々教えてくれた。

A:ニューヨークにいるうちからマックレルと一緒にチキンの皮を取って油を出して自分達でジャマイカ料理を作ってた。

S:タイムと玉ねぎとトマトとカントリー・ペッパーと長ネギとかでシーズニングを作るんだっていうのを全部教えてくれたの。だからジャマイカ行ったらそれが出来たもんだから良かったんですよ。

●それで、アキーの実を取って油でって話しになるわけだ。

A:だから、はしょって話しをするとマックレルあっての僕たちAckee & Saltfish。

S:それでニューヨークで「Jamaican Gal Pickney」っていうのを1曲作って、それを持ってジャマイカに来たんです。その時はまだAckee & Saltfishじゃ無いですよ。Ackee & Papa Heroとか?
ジャマイカに来る前に、ニューヨークのジャパニーズ・レストランで弁当の配達をしてたんだけど、喧嘩して辞めちゃって、急に行くとこが無くなっちゃったから「じゃあジャマイカ行こう」って。チケットを買う前の週くらいにノエルから「ちょっと遊びに来い」って言われて、マンハッタンの何処だったかな?行ったんですよ、そこに、どこか忘れちゃったけど。シスター・キャロルのツアーで、ブリギーもいてバンドでやってて。「お前ら歌え」って歌わされてワァーってウケちゃって。

●「Jamaican Gal Pickney」で?

A:そう、「Jamaican Gal Pickney」でウケて、そんなことがあった。

S:ジャマイカ行きのチケット広告がビレッジ・ヴォイス(新聞)か何かに出ていて電話したら、ジャマイカ人に電話が繋がったんですよ。

A:「I’m Japanese」って言ったら向こうが「私の所にも日本人いるのよ」って言って、代わってもらったらそこの人が。

S:「とりあえず来て下さい」って、2人揃って行ったんですよその会社に。そしたらお店の人が「あれ?このあいだ歌ってましたよね」って言われて、それで良くしてくれたんです。でも2人でお金出しても片道チケットしか買えなかったんだけど。

A: 1人分なら往復を買えるんですけど、2人分だと片道になっちゃう。

S:だから帰りのチケットはアメリカから送るっていう書類を書いて貰って「とりあえず行ってみよう」って行ったんですよ。ジャマイカまで着いて「お前、帰りのチケットは?」ってイミグレーションで言われるじゃないですか。で、「こんだけ書類があるで、大丈夫だ」って言ったら、「いや、ダメだダメだ!」って。

A:「何しに来た?」って言うから、「Dee Jayしに来た」って言ったら、「じゃあ歌ってみろ」って言われて(笑)、イミグレーションで。

●おお、いいね(笑)。

A:「ちょっと待て、こっちの部屋に来い」って待たされて「お前ら何しに来た?」って、また別のやつが来て「Dee Jayやってみろ」ってやらされて、「おい、ちょっと!」ってまた他の人、かれこれ2時間くらいやらされて。

●それ「Jamaican Gal Pickney」?

A:そう。その間に連絡してたと思うんですよ、本当かどうかニューヨークのトラベル・エージェンシーに。

S:で、「とりあえずいいぞ、片道切符で入れてやるよ」という事になって。

●おお、そんなのは普通無いだろう?

S:無いです、あるはずが無いです。この国(笑)。

A:それも僕たち入ったんですよ、片道切符で。

S:で、入国してワルタムのローランドさんの家の話にようやく戻るんですけど。1ヶ月過ぎて「もうここにおったらヤバいぞ」っていう時にシンギング・メロディーと知り合って、メロディーのところに転がり込むんです。

A:イミグレーションは僕たちが住んでた所に「日本人おるか?」って確認しに来るわけで、その時ワルタムの人達は「いや、おらんぞ」って言って僕たちの味方をしてくれてた。ありがたい。

S:それは一番最後に捕まった時、イミグレーションの人達に聞かされた。「何回もお前らのところに行ってたんだぞ」って。

●それで強制送還になったわけだよね。ずっと長くいたからだ。

A:いたんですよ。片道チケットはどうでもよかったんですよ、もう帰るつもりは無かったから。

●元々チケットが無いから帰れないだろ(笑)。

A:帰れない(笑)。

●ハッハッハ(笑)。それは凄いな。

S:それで片道切符で1ヶ月しかいれないのに1年くらいいたんです。

A:そろそろ捕まるんじゃないかなって気はしてましたよ。ジェール(牢屋)入れられてもしょうがないなって覚悟はありましたもん、気分的に。案の定1週間入れられましたけどね。そしたらサブ(落合)さんが迎えに来てくれました。

S:セントラルっていう、泣く子も黙る悪名高きジェール。

●大変なんだろう?

