STREET

Keith Hufnagel and HUF

 
   

Interview by Yosuke “CB” Ishii

2015年10月にRiddimOnlineに掲載された記事です。

僕がSFに住んでいた97年から05年の間、KeithもちょうどSFに住んでいた時期があった。僕はSFのReal Skateboardsの“Non Fiction”というビデオを何度も見ていてSFを心底愛するようになり、SFでスケートしている自分が誇らしかった。そのビデオのKeithのパートは最初の2秒間でアドレナリン全開にさせられた。そのシーンはクルマのボンネットをオーリーで飛び越えるのだが、「このオーリーがシビれる!」と何人の友人達に熱く語った事だろう。
 初めてKeithとスケートをした時のことだ。いくつかのスポットを一緒に廻ったのだが、自分がメイクできるようなスポットはなかなかみつからなかった。それでもやっと僕でもトライ出来そうだと思えるスポットに到着した。だがスタートからたったの5分でオーリーマスターの目の前で歩道に乗るだけの30cmのオーリーで鬼ハングし、その日あえなく終了。それが彼にウケたのか、それ以来の友人だ。

●HUF Tokyoのオープンおめでとう! とても良い場所に良いストアです。

Keith Hufnagel(以下、K):ありがとう。

●実は今年の7月、LAのFairfaxにHUFが再オープンした時にオープニング・レセプションに行ってKeithに会いましたよね。で、その時にKeithがMetropolitanウィールのCapを被っていたのが凄く気になってたんだけど、ひょっとして今後Metropolitanのプロダクツを作っていくの?

K : 僕は95年から98年くらいのMetropolitanがなくなるまでのライダーで、スタートからあのブランドが発展するまで大きく関わっていたんだ。それで1年半前にJim Thiebaud(サンフランシスコのDLX Distributionの副社長)にMetropolitanの権利について聞いたらJimが僕にくれたんだ。だから商標を申請して、新しいカンパニーとして甦らせたよ。Metropolitanは僕がゆっくりとやっていくよ。

●DLX Distributionが所有していたブランドだったんだね。僕はてっきり東海岸のどこかが作っていたブランドかと思っていました。

K : うん、確かに東のイメージが強かったね。当時は西海岸と東海岸の交流が少なかったからDLX Distributionが東海岸のスケーターを集めてロゴを作って上手くやっていたんだけど、ある時DLX Distributionがもう一つのウィール・ブランドのSpitfireを休止するか、Metropolitanを休止するかという話しになってMetropolitanを活動停止にしたんだ。それで今僕はMetropolitanをスケートアパレル・カンパニーとして復活させようとしてるんだ。だからウィールはやらないよ。どう?CB的にも良いアイデアだと思わない?

●うん、それはすごくイイ! ここ最近は90年代のグラフィックやデザイン、ファッションなんかも再注目されているしね。僕もCB DistributionとしてLAに住むChrisがやっている“Dear,”というブランドを去年から取り扱い始めたんだ。90年代にGonz(マーク・ゴンザレス)が着ていたIsraelのTシャツやJason Leeが着ていた$のTシャツ、Sean Sheffeyが着ていたアインシュタインのTシャツ、Ray Barbeeが被っていたRBキャップとかを作っているんだ。“Dear,” って知ってる?

K : 知らないな、ちょっと今ウェブで調べるよ。

●最近だとH-StreetのTシャツなども作ってたよ。

K : H-Streetは最近復活したからそれってブートになるんじゃないの?

●そうそう(笑)、ChrisはH-Streetが復活する直前に作ってたんだけど、この前Tony Magnussonに注意されたみたい。それでTonyの大ファンが高じて作っちゃったって言い訳して、もうこれ以上作らないという事で許してもらったらしいよ(笑) 。でもChrisはDLX Distributionが抱えていた(トラックのゴム・パーツ)ブッシュ・ブランド、Supercushも作ってたよ。でもそれはDLXへ行って許可を貰ったって言ってたね。

K : だろうね。クソ~、“Dear,”か。それもSupercushを作ったのか、、良いなぁ。良いの見つけるね、Fuck’n CB!!

●ははは、KeithはNY、LA、SFというアメリカの3つの大都市に住んできたんだけど、スケーターとしてこの3都市のそれぞれの良い所はなんでしょう?

K : まぁ住んだ年代も違うから難しいけど、NYは僕にとって間違いなくホームだし、プッシュで簡単に色々廻れる街だけど、四季もあるし街の地形も違うし路面はとにかくラフだから難しいよね。初めてSFに行った時はダウンヒルをたくさん経験した。NYではカーブやレッジやフラットが好きだったけど、SFはダウンヒルを学んだって感じかな。LAはそれらが全てある感じかな。ただ、NYやSFの様にプッシュでまわれないからドライブしてスケート・スポットを巡ることになるけどスケート・スポットの数でいえばLAが一番あるんじゃないかな。僕はNYで育ったしNY流のストリート・スケーティングが好きだけど、今はLAのパークで滑っているよ(笑)

●どこに行ってるの?

