MUSIC

J Rocc

 
   

Interview by CB Ishii(石井洋介) Photo by "EC"Ishii

2014年5月にRiddimOnlineに掲載された記事です。

J Roccが「STONES THROW & STUSSY present J. ROCC JAPAN TOUR 2014」でやって来た。東京、名古屋、仙台でプレイしたが、45を DJ MUROと二人でかけまくった東京の MICROCOSMOSでのプレイは、大評判だった。 EC(石井)はしっかりチェックしていたが、、、僕は何度も見ているJ Roccのプレイということもあり、つい油断して残念なことに見逃してしまった。そんな僕のようにミスったファンのために、最近のJの動きを聞いてみた。

●ECは昨夜のプレイがとても楽しかったようです。

J Rocc(以下、J):そう!昨日はアツい夜だったよね。EC、来てくれてありがとう。すごく良い雰囲気で終了出来た。僕はMUROとあんな感じでプレイしたことがなかったからとてもドープだった。僕が今、日本に居るから言っているわけじゃない、僕は1人のDJとしてずっとMUROを尊敬してきているし、日本に来る度にMUROはキーパーソンだと感じる。彼とあの様な形でDJ出来たりハングアウトしたりするのはとても光栄だよ。昨夜は本当に最高だった。だからCBも本当に来るべきだったよ!

●ウッ、、、。昨夜は全てヴァイナル(45)のプレイだったそうですが、やはりヴァイナルにはこだわりがありますか?

J:もちろんだよ。今でもヴァイナルは買うし、いつもヴァイナルと一緒に居るよ。このインタビューが終われば、すぐレコード・ショップに直行だよ。ストップすることはないよ、いつもだ!

●ECが昨夜見ていて、一緒にやっているMUROさんがホントに楽しそうに見えたそうです。あなたはどうでしたか?

J:もちろん!楽しかったよ! もの凄く楽しかった! 2人で一緒にやる事でとても良いヴァイブスが生まれたね。僕らは2人で5曲ずつぐらいを交互にかけたり、MUROが3曲かけたら僕も3曲かける、、みたいなルーティンでやったんだ。それも実はプランなんて無しにね。プレイの最初は決まった時間通りにやっていたんだけど、途中からはお互いが楽しむ様になっちゃって笑いながらプレイしてたね。言葉の壁も越えて「MURO、準備は良い?」って聞くと「もちろん、もう準備出来てるよ! これいきたいんだよ!」って具合にね、フリースタイルだよ。前日に僕が持ってきた45をMUROに見せてはいたんだけどね、全くあんな風にプレイする計画は立ててなかった。たぶん彼は僕が持ってきた45を見てアイデアを膨らまして、僕が持ってきた45の音楽に近いモノを持ってきたと思うんだ。だからプレイ中にお互いのレコードを見て「あッ! それはかけないで!」って言ったり、彼がプレイした45で僕も同じ物を持っていた時は、それを見せて「Wow! 君も持ってきてたんだ!!」ってお互いに笑いあったりね。だから純粋に楽しんだっていうのが正しい、ホント楽しかったよ!

●そういうプレイはたまにするんですか?

J:うん、家とかではたまにやるね。Peanut Butter Wolf、Dam-Funk、Mayer Hawthorne、 Madlib、Rhettmatic、、みんなだよ、たぶんこれはLAスタイルなんだと思うよ。 一緒にDJしようっぜってね。

●それは家だけで?

J:う~ん、ヴァイナルならそうだね。セラートでもやるけど、それは「Back to Backs」と呼ばれていて、例えばロンドンなら仲の良いDJと同じ様なことをやる時もあってそれも楽しいけど、それらはもっと大きなフェスやパーティー向きって感じだね、、もちろん笑いながら楽しい時間ではあるんだけど、、、コンピューターを見ながらタイプして曲を探して、BPMを合わせてというのはちょっと違うんだ。ヴァイナルはもっと本質的なモノだね。だからヴァイナルでDJするのとコンピューターでDJをするのはフィーリングが違うんだ。ヴァイナルは自分が持ってきた物しかかけられないからその中で調整していかなきゃいけないけど、コンピューターだったら何でも入ってるしね。僕と彼だって同じ曲が沢山入ってるはずだよ。とても面白い経験だよ。あんな感じで他のDJとプレイするのはとても楽しかった。もちろん僕だけのセットの時間もあったけど、ああやって交替しながらやるのはとても面白い。良い曲だけをかけなきゃっていうプレッシャーも少しだけ和らぐし、「僕はその曲のリミックスを持ってるぜ」なんて会話しながらヴァイブスを上げつつ出来るからね。

●MUROはどんなDJですか?

J:King of Digginだよ。さっきも言ったけど日本に来る様になってから彼のことはとてもリスペクトしているし、「MURO is Dope」これに尽きるね。彼がアメリカに居ても同じことを言ってるよ。日本のDJと言ったら彼なのは間違いないしKingだよ。ミックステープも何枚も出しているし、そこら辺のノーマルなDJではなく、Mighty CrownやMUROというのは誰でも仲良くしたい本物のDJだよ。本当に彼とDJ出来たのは光栄だよ。

●それでは自分自身はどう思いますか?