A:大変ですよ。だって鉄格子がありますし。

●俺もたまたま警察行って鉄格子の牢屋に入ってるのだけは見た事あるけどね。

A:鉄格子の上から鉄板が貼ってあって、これ (1cm)くらいの穴しか空いてない、プツプツプツプツって。
そんで天井のすぐ下の所に、高さ10センチ位で横巾1メートル位の空気孔にも鉄格子が入ってるんです。

S:真っ暗けですよ中は。その鉄格子がまた太い。

A:そこで皆おしっこする時には、ジュースの紙パックをトイレ代わりにおしっこしてその空気孔から外に捨てる。
うんこはどうしてもダメじゃないですか。その時はガンガン叩いて「Riding Ninja!、ニンジャを運転させてくれ」って。
便所に行っても座る便座が無いから、単車に乗ってるような感じでしゃがむもんだからRiding Ninjaって。

●そういう事かァ、Riding Ninjaね。よび方は面白いけど。

S:ジャマイカ人って海外行くとディポート(追放)されてジャマイカに帰されてくる。

A:でも僕たちはジャマイカから強制送還されるわけですよ。

S:だから逆なんです。僕たちはジャマイカのナショナル・ディッシュの名前なのに、そのジャマイカからディポートくらったっていう。

●ハ〜ッハッハ(笑)。

A:これジャマイカ人に、大ウケする。

S:嘘じゃないからね。

A:下手すると本が書けるんじゃないかなと思っちゃいますよ。ウケるかウケないかは別として。

●そういうのはネタにして歌ったりしてるわけ?

S:してます。

A:そこまでは細かくはできないけど、まあ小出しにして使ってます。

S:だからジャマイカ人が僕たちの曲を聴くと凄くびっくりするんですよ。出てくるネタが。

●濃すぎるから。

S:なんでお前ら知っとるんだ、どんなネタが出てくるんだこいつらって。その「Go Thru」って歌も最初からもそういう濃いネタだから凄いウケます。

A:それは前にも録った曲なんだけど、今回また磨きをかけてそれを久しぶりにやってみて、またウケるもんだから楽しくてやっちゃうんですよ。

S:演歌の歌手の人が1曲で全国廻るのと一緒で、聴いた事がないお客さんがいるとそこで出すと、ドッカーンって。

A:やっぱり人を喜ばせるのが仕事なのかな、僕たちの使命じゃないかなっていうのを感じるもんだから、かっこつけてどうのこうのって嫌な事言ったりするわけじゃなくて、まず楽しませるっていう、エンターテイメント。

S:前にいた時もAckee & Saltfishの知名度はあったけど、最近はもっと凄いですよ、どこいっても声かけられるから変な事出来ないくらい。

A:逆にジャマイカに来るとアーティストになったって感じ。

S:日本だと普通のただのおっさんだけど。

●ではニュー・アルバムとか、今年のREGGAE BREEZEはどうなの?

A:やりますよ今年は8月の1日。で、メジャー・マックレル連れて来ようと思ってます。

S:曲はGACHAPANっていうレーベルで、こっちで「1曲録ろうか」っていう話しを僕たちの方からアプローチして、マックレルと日本語でやってみようかなと思ってます。それを持ってBREEZEにマックレルと。

A:また別のDIGITAL SHAMっていうプロデューサーも。

S:僕たち1曲もう出してるんですけど。

●REGGAE BREEZEの頃にアルバムは?

A:やるつもりでいます。さっき話した様にエンターテイメントする聴いて楽しいやつがメインな方がいいのかなと。
政治的なっていうか本当はこうなんだっていう事も日本語で歌いたいんだけど、先ず原点回帰するジャマイカのレゲエで、女の子の下ネタまではいかないけど近い事も歌って、要するに幅を広げてるんで。

S:「アキ・ソルってこれだって決めつけられるんじゃなくて、掴みにくいところを追求したいですね。年末から来て、今回ジャマイカに来てそれを学んだというか、それを再確認した。

A:堅い歌を歌ってお客さんを沸かせて盛り上げられるなら堅い曲をやればいいんですよ。それが出来なくて堅い事を言うのは只の説教になっちゃう。だったら楽しく求める事をそのままやって、それを盛り上げてその場を楽しく仕上げるのは僕たちの仕事っていうのを本当に今回教わった、ここジャマイカに来て。