K : この前パサデナのパークへ子供と行ったくらいかな。あとはたまにBerrics(Steve BerraとEric Koston二人のプロが始めたインドア・スケートパーク)へ行ったりとか。最低限のスケートしかしてないからもっとしたいんだけどね。

●KeithにとってNY、 SF、LAの3つの都市を代表するスケーターは誰ですか?

K : そうだね、みんな色々な都市に引っ越しちゃうから誰とは言えないけど、自分が育ってきた年代でいえば、SFはMike Carrol、 LAはMark Gonzales、NYはSean Sheffeyだね。僕はSean Sheffeyのスケートをずっと見てきたからね。

●今まで沢山聞かれていると思いますが、西海岸に引っ越したきっかけは?

K : 1992年に家族がポートランドに引っ越したんだ。僕はまだNYにいたけど、両親がカレッジに行かなきゃだめだと言ってきて、当時のSFには憧れのEMB(当時のプロが滑っていたSFの有名なスケート・スポット)があったからSFに決めたんだ。初めて住んだ都市だったけど6ヵ月後にはプロになったよ。

●これも何度となく聞かれていると思いますが、なぜSFで最初のショップをオープンしたんですか?

K : 当時の僕はSFに住んでいて、スケートツアーやデモで世界各地を廻っていた。NY、LA、TOKYOなどをずっと見てきて、、、もちろんSFにはFTCやDLXSFっていうスケート・ショップがあったけどStreet Wearの要素を持ったスケート・ショップがないと思って始めたんだ。

●LAにもTokyoにもストアがあるから、今度はNYですね?

K : そうしたいね、僕たちの今のゴールはそこだね。もう1年以上も良い場所がないか探しているんだけどね。

●今、具体的にHUFでは何をしていますか?デザインですか?

K : 僕は全てのクリエイティブ・ディレクションだね。全てのデザインを確認して、工場と話し合いをして、Skate Teamともミーティングをしているよ。

●今何人ぐらいが働いているんですか?

K : 80人ぐらいかな?

●エッ、80人!! スゴイ。

K : うん、多すぎるよ(笑)

●たしかKeith自身が描いた手書き文字のTシャツがあるって聞いたんだけど?

K : うん、有名なのはScript書体のやつだね。他にもやった物があるけどそんなには表には出してないかな。

●子供の時はどうだった?絵を描いたり、グラフィティーをやったりしていたんですか?

K : グラフィティーもやっていたし、アートもやっていたよ。今は落書きが多くてアートはやってないけどもっとやらないとなって思うよ。CBどう?僕が作ったらアートピースを買うかい?(笑)

●ははは、それではデザイナーでは誰に影響を受けてますか?

K : デザインというと難しいけど、アーティストは沢山見てきたからGonzからThomas Campbell、Ari Marcopoulosなど様々な人を見てきたよ。カンパニーでいえばStussyやSupremeなど、僕は全ての物を見てきているよ。みんな素晴らしい物を生み出しているし、世の中には常に新しいアーティストが出てくるし、僕はCleon Peterson(LA在住のアーティスト)のファンだしね。好きな人は山ほどいるけど、いつも追いかけて、たまにハングアウトしたりするのはBarry McGeeさ。僕の中ではナンバーワンだ。Barryがやっている事を愛しているし最も効果的な方法をやっている究極のアーティストだと思う。

●今までHUFは様々なコラボをしてきていますが、最近は積極的な気がしますが、1年間でどれくらい出してますか?

K : たぶん12回くらいじゃないかな?ただひと月に1回とか決めているわけじゃなくて、HUFにはフットウェアー、ソックス、アパレルなど色々なディヴィジョンがあって、それぞれのコラボもあるし、スケートデッキやキャップ、小物のコラボなど多様なプロダクツでアーティスト、ミュージシャン、ファブリック(生地)などとやっているんだ。いくつかはシーズンのラインに入っていたりもするけど、そうでないのもあるしね。

●では、もし自分が凄く好きだけど、コレはマニアック過ぎてごく一部の人間しか反応出来なくて絶対売れないなって思うものでも商品化したりしますか?

K : もちろんやるよ! 自分のプロジェクトを信じていたら作るね。セールスだけが全てじゃない。どういうプロダクツを出すか?どういうイメージを出すか?世の中に新しい物を紹介するっていうことだからね。

●HUFが他のブランドと比べて決定的な違いとは何でしょうか?

K : 僕がいつも思っているのは、HUFは最先端を行きながらも、そこにHeart & Soulを込めたプロダクツを展開しているってことだ。僕たちはたったひとつのプロダクツをとっても常に更にもっと良いモノを作る為にと長い時間を割いているし、同時にスケートボードを感じ取ることができ、かつ先端を行くモノを作っている。HUFは100%スケートボードだし、僕らはそこで息をして生きている。そしてHUFはアートや音楽に対しても正しく評価して感謝してるってことだ。