MUSIC

Keith & Tex

 
   

Interview by “EC”/Ichiro Suganuma

2017年10月にRiddimOnlineに掲載された記事です。

来日が決定しているKeith & Tex。10月後半からはヨーロッパ10都市へのツアー、そしてアルバムも制作中の多忙なロックステディ・デュオの近況をKeithにチェック!

●Keith & Tex の成り立ちなど教えてください。

Keith Rowe (以下、K):1966年に始めた頃は5人のグループだったんだ。友だちが集まってThe TemptationsやFour Topsのカバー曲を歌っていてその頃は名前すらなかった。ただ俺たちの歌を聴いた人たちがとても良いからレコーディングすべきだって言ってくれて、オーディションに行くようになった。Prince Buster、Duke Reidなどいくつかのオーディションに行ったけど全て断られてしまった。オーディションになると緊張するやつもいてうまくいかなかったね。やがてグループから3人が脱落してTexと自分の二人になってしまったんだ。だが俺たちは続行することを決意してキングストンのダウンタウンまで何人かのプロデューサーを訪ねて行ったら、あいにく誰もいなかったんだ。最終的にDerrick Harriottのお店に行ったんだが、彼もいなかった。でもそこで待っていれば必ずいつか帰って来ると思って店にいたら、店員の女性が自分たちの曲が入ったカセットテープを聴いてくれることになったんだ。彼女はその歌を聴いてからDerrickに電話をして、「お店で待っている2人の曲がいい感じだ」と伝えてくれたんだ。だから彼を一日中ずっと待ったよ。Derrick Harriottはようやく夕方になってやってきた。そして我々の曲を聴いて「とてもいい」と言って、幸運なことに「二日後にスタジオに入ることになっているから来たらどうだ」と言ってくれたんだ。そうやってKeith & Tex が始まった。その最初のレコーディングが「Tonight」だった。

●いまやグループを代表する曲ですね。

K:そうだ、新しい曲だったけどレコーディングの前からの曲で当時の自分の彼女について歌っているんだ。

●Texとは以前から知り合いだったのですか?

K:近所に2、3空き地があって時間さえあればそこでサッカーを一緒にやる仲間だった。

●どちらが年上でグループのリーダー的存在なのですか?

K:Texが年上だけど、どちらもリーダーだ。俺が16歳からの友達だからね。

●いつから歌っていますか?

K:自分の父親は説教師だったからその教会で歌ったり、高校の時は聖歌隊のメンバーだったよ。

●Gladstone “Gladdy” AndersonがTreasure Isleであなた達をオーディションしたと聞きしました。

K:そうなんだ。Gladdyがオーディションを担当していた。俺たちの歌を聴いて「中々いい感じだけど、まだ十分ではない」と言って断られた。それはまだ5人組でやっていた頃の話だ。でもDerrick Harriottプロデュースの曲のほぼ全てのピアノはGladdyが弾いているんだよ。彼はオーディションで我々を断ったけど、結局は俺たちの曲を演奏したんだ。だからそのことをよく冗談で言い合ったよ。

●先日、『Gladdy Unlimited』というGladdyをリスペクトするイベントが渋谷のクアトロで行われました。

K:知っているよ。素晴らしいイベントだと思う。Facebookに上がっていた映像を見たけどとてもいい感じだった。Gladdyは本当に多くのヒットソングを演奏していて最高のミュージシャンだった。

●「Stop That Train」はKeith & Texの最大のヒット曲だと思いますが、この楽曲について教えていただけますか?

K:「Stop That Train」のオリジナルはThe Spanishtoniansというグループのスカの曲なんだ。我々はその楽曲がとても好きでそのグループに許諾をもらって歌っているんだ。我々が歌い始めた頃に、音楽が少しスローになってきてロックステディが始まったんだ。

●この曲はジミー・クリフの映画『The Harder They Come』のサントラに収録されているけど、Scottyが歌う曲としてクレジットされていますが。

K:収録されているタイトルが「Draw Your Brakes」で、「Stop That Train」のインストゥルメンタルが使用されている。Derrick Harriottプロデュースで同じ楽曲、全く同じミュージシャンだ。Scottyがあの楽曲をレコーディングしているときに俺たちもスタジオにいていい感じだったから一緒にやったんだ。あの時は映画のために録音したわけじゃなかったけど収録されたんだ。Scottyは元々「Penny For Your Sound」という曲で有名なThe Federalsというグループのシンガーだった。

●ところでKeith & Texを再結成したのは?

