Text by OKAMAI Photo by JUNYA S-STEADY,OKAMAI
2019年9月にRiddimOnlineに掲載された記事です。
ヒップホップの影響を受けて育ち、多彩なリリシストとしてレゲエリバイバル時にChronixx、Protoje、Jesse Royalなどと登場、2013年にはEP「Lead the Way」、2016年にWalshy Fire(Major Lazer)プレゼンツによるミックステープ「Accurate」を発表、そしてスティーブン・マーリー、ダミアン・マーリーのレーベル“ゲットーユーツレーベル”所属の元、初アルバム『Kontraband』をリリースしたコンシャス・ラスタ・アーティストKabaka Pyramidが待望の来日をする。
Jah Works OGAを起用した「Reggae music」のPVでKabakaを知った人も多いだろう。来日直前のインタヴュー。
Kabaka(以下、K): 名前はカバカ・ピラミッド。リリックの神様だよ。レゲエ・ミュージック代表、なんて言っても"Kontraband”(最大の脅威)だ!日本に行くのを楽しみにしてるよ。
●まず育った環境を教えて。親もラスタなの?
K: 僕の両親はクリスチャンなんだ。キングストンで育って、Sizzlaの音楽の影響でラスタになったんだ。16か17歳の時にラスタファーライを学び始めて髪の毛とかやりだしてさ、レゲエは最高にパワフルな音楽で コンシャスな音楽を次の世代に伝えるために音楽を始めたんだ。
● 16、17歳の時レゲエにハマったってこと?
K: いや、ラスタの影響を受けてラスタを学ぼうとしたんだ。確かその2、3年前僕が14、15歳のときサウンドを始めたんだ。TIME BOX サウンドって言って、キングストンのアップタウンを中心にプレイしてたんだ。高校に行きながら自分達でスタジオを作って、ダブとかのボイスをしてた。ウェイン・マーシャルとかヴァイブス・カーテルなんかをね。僕らのサウンドがアップタウンサウンドの中で一番最初にカーテルのダブを録ったんだよ。 音楽が大好きだったから歌詞を書いたり、僕の兄のSupa Novaにどうやってリディムを作るのか教えてもらって、リディムを作ってラップしたりDJしたりね。
●前はセレクター・DJをしていたの?
K:だいたいリミックスを作っていたよ。当時はリミックスが流行ってたからダンスホールの曲をヒップホップのリディムに載せ替えたりしてたんだ。Code Red、Copper shotやRenaissance やBlack Chineyみたいに、僕もそういうことをやってたんだ。
● 聴いてた音楽はヒップホップ?
K:そう、ヒップホップだよ。1996年にジャマイカの家庭にケーブルテレビが入ってきてBET(アメリカのBlack Entertainment Televisionの略)とかをよく見てたんだ。ウータン・クラン、NAS、Jay-Z、Biggie なんかをね。その年にBiggieが死んだんだ。その頃にヒップホップにハマってたんだよ。
●レゲエ・リバイバルで新しいラスタ・アーティストが出てきたけど彼らとの出会いは?
K: Jah9を最初に知ったんだ。彼女がProtojeに僕を紹介した。ジャミーシア(サーフィンのレジェンド、ビリー・ミスティックのゲストハウスで、当時土曜日にルーツ・レゲエアーティストのショーが開催されていた)に行ったんだ。アップライジング・バンドやレイジング・ファイヤ、No-Maddzなんかもいた。Protojeがそこで僕の最初のプロジェクト「Rebel Music」のリディムをくれたんだ。テフロンとChronixxがプロデュースしたものだ。そのときは彼らのことは知らなかったけど、ただ僕はそのリディムでボイスしたんだ。2011年にChronixxがプロデューサーとしてでなくアーティストとして曲を出したんだよ。あれは4月、僕の誕生日にProtojeといてChronixxとテフロンが来てみんなでそこで和んでChronixxが僕のボイスしたのを聴いて、そこではバイブスでただフリースタイルした。2010〜2011年くらいからみんなで繋がるようになって、Jesse Royalとは、いつかははっきり覚えてないけどその後に出会ったんだ。
