Text & Photo by Jun Tochino
2017年3月にRiddimOnlineに掲載された記事です。
● Ska & Rockstedy Festival (2016/11/26)
キングストンのゲストハウス“ラブリッシュ”を経営しつつレゲエ三昧のジュンちゃんことトチノ・ジュン。昨年末から今年にかけてのジャマイカ・コンサート事情をど〜んとお届けします。
2016年11月26日、第1回スカ&ロックステディ・フェスティバルがキングストンのボブ・マーリー博物館の並びにあるラニー・ウイリアムス・センターで行われました。当日の入場料が通常ならJ$3,500、VIP:J$6,500なのに今回は少し高かったのと日中から開場時間までがかなり激しい雨が降っていたせいか客足はあまりよくなかったのですが、お客さんの三分の一は外国人というかなりインターナショナルな感じでした。内容はU-Royから始まってストレンジャー・コール、ボブ・アンディー 、キング・オブ・スカのデリック・モーガン、そしてロックステディー代表でリロイ・シブルス、この日の目玉トゥーツ・ヒバート。最後はスペインからのソウェト・スカ・バンドと、さらにこの日の目玉は4月後半には日本ツアーもあるゲイラッズのBBシートンでした。ラインナップはスカ、ロックステディ好きにはたまらない最高の内容で、年配ジャマイカンが懐かしのスカ・ダンスを踊っていたりで本当に楽しかった。トゥーツ・ヒバートのショーもすごく素晴らしかったのですが、バンドチェンジに1時間近くかかりトゥーツ自身のステージも1時間半もあって、ソウェト・スカ・バンドが出てきた時には1時半。ゲイラッズ(BBシートン)が出たのは2時過ぎ、しかも雨の後でものすごく寒くて、せっかくイギリスからのスペシャルゲストBBシートンなのにほとんどのお客さんは帰ってしまい本当にもったいなかった。トゥーツの後に出たスペインのスカバンドがすごく良くて、その後のゲイラッズも、「My Jamaican Girls 」とか「Over The Rainbow’s Ends」とかこの私でも知ってるヒット曲がたくさんあり、声も出てるしすごく良かったのに残念。もし来年このフェスティバルの第2回が開催されるならぜひ日本のバンドに来てもらいたいですね。
● Smile Jamaica 40th Anniversary Concert @ Bob Marly Musiam 2016/12/3
ボブ・マーリーがスマイル・ジャマイカ・コンサートをやってから40周年記念ということでボブ・マーリー博物館でボブの子供たちによる無料コンサートがありました。スマイル・ジャマイカ・コンサートというのは1976年、政党間の抗争が激化し政党支持者同士の襲撃が日に日に激しくなっていたのを和解させようと企画された平和コンサートです。コンサートの2日前、現ボブ・マーリー博物館(当時ボブの自宅兼スタジオ)でリハーサル中にボブやリタ、そしてマネージャーのドン・テーラーが侵入したガンマンに撃たれたが全員奇跡的に助かった。2日後、怪我を負いながらもコンサートの舞台に立ち90分のコンサートを行い、暗殺を恐れたボブはコンサート会場からヘリコプターでブルーマウンテンへ移動し、次の日には自家用ジェットでバハマに飛んで、この後ガンで亡くなるまでジャマイカに戻ることはなかったという伝説のコンサートです。
コンサートに出演したのはドレアイランド、メリッサ、Jah 9などの若手のラスタ・アーティストが中心でしたが、メインはサード・ワールドとトゥーツ・ヒバート。そしてスティーブン・マーリーの娘がDJとして出たり、スティーブン、キマーニ、JR.ゴングなどボブの息子たちによるステージ、最後は息子たちが自分たちの娘や息子(ボブの孫たち)をステージにあげてみんなで手をつないで一家団結を見せたコンサートでした。入場料は無料でしたが前週からボブ・マーリー博物館で一応無料のチケットを配っていてこれがなければ入れないといわれていましたが、当日でもチケットを配っていて何の問題もなく誰でも入れる良いコンサートでした。
●12月のStingやEast Kingston Jamboreeが中止、全滅状態
ジャマイカ音楽業界が不況なのか?去年の年末から今年の年始に行われる恒例のコンサートがいくつか中止になりました。
まずは毎年12月1週目の水曜に行われるEast Kingston Jamboreeは、キングストンのダウンタウン地区の治安がかなり悪かったので中止。
そして最も大きいニュースは30年以上続いてきたStingがキープされなかったことです。通常なら11月中旬に高級ホテルで出演者発表の記者パーティーが催されるのですが、ニンジャマンやバウンティー・キラー、ビー二マンなどの大物が「主催者のレンが出演料を支払わないので出ない
と次々に表明し若手のポップカーンやアルカラインなどもそれに続き、結局12月中旬になっても出演者発表はなく、1週間前になってまさかのキャンセル。30年以上続いたジャマイカのビックダンスなのに本当にあり得ない状況。去年までついていた大型スポンサーのダウンサウンドが下りたことや、アーティストたちの出演拒否の影響だったのでしょうか?今年はやるとアナウンスしていますが、一度ストップしたビッグダンス、大変むつかしいはずなので残念としか言いようがありません。クリスマス時期にキングストンで行われていた大きなコンサートがなくなったのは寂しくて仕方がありません。
● 1月Rebel saluteの一人勝ち(2017/1/13-14)