J:分からないな(笑)。僕はHip Hop, Reggae, House, DiscoをまわすオールラウンドDJかな。僕は自分がベストなDJだなんて思っていないし、常にどこかに自分より上がいるものだよ。誰がベストかどうかなんて分からないし、僕がベストだとも思わない。ひょっとしたらどこかにとんでもないスキルを持ったDJキッズがいるかもしれない。敢えて自分のことを言うのであれば僕は楽しい雰囲気を作れるDJだと思う。僕はお客さんが楽しい時間を過ごしてダンスしているのを見るのが大好きだ。もちろん僕をじっと見ながら首を振っていても良いんだけど、ダンスしているみんなを見る方が好きかな。

●君たちがタマっていたLAのFat Beats Recordsがなくなってからはどこでレコードを買ってるのですか?

J:LAにはまだレコードショップが沢山あるよ、Amoeba, Freakbeat Rockaway, Factory Records, Poobahとかね。 Fat Beatsがなくなってしまったのは実に悲しいけど、まだまだ沢山在るし、どこのショップも強みがあるからね。Amoebaでは新譜を見たりとか、他では12インチを漁ったりとかね。だから大丈夫だよ。ただFat BeatsがなくなってからはHip Hopのレコードを以前の様には漁らなくなったけどね。96年から2004年あたりまでかな?RawkusやCompany Flowが活躍していた時代の様なレーベルもそこまではない感じだしね。もちろん今も少しはあるけど96年から2004年くらいまでの時代とはあきらかに違うよね。僕はオンラインではあまりレコードは買わないんだ。オンラインでサーチしないから沢山の良いレコードを逃してるけど、やはりレコード・ショップで買ってるね。僕はオンラインでのクレジットカード決済もあまり信用してないしね。世界中を飛び回っている事が多いからどうしても公共のWiFiを使う事も多いし個人情報の漏洩が怖いから。レコード・ショップには最低でも週に1回は行くね。

●「CA ALL DAY」とは何でしょうか?

J:おー!! その言葉をこの国で言ったら捕まっちゃうよ! ハッハッハ。
CAはChronic Avengersでハッパのスーパー・ヒーローって感じの意味で僕らLAにいる友達同士のクルーだよ。でも誰が言い始めたのか、それが今は違ったものになって「California All Day」になってしまった。「CA ALL DAY」っていうTシャツだって作っている人達がいるしCAと言ったらCaliforniaっていう風になっちゃうだろうしね。だから今や一般的にはCAはCaliforniaを現していてChronic Avengersというオリジナルはどこかへ消えてしまったかな。

●でもクルーだった?

J:そうだよ、元々は掛け声だったんだ。誰かが「CA!」って叫んだら仲間の誰かが「ALL DAY!!」って叫んでハッパを吸いにいく合図だった。だからクラブの中でも「CA!」って言えば「Hey, 外に吸いに行く?」って話しかけられたりさ。でもさっきも言った通り今は全く別の意味になってしまった。でも元々は僕らのクルーの合図だったよ(笑)。

●僕の知り合いでもあるKもクルーにいましたよね?

J:そう、彼もクルーの1人だよ。彼がカリフォルニアに仕事で来た時も僕らの仲間とつるんでたんだよね。僕らのクルーの中にはアーティストだったりデザイナーだったり、スケート関係の仕事に就いていた奴もいたから彼らを通じて知り合ったよ。でも実際はハッパを吸うことがメインなんかじゃなくて、クルーであるってことだ。だからKがいる事でワールドワイドにクルーがいるっていうのは良い事だよね。

●ではJ Dillaと一緒に仕事をした事で何か面白いエピソードはありますか?

J:まずはJ Dillaとやったのはとても「凄い事」だってこと。彼は用事がない奴は誰もスタジオには居させなかった。君がJ Dillaだとして、僕がスクラッチを担当して、ECがキーボードをやっているとするだろ? まだ何も始まっていなくても、スタジオに誰かが訪ねてきたら、そいつは去らなければいけなかった。「今は仕事の時間だ」と言って絶対に僕ら3人だけしか入れなかった。僕は彼と4回スタジオに入ったけど2回は追い出すのを見たよ。「入ってこないでくれ!」ってさ。でも誰もそれには逆らえないよね。彼のスタジオで彼の仕事だし。彼の仕事に対する意欲は凄まじいものだったよ。彼はそういうタイプの人間だった。パーティーも女の子もなし、仕事の時は仕事のみだった。一日中だよ。ある時J Dillaとスタジオに入っていたら、当時僕がデートを重ねていた女の子から何度も何度も電話がかかってきた事があったんだ。「ワーワーギャーギャー、どこにいるの?今から出てきてよ!」って言って「おい、こっちはJ Dillaと今スタジオに入ってるんだぜ!」って言ったけど埒が明かないから、一度スタジオを抜けて4時間後に戻ったら彼はまだずっと何かを作っていたんだ。彼はスタジオに居る時は常に集中していた。

●ひょっとしたらこれを読んでいる人達は知らないけど、実は誰か著名人と仕事をしていたなんてことはありますか?