● アルバム『Kontraband』について聞かせてください。このアルバムには合計16曲入っててダンスホール、レゲエ、ヒップホップのミックスのバランスが良いね。
K:知っての通り、ダミアン・マーリーがエグゼクティブ・プロデューサーとして作ってる。2015年にダミアンのプロデュースの「Well done
から音楽のつながりが始まってて、彼が彼のプロダクションでやりたかったアイデアを僕にくれてアルバムになったんだ。始まってからは一緒にレコーディングしたり、ダミアンがリディムを作って僕らでプロデュースしたり。僕が歌詞を書いて始まったことだ。時間があればマイアミまでダミアンに会いに行って一緒に作ってったんだ。元々あった曲のリディムを途中で新しいリディムを作って載せ替えたり。「Natural Woman」はそんな感じでできた曲。「Reggae Music」も他のプロデューサーの作った違うリディムだったんだけどGong(ダミアン)が聴いて、シャバ・ランクスの「Copper Shot
みたいなスタイルでやりたいって変えて、僕もそのバージョンの方が気に入ったからね。自然な流れだね。多分いつか「Reggae Music」もまた違うリディムで出すかもね。アルバムのタイトルにもなったKontraband (最大の脅威)はね、Gongが僕にリディムを送ってくれて、リディムに歌詞をのせてスタジオに行ったら、ダミアンが「バース、それでもいいけど何か、、、」って言った後「Kontraband!」って言ったんだ。湧き出した感じだったよ。それで歌詞がひらめいてダミアンがバースを歌って僕が次のバースを歌うっていう風に順番にレコーディングしてあの曲は自然にできたんだよ。"Kontraband"は単なる1曲でなくこのアルバムのメインテーマにもなって、僕らの大切にしているコンシャス(意識の高い)な基盤となったんだ。奴ら(バビロン)は俺らの曲をを妨げようと、気づかせてくれる歌詞を音楽に持ち込ませないようにするけど、アルバムに入ってる全ての曲に共通する象徴にもなった。Gongがアフリカを発達させようとしいてるAkonに電話で連絡してリンクもできた。昔からテレビで見ていたビッグアーティストで誰でも仕事をしたがるような人と僕が連絡できるんだ。Akonと同じ使命を持っているからね。去年の5月25日にアルバムをリリースして、アメリカのiTunesでは2位、ビルボードが3位、最高だよ。感謝してる。他の国では1位もあって嬉しいよ。今でもアルバムはいい調子で、パフォームしててもダンスに行ってもみんな曲を好きでいてくれて「Blessed Is The Man」や「Everywhere I Go」のビデオも好きでリクエストしてくれるんだ。前から評価の高いProtoje、Chronixx、Pressureも参加してくれてていいバランスだ。
●ダミアン・マーリーとの出会いは?
K: Well doneの時だね。ウェイン・マーシャルのアルバムをダミアンが作ってる時に、Jah T から連絡がきて「Gongがジョグリンリディムでそれに乗って欲しい」っていうんだ。その時バルセロナVS レアルマドリードのサッカーの試合をテレビで見ていて、試合が終わってからリディムを聴いて書き始めたけど全部が45分でできた。その2日後くらいにボイスしてダミアンに送ったら「よくやった!
って返信が来たんだ。その前にも会ったことがあったけどそこでは話をちゃんとしなかった。今はミックスしにマイアミのダミアンのスタジオに行って、ダミアンとはサッカーもするし外出も一緒にする仲だよ。
●JAMROCKクルーズも乗ってたよね?
K: 毎年のように行ってるけど、今まで2回出たよ。ゲストとしてちょっと歌ったり、僕のファミリーのやってることだからね。
●最終日にダミアンとChamとパーティーをハシゴして盛り上がってたね!?
K:最高のバイブスだったよ。ジャマイカからマイアミに戻る最終日の夜で、船の風がすごく強くてシャツもはだけるし、船は揺れるし寒いし、でもみんな楽しんでるからいいんだけど。僕、Chronixx 、スライ&ロビーもパフォームした日だ。みんなでスライ&ロビーをステージ横で見て、まるで音楽学校みたいだった。当時のブラック・ウフルの曲を全部聴いたんだよ。最高な夜だった。
●私にとって思い出深いのは、その後ダミアンとChamとダンスに繰り出して、Stone Loveのローリーがプレイしていて、特に「Ghetto story」がかかった時あなたたちが踊り始めて Weddy weddy でまるでシエリベリが踊ってるみたいだったし、でもそれはカバカやChamだった。
K:オーランドの大学に行ってた時のことを思い出したよ。パーティーに行ってエレファント・マンの曲がかかったらダンスの時間でみんなで踊りまくるんだ。その時のことを思い出した。
ジャムロック・クルーズではその後DJブースに行ってみんなが歌い出すし、Bujuの「Driver」もラバダブで歌って盛り上げたよ。次の日にブジュが釈放されるからレペゼンして歌ったんだ。スペシャルな時間だったよ。
●あなた自体もキングストンで去年ショーをオーガナイズしてましたね。アップタウンの綺麗な女性がたくさん来て終始いいバイブスで会場の一体感も素晴らしかったです。
K:会場が当日変更になったけど想像以上に人が来て、Jesse Royal、Kellissaがパフォームしたり、Protojeも出た。シークレットゲストでJr Gongが出て来て歌ったり。バックステージにはKoffee、Govana、Lila Ike、Iba mahr、Dre Islandなどたくさんの仲間たちも来てくれて最高な時間だったよ。来年もまたやるのでみんな来て欲しいな。
●最近のジャマイカについて教えてください。
K: Chronixxの曲を引用して“ジャマイカは特別な石だけどダイヤモンドには遠すぎる場所”だ。つまり地球上の特別な場所だけど、たくさんのクリエイティビティ、たくさんの革命的な気持ちの持ち主がいる美しい小さな島で世界中に影響を与えることができる国。でも同様にダイアモンドのように完璧ではない。たくさんの不正が相変わらず存在し、この国は一体どうなってるんだと思うほどの貧困があり、政府も市民達も同様に責任感を持って良く変えていかなければいけないのに、ジャマイカ人同士で細かい問題があちこちにある、ジャマイカだけではないとは思うけどね。ジャマイカは開発され始めていてレゲエや観光業に影響を受けてポジティブな変化見えているよ。たくさんの人がキングストンにも来るようになってリアルなジャマイカの文化を体感している。特別な石だけど、ダイヤモンドには遠い場所だ。Give Thanks
●●では、あなたの生き方について教えて。
K: 僕の人生観はすごくシンプル。ラスタファリズムが僕らのルーツ、先祖から伝わるもの、どこから来たのか、どこへ向かっているのかを教えてくれて正しい方に導いてくれるんだ。僕らはアフリカからやって来た。僕は人間が同じ方法で同じ創造主によって生まれてきたと信じてるんだ。僕らは責任を持ちいろいろ経験を積んで学び、創造主が僕らを作った以上に成長していかなきゃいけないと思ってる。どこから来たではなく、結束することが人間を強くすると思っている。 みんなお互いに助け合うんだ。進化できるチャンスはみんな持ってるものだからね。
●今年の夏もヨーロッパ、イギリス、アメリカなど4ヶ月弱をぶっ通しでツアーしていますが、レゲエシンガーとして世界中を旅することについてどう思いますか?
K:たくさんの国を訪問できてて素晴らしい経験をたくさんできてすごく感謝している。ジャマイカで生まれたレゲエのおかげで僕も旅ができている。国から国へ移動して340,000人もの人たちの前でパフォームすることができて、僕の音楽をみんなに知ってもらえるということは最高だ。ボブ・マーリー、ピーター・トッシュ、デニス・ブラウンなどのレジェンド達が残してくれた遺産を引き継いで世代から世代へ、人から人へと繋いでいく。音楽が僕の人生を変えた。だから僕もみんなに、より良い人生が送れるように良いことを歌で伝えて教えて、人々が子供達に音楽を聴かせて音楽で人生を教える。人種、国籍、言語も違う人たちがレゲエを歌って、僕らの言葉を喋っている、音楽は世界共通言語なんだ。僕もその一部になれているということは最高な気分だよ。バリアも国境をも壊して音楽は広がっている。リアルなレゲエファンが日本には多いと聞いている。僕は色々なものを見たい。触れたことのない日本の文化に浸ってみたい。異なる文化を経験するのが好きなんだよ。食べ物も色々あると聞いているけど、僕はアイタルだからね(自然食主義)、ショウリンテンプルも見たいな。(少林寺は中国だから勘違い?)日本の90年代の映画のファンでもあるんだよ。
●読者のみんなにメッセージを。
K: レゲエをサポートしてくれてありがとう。日本は素晴らしい国だと聞いていてすごく楽しみなんだ。「Reggae music」をみんなで歌うのを楽しみにしているよ。会場で会おうね。