S:まだまだ僕たちは名前を覚えてもらって、曲を覚えてもらって、それで「もうお前ら、わかった。じゃあ次、変わった事やってくれよ」って言われた時にやれるのかなと。

A:やっと僕たちは一歩を踏み出せたか、出しかかったくらい。

S:僕たちがアイディアを「こう思うんだけど」って言ったのをマックレルがプロナウンスとかを色々と修正してくれるんですよ。だから僕たちだけの力ではなくてマックレルはDee Jayのプロフェッショナルだから、やっぱり彼が僕たちをここまで持ち上げてくれたんじゃないかなと思います。

S:僕たちのエンターテイメント、Dee Jayビジネスについてはやっぱりマックレルじゃないかな。再確認もしました。

A:ステージの中は綱渡りみたいなとこがあって、出て行って「お前等じゃダメだ」って言っておきながら、ステージの内様が良かったら「ブワァー」って大盛り上がりしてますからね、ジャマイカの人達。

●それはどういう時?

S:彼らは正直に素直なんですよ。美味しいものは美味しい、不味いものは不味い、好きなものは好き、嫌いなものは嫌い、いい歌はいい、悪いのは悪い、凄くはっきりしている。ジャマイカの人の目は厳しいですからね。

A:ジャマイカがムーヴすると世界がムーヴするって、盛り上がるって意味なんですけど。だからやっぱり海外で売れたアーティストがジャマイカに来てもウケん時もあったりするわけで、こっちっていうのは癖があるし、でも逆に素直で受け入れられやすいというか。

S:当然だけどレゲエは自分達のものっていうのがやっぱり強いですよね。それに対しての厳しい目は持ってますよ。
僕たちStingの時がそうだったんですよ。新しい曲で1番と2番があって、新しいヴァースを作ってあって。

A:どうしても新しい曲をやりたかったんですよ。それでちょっと無理して深追いしちゃアカンのにしちゃった。

S:でも一応最後の落ちまでちゃんとみんな聴いてくれとって。

A:それが僕たちの今後の経験のプラスにもなったもんだから「こうすればいいんだ」っていうのはすごく勉強っていうか肥やしになるというか、覚えとこうみたいな。

S:日本の人達は、ジャマイカでStingに出れるのは凄いって言ってくれるんだけど、でもそんなレベルじゃダメなんですよ。

●大使公邸とかでもギャル・チューンやってるの?

S:やっちゃいますよガンガン。

●ハッハッハ(笑)。

A:それはちょっと隠しで。マーシャ・グリフィスはメチャメチャ喜んでました。マーシャが自分の曲が終わって「出てこい、もう1回歌え」って言って歌わされました。だから本当に色んなとこでやってます、ガソリンスタンドでも歌わされるし。

S:歌えるところはどこでも歌います。

A:ニュー・キングストンのデジセル(携帯ショップ)の前で、車からヒロ君(SALTFISH)を降ろしてUターンしたらお巡りが「ここ駐停車禁止なの知ってるだろ、お前日本人だろ、何をやってんだ?
って言って止められた。そこでちょろっと「Go Thru」を歌って、歌の内様の様に通してくれって言ったら大ウケして「よし行け」って。切符切られずに許してくれた。グルっと車で廻って来たら今度はヒロ君が捕まっとって歌わされてた。

S:そうやって歌うのとはまた別ですけど、ステージで歌うっていうのは、コミュニティーのちゃんとステージがあってラフカット(バンド)が来たりするところも何件かあって、大きいところではStingの前にWest Kingston Jamboreeってのがティバリ(ガーデン)で、あのJLPのでも歌って、それでGhetto Splash、ウォーター・ハウスで歌って、ストーン・ラヴのアニヴァーサリーでも歌って、あとアップタウンのお医者さんの誕生日、プライベート・パーティー。

A:ファッションショーでも歌ったし。そういえば(ラブリッシュの栃野)ジュンちゃんのバースデー・バッシュで、U-ROYのサウンド・システムのステレオグラフをジュンちゃんの家の敷地に入れて、そこでも歌いました。

S:この前は、ジョジー(ウエルズ)と歌ったとこもあるしダンスはいっぱいありますよね。
もうマックレルにも言われてて「歌えるとこがあったら絶対歌え、とにかく歌え」って、「英語見たら読め、聴こえるなら聴け」って。

A:いつもどこかのダンスとか行くじゃないですか、ここにいつも(オケの)CD入ってますから、いつでも出せる様にいつも持ち歩いて。
「CDかけられない」って言われて困った事があるので、今はデータ(USB)も持ってます。
まだ使った事は無いんですけどね。昔来た時はどんなところでもレコードをひっくり返して歌えたんですけど今は時代が変わって。

S:とにかく楽しんでるのは間違いないです、僕たち楽しんでます。