今年は毎年1月末に行われているニンジャマンのバースデー・バッシュもおそらくスポンサーのダウンサウンドに下りられた金銭的な理由により中止。この年始年末できちっとショウができたのは結局レベルサルートのみ。 レベルサルートは皆様ご存知の通りトニー・レベルの誕生日を祝うコンサートで、1月13〜14日の2日間、セント・アンズのリッチモンド・エステートで行われました。出演アーティストは2日間で総勢なんと40人、多すぎて一人20分しかなかったのですが、デリック・モーガンから今いけているポップカーンまでが出るというおもしろいショウでした。ラスタのイベントなので、会場内で大っぴらにガンジャは売っていますがアルコールや肉類は一切売っていません。
1日目は天気もあまり良くなく客足はいまいちでしたが、ショウの頭は最近日本に行ったノマッズなどの新鋭ラスタ系バンド、NYからエド・ロビンソン、ジェネラル・トゥリー、ローン・レンジャー、さらにあの大ヒット曲「バンバン」のシスター・ナンシーなど80’sのベテラン勢、そして主催のバースデー・ボーイ、トニー・レベル。そしてゴスペル・シンガーに転身し名前も本名のマリアン・ホールに変えたレディ・ソウ。ラスタのイベントなのに教会で歌うゴスペルを絶唱しながらアーメンやジーザスを言いまくり、最後には見ているキリスト教の観客も自分も泣きまくる1時間以上のステージ。これでいいのか悪いのか?彼女はレゲエのショウ、いやラスタのショウに出演していいのか???でした。
この後、ラスタ・セグメントでアビシニアンズ、ウオーリア・キング。そしてこの日の目玉2つ目は、懐かしいチャカデマス&プライヤーズ、さらにウエイン・ワンダーのステージにスプラガ・ベンツが登場、そしてハーフ・パイント・ファンタン・モジョと続き、この時ショウのトリに用意されていたトーラス・ライリーが突然ファンタン・モジョのステージに入ってきたのです。こんなことはありえません。どうやらこの時にバックステージで何か問題が起こっていたようでした。その後アイ・ウエイン・アントニーBと続き朝6時に1日目終了。
2日目は天気も良くメンツも良いので会場は早くから大入り。スタートは最近トニー・レベルとコンビを出したウイッカマン。レディーG、チャック・ターナーのベテラン勢に続いて今回すっごく良かったラスシャイロ、ブッシュマン、デュラン・スティーブンス。そしてリロイ・シブルス、リロイ・ギボンズ、エロール・ダンクリー、ストレンジャー・コール、デリック・モーガンのベテラン勢、リロイ・シブルスは自分でベースをもってスタジオ・ワンのリズムを演奏したりでとっても楽しいステージングでした。
そして今日の目玉1のココティは自分のフルバンドで出演しましたがショウの前半に新しい曲をやり過ぎてまさかのフラップ。後半はさすがにヒット曲を歌いまくり、結果は大盛り上がり。続いてこの日VPレコードからLPが発売されたクイーン・アフリカ。彼女はトニー・レベルのベイビー・マザー(シングル・マザー)でもあり、まるでこの日の主役のように新しい曲から古いヒットソングまでを見事に歌い上げました。次は若手ニュー・ラスタで人気のジェシー・ロイヤル、そしてキャット・クーア率いるサード・ワールド。彼らは2年前にメインボーカルのバニー・ラグスを亡くしましたが新しいボーカルのA.J.ブラウンが見事に歌い上げさすがのステージを見せてくれました。でもバンド・チェンジに1時間もかかり少し中だるみな感じでこの時点ですでに朝6時。まだまだ出演者は残っていてほんとにこのショウは朝には終わるのかと心配したくらいでした。次に目玉2のサンチェス、本当にレゲエのヒット・チューンばかりでいつも歌うゴスペルなども、この日はなく素晴らしい30分のステージング。次にアサシンがまた懐かしいデボンテ&タント・メトロ、そしてスプラガ・ベンツと続き、目玉3のポップカーン。この日は本名アンドリュー・ヒュー・サザーランドでクレジットされていて、私はポップカーンのショウを見たのが初めてですがすごく良かった。あんなに良いとは思いませんでした。曲はほとんどこの私でも知っていたしステージングも良かった。そして最後の取はビーニマン。この時点で朝10時でしたが、ビー二マンは本当にみんなが楽しめる楽しいステージングを見せてくれて疲れきったお客さんも彼のステージを楽しんで踊って最後まで帰りませんでした。
去年までのレベルサルートはどちらかと言えば古いアーティストが多い大人のショウだったのですが、ポップカーンが出たり今年は大人も子供も楽しめるは新しいショウでした。一番良かったのはやはりサンチェスでお客さんが大合唱。そして何年振りかに見たアントニーBでしょうかね。「ファイヤー・ポン・ローマ」などの大ヒット・チューンを久々に大合唱してしまいました。
実は1日目なのですが、トーラスとアントニーBの間にちょっとしたいざこざがあったらしく、トーラスがアントニーBの後でトリをやるのが嫌で、トニー・レベルに掛け合ってアントニーBの前で出たいと言っても変えてもらえず、いきなりファンタン・モジョの時間に割って入って飛び入りしたのが真実らしいです。トーラスってもっと穏やかな人だとイメージしてたんですが、そうじゃないんですね・・・
もし来年もポップカーンのようなアーティストを1〜2人出してくれたらすごく良いです。私みたいなおばさんおじさん客は、もう若いアーティストが出るショウにそんなに行かないのでこういう大人のショウにちょっと出てくれたらとても楽しめます。
あと2日間で40人の出演は無茶かなとも思いましたが、1アーティストの長いショウを見せられるよりも20分でヒット曲ばかりは飽きないなとも思いました。もし今年の年末年始にジャマイカにショウを見に来るならこのレベルサルートに合わせてくれば、たくさんのアーティストをみることができるので良いかもしれませんね。
レベルサルートは毎年1月2週目の金曜と土曜と決まっていますので18年は1月12〜13日となります。ぜひぜひ見に来てくださいね。