J:昔ロングビーチでのショウでWu-Tang ClanのDJをしたよ。あとはBlack StarのDJもしたね。あとはKRS-Oneにビートを作った事もあるよ。アンダーグラウンドな事ならいくつかあるけどね。でもたぶんみんなが知らないと思うのはKRS-Oneのビートかな。僕はKRS-Oneを聞きながら育ったし彼はビッグアーティストだからね。ビートを作る事が出来て彼がそれにリリックを乗せて良いものが出来たんだよ。たぶんインディペンデントで出していたアルバムの為だと思うんだけど、12インチもリリースしたよ。それにはインストゥルメンタルも入ってるし、彼も良いと思ったんじゃないのかな。僕のスペルを間違えていたけど12インチを貰えたしね。

●ははは(笑)

J:僕はCが2つなんだけどCが1つしかなかった。まぁ良いんだけどね。曲の中でも僕の名前をシャウトしてるし、それ以上の事は望めないよね(笑)なんたってKRS-Oneだぜ!

●タイトルは?

J:「I REMEMBER」だよ。アレサ・フランクリンをサンプリングしてるんだけどアレサが「I~REMEMBER~」って歌っている上を彼が「Big Daddy Kane~」とか歌いながら昔を思い出す感じの曲なんだよ。凄く良い仕上がりだよ。

●何かこれから新しいアルバムの予定は?

J:Medaphoar。MEDとも呼ばれている彼とのレコードが出るね。あとはStones Throwからまた出さなくてはいけないんだけど、最近はツアーが凄く忙しくてなかなか進んでいないんだ。僕はJ Dillaタイプの人間ではないから、スタジオにずっと籠ってっていうのが出来ないんだ。僕は常にどこかへ行ったり、ヴァイナルを買ったり、ミキシングしたりDJしたり、、ってさ。僕も椅子に座ってしっかりやらなくてはいけないんだけどね。でもMedaphoarのはもうすぐ出るよ。アートワークも終わったし、レコードのマスタリングも終了してるしね。

●きっとみなさんに聞かれている質問かもしれないけど、テクノロジーが発達してDJをやるというのが少し簡単になっているような気がしますが、何が一番重要だと考えますか?

J:練習だよ。練習、練習、練習。練習をやめてはいけないね。もし誰かが君をディスったらまた家に帰って練習だよ。僕も「右手はあまり良くないね」と言われた事もあるし。DJになろうとしている人なんてゴマンといるんだ。僕もビデオを見て他のDJが何をやっているかを研究した。彼らがやったことをそのままトライしてまず出来る様にして、そこから僕なりのやり方にするにはどうしたら良いのかを考えた。例えばミックスの仕方を教えてもらったとするよね?「そうやってビートをミックスしていくのか!」と学んだら、次にさらにその上のダブルでは出来るのか?と次の事も見つけ出してた。当時だったらDJ AlertやDJ Cash MoneyのオールドスクールのDJから見て学んだ。今だってA-TrakやJazzy JeffのDJをYouTubeで見たり、もちろんLiveで見たりして「そうか、そういうふうにやるのか」ってさ。「それなら彼らの様にやりつつ僕のやり方でやるにはどうしたら良いのか?」って考えてる。最初にやるべきことは他のDJのプレイを見ることだね。僕がDJを始めた頃は今みたいにインターネットがなくてVHSしかなかったから、持っていた1~2本のビデオを巻き戻しては再生を繰り返して「うわー、なんだよ今のどうやるんだ?スローモーションだ」って一日中やってた。僕はそうやって練習したんだ。あとはラジオも聴いた。LAにはKJLH, KDAY, KGFJなど沢山のラジオステーションがあって素晴らしいトップのスキルを持ったDJがたくさんいるんだ。それを聞いたり録音したりしてどうやってやってるのかを研究して練習したよ。どんなDJからだって練習をして学ぶ事は必要だよ。他人の事を吸収するべきなんだ。「あれはヒップホップじゃない」とか言って視野を狭くしてはいけない。Hip HopもReggaeもDiscoも聞いてさ。みんなそれぞれ違ったやり方でDJをするんだから。僕はHip HopのDJとして引き合いに出されているけど僕自身はHip HopのDJだとは思ってないよ。だって僕はどの曲だってかけるから。だから僕はあらゆるジャンルのDJを聴く。そして「今のはHip Hopの曲だったらどうやってやるんだろう?」とか「そのHip Hopの曲をHip HopのDJがHouse、Disco、Reggaeの曲でならどうやってやるんだろう?」って考えたりさ。とにかく人のものを良く聴いて学ぶことだよね。DJであるなら視野を狭くしないで何でも聴くことだよ。

●お〜!今日はこのくらいで、ありがとう。ではレコードショップにどうぞ!!

J:アリガトウ!Thank you!!