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”Stay Positive” John Cardiel

 
   

Interview & Photo by CB Ishii (石井”CB”洋介)

2012年1月にRiddimOnlineに掲載されたインタビューです。

ジョン・カーディエルのDVD『Epicly Later`d /JOHN CARDIEL』の日本語盤が発売され話題となっている。そんなわけで以前Boardkillマガジンに掲載したインタヴューを加筆して掲載する。
 運動神経が人並み優れた超人スケーターだったジョン・カーディエルは2007年に不慮の事故で走ることさえもままならない状態になったが、その苦悩を支える精神力の源とは、いったい何なのか?ハイスピードでぶっ飛んでいる超人カーディエルは誰もが好きだ。でもこのインタビューを読んだらスケートしていない“人間カーディエル”をもっと好きになるはずだ。

19歳から8年間も住んでいたサンフランシスコ。ここでの毎日と言えばカレッジ通学とバイトに明け暮れていたということになっているが、友人達にはバレバレで、肌身離さず持っていたのはスケートだった。昼でも夜でも時間があればユニオンスクエア(当時はまだスケートが出来た)やPier7、3rd & Armyをはじめとした世界的にもその筋では有名なたくさんのスケート・スポットに通い、スケートを通じてたくさんの友人達ができた。そのおかげと言えば聞こえはいいが、それしか知らない僕は今も原宿でHeshdawgzというピュア・スケート・ショップをやっている。そんな友人達の中でもAnti Heroというカリスマ・スケート・チームのジョン・カーディエルは別格のスケーターだ。
しかし2003年、不慮の事故で下半身付随となり車椅子生活を余儀なくされたが、不屈のリハビリで歩けるようにはなったがプロ・スケーターとしての活躍はできなくなってしまった。2007年、そんな彼にインタヴューをしにサクラメントの閑静な彼の家を訪ねた。
 では先ず上の4分の映像を見てから、この文章を読んで欲しい。

映像を見てお分かりのように、彼は運動神経が人並み優れた超人とも言える。逆に今は不慮の事故で走ることさえもままならない状態だが、そのギャップに苦悩する彼を支える精神力の源とは、何なのか?

●あらためて本名と年齢を教えて下さい、あはは、テレるね。

JOHN(以下、J) : ジョン“ジョセフ”カーディエル。33歳。サンノゼで生まれたんだ。

●えっ、そうなんだ。ここサクラメントにはどれくらい住んでるの?

J:21歳の時からだからもう、、12年になるのかな、長いなぁ。I LOVE SACRAMENT!!そんなにクレイジーじゃないしメローだからね。僕はサンフランシスコには住めないな。クレイジー過ぎるよ。CBはサンフランシスコが好きかい?

●そりゃね。8年住んでた第2の故郷です(笑)。僕と初めて会った時の事を覚えてる?

J:覚えてるよ、サンフランシスコのベイ・ブロックスで一緒に滑ったね?

●そう、ジュリアン(ストレンジャー、Anti Heroのボス)とカーディエルがダウンタウンで滑ってて、カーディエルが一緒に行こうよって言ってくれたんだよ。まるで夢のように嬉しかった。あれはあこがれの2人とのセッションだった。じゃあ、いつか聞きたいと思っていたことなんだけど、ビデオにもなってるサンフランシスコのLevi’sショップの長〜いハンドレールで50-50(スケート・トリック)をした時の事を教えてくれる?あそこを通るたびに考えるんだ。

J:あれはVansの広告用の撮影をしてたんだけど、あのハンドレールにはスケート止めのノブが付いてたんだ。だけど偶然その時には誰かがノブを外していて「これはこのチャンスしかない」って思って僕とゲイブ(モフォード)とTNT(トニー・トゥルヒーヨ、Anti Hero/Vansのプロ)と3人で次の日の朝早く、たしか7時か8時に戻ってトライしたんだ。あれはすっごく気持ち良かった。あれは僕がやった中でも一番デカいレールだね。

●何段??

J:たしか25か26段だった。

●クレイジー!何トライ?

J:6回か7回かな?あんなの何回も出来ないよ。絶対メイクしなきゃーって。たぶんその後すぐにノブが付けられたと思うけど。あのレールはそれほど角度がなかったから、すごくスピードをつけて飛ばなきゃだめだったんだ。

●あれはたしかに速かった。

J:スローじゃ絶対にメイクできないんだよ。

●今はAnti Heroのライダーになってからどれくらい?

J:14年ぐらい。1994年のスタートからだから、すごいよね、Anti Heroは未だに突っ走ってる。僕はもっと良いものができる様に色んなものをデザインしてるよ。ジュリアンとは僕のベストフレンドだから完璧だよ。

●Anti Heroを作ったのはジュリアンなの?

J:そうだよ。僕とジュリアンは長い友達だったんだけど、突然DLXがジュリアンにカンパニーをスタートさせてくれたんだ。彼の中ではAnti Heroという名前は既に決まっていて、ライダーにならないかって誘ってきてくれて、クールだと思ったんだよね。それですぐにボブ・バーンクイスト、アンディー・ロイ、ショーン・ヤング、ジュリアン、それと僕というチームになったんだ。
(※DLX Distributionはジム・シーボー、トミー・ゲレロを中心にスピットファイヤー、Real,マーク・ゴンザレスのKROOKEDなどを抱えるサンフランシスコのスケートボード会社)

●Anti Heroっていうブランド名はどこから来たか知ってる?