K:俺が1970年に家族とニューヨークに移り住むことになってグループは別れたんだ。翌年の1971年にはTexもカナダに移住したからね。自分はアメリカの軍隊に入って韓国やベトナム、ヨーロッパなど海外勤務で20年間を過ごし、Texはカナダで政府の職員として働いていた。
そんなときニューヨークのTexの友人と会うことがあり、その彼が俺の番号をTexに教えてくれて電話がきたんだ。電話でお互い盛り上がって、1987年ごろに一緒にアルバムをレコーディングしたんだ。その後も何度かレコーディングしたりショウをやったりという期間が長く続いて、2012年になってカリフォルニアのショウで一緒に歌ったときだ、そのショーが特に良くてフルタイムでまたやろうと二人で決めたんだ。俺もTexもリタイアしていたからもう自由に音楽ができるぞってね。だから正式には再結成は2012年から始まって、ヨーロッパの各国やオーストラリア、日本、世界中を訪れることができてまた今回も日本に行ける。我々はとても幸せだ。

●アメリカの軍隊での経験はどうでしたか?

K:本当に人生観が変わる経験だった。戦争へ行ったことがあれば俺の言うことがわかるはずだ。人間そのものを変えてしまうんだ。戦争で経験することは我々の日常生活とは全く異なるものだ。戦争での体験が人間を変えてしまう。戦争に行ったことがある人は誰も戦争に行きたがらない。戦争は破壊的だ。それに関わった全ての人のその後の人生にずっと影響を与え続けるんだよ。

●軍隊での経験は音楽活動に影響を与えていますか?

K:音楽は人生を映す。戦時に励みになる音楽や平和についての曲、そして戦争についての歌もある。音楽はアートという芸術形態でその人の人生そのものを映し出す。音楽はずっと我々の一部であり日々の生活を語る。楽しいときには楽しい曲があり、悲しいときには悲しい曲がある。だから自分にとって音楽は人生全てを現している。いい部分も悪い部分も全てだ。

●新しいアルバムを作っていると聞きましたが?

K:今年の3月に『Same Old Stories』というアルバムをリリースした。全てロックステディだ。自分たちのルーツに戻ったすごくいいアルバムだと誇りに思っている。人生について歌っている曲やシリアの難民についての楽曲もあるんだ。スペインのプロデューサーRoberto Sanchezの制作で、彼はロックステディの音を再現することで知られていている。我々が曲を書いて彼が音楽を作ってLiquidator Musicというレーベルから出た。実は先週新しいアルバムのレコーディングを終えたばかりで、これからミックスやマスタリングをして来年初めごろのリリースになると思う。フランスの腕のいいドラマーがプロデューサーで、彼のバンドが音楽を担当していて我々がリリックを書いた。これはレゲエなんだ。我々は今、よく働いているよ。

●今度の日本ツアーはどうなりますか?

K:前回は東京、大阪などのショウにたくさんのお客が来てとてもエキサイティングだった。皆んなが一緒に歌ってくれて興奮したよ。それにMatt Soundsの演奏はナンバーワンだ!今回も昔からのヒット曲をもちろん歌うけど、新しいアルバムからの新曲も披露するつもりだよ。10月下旬から11月初旬までヨーロッパ10都市をツアーして帰国、そして12月には日本に行くよ。日本人がレゲエミュージックを好きでいてくれてすごく感謝している。この音楽を愛してくれてありがとう!そして、Stranger Cole、Carlton & the Shoes、Leroy Sibbles、Gladdyなどロックステディのアーティストを来日させたり色々と尽力している石井とOverheat Musicをビガップしている。
レゲエの全てはロックステディから生まれた。ロックステディが母、レゲエは息子だ。俺たちはロックステディの時代に育ち、これこそが自分たちの音楽だからこれからもロックステディを歌う。それがKeith & Texの音楽だ。