J:たぶんジュリアンが読んでいる本からじゃないかな。彼の好きなチャールズ・ブコウスキーの本からじゃないのかな。僕自身はブコウスキーの事は全然分からないから確かではないんだけどさ。

●ところでジュリアンってやっぱり怖い奴?BOARDKILLの小関編集長が以前ジュリアンの写真を撮ろうとしたら殴り掛かられそうになったって聞いたけど。

J:あはは、ジュリアンは写真を撮られるのが大っ嫌いで、注目されるのも嫌い。たとえば、、、「これ見て、これ見て」って近づいたりしても「どけ!、この野郎!」ってな具合に。ジュリアンは単に難しい人間なんだよね。でもCBは、僕とジュリアンの写真を撮ってるし、ジュリアンにTシャツのデザインをやってもらったりしてるじゃない。たいしたものだよ。

●そう言われれば、そうだね。彼と喧嘩した事ある?

J:ああ、ジュリアンとなんかいつもだよ。オーストラリアに行った時も1対1で喧嘩したよ。あいつはクレイジーだよ。まあ、グッド・フレンズとは喧嘩するもんだよ。みんなそうでしょ。

●Anti Heroというチームは誰もが個性があって、一癖も二癖もあるスケーターが所属していて、またそこが魅力で熱狂的なファンが多いけど、ショーン・ヤングって今は名前を聞かないけど、今何やってるか知ってる?

J:うん、ギャンブルしてる。

●えっ、ギャンブルって?

J:プロフェッショナル・ギャンブラーだよ。リノとかレイク・タホ(ギャンブルで有名な街)に行ってギャンブルしてる。

●それで生活してるわけ?

J:やつはトランプで生きてる。超クレイジーだよ、ほんもののギャンブラーだ。

●ある意味、Anti Heroのタフなスケート・スタイルを代表するアンディー・ロイは今どうしてる?あのスキンヘッドの頭に蜘蛛のタトゥを入れてるスケーターだ。

J:彼は牢屋の中だよ。(*2007年7月に出所。2012年1月に僕はDLX Distributionで働いている彼に会った)

●なんでまた、牢屋なんて?

J:ドラッグだよ。Stupidだ。出たり入ったりしてる。ハードライフだね。

●う〜ん、こうやって聞くとAnti Heroってチームはやっぱり個性が強すぎるね。僕以外にもアンディ・ロイを大好きな友人がたくさんいるけど、ちょっと残念だな。

J:Anti Heroはこれからもっとヤバくなるよ。サンディエゴのアンドリュー・アレンっていう若手はうまいよ。これからデカくなるよ。たぶん新しいライダーも入れていくと思うし。ただ新しい人を入れていくのはすごく難しいんだよね。僕らと一緒にツアーが出来なくちゃいけないからさ(Anti Heroはスケートも私生活もぶっ飛んでいるから大変という意味か?)。だから僕らが本当にそいつを好きじゃなきゃいけないし、さらにスケートはメチャ上手くなければならない。だからタフだよ。つまり僕らは単にスケートが上手いからといってチームに入れるわけではないからさ。

●日本にVansツアーで来た時に超酔っぱらって(Vansが特設した平塚の)バーチカルからドロッップインをしたら、とんでもないスラムをしてたって友達に聞いた事があるんだけど覚えてるかな?

J:あっはっは、全く覚えてないな。でもあの海の近くのバーチカルは面白かった。たしか雨が降ってたかな?(雨なら滑って超危険!)波がすごくうねってたのを覚えてる。その場所とすごく飲んでたのだけは覚えてるけど、スラムは覚えてないな。それより日本の自販機はヤバいね。未成年だってお酒を買えるからね(今は買えません)。日本は大好きだよ。たくさんの良い思い出がある。たしかゴーカート場のとなりにあるインドアのボールでゴーカートの埃が全部ボールに流れ込んですごいスリップする場所(アスコットパーク)もあったな。

●こりゃダメだ!危険なことにしか興味がないね。去年ゲイブ・モーフォードに特別な写真を借りて僕の4SIGHT(スケート・チーム)とコラボTシャツを作ったけどあの時はありがとう!気に入ってくれた?あの写真はThrasher Magazine Photo Issueの表紙になった特別スゴい写真だった。

J:そりゃすごく気に入ってるよ。友達にあげたりしたからそれを着ているのを見かけるとクールだなって思ってたよ。CB、ありがとう。あれはク−ルだったよ。あの写真を撮ったリポン(スケート・パーク)は僕の大好きなスポットの1つだしね。ゲイブの写真が良かったし、空が大きく写ってて雲がクレイジーでさ。モノクロプリントで品も良かったね。

●ほんとに光栄です。で、(少し歩けるようになった)最近は何してるの?

J:トラックバイク(ピスト)とか自転車に乗ってるよ。あとは(サンフランシスコの)DLXに行ってデザインをしたりね。今度スピットファイヤーがベアリングを作る計画があったり、Anti Heroやスピットファイヤーのクロージング・ラインのデザインもやってる。それと僕がデザインした新しいスピットファイヤーのコア・ウィールは今までで一番速いよ。もうすぐ出るはずなんだけどヤバいよ。

●そうだ、レゲエのセレクターは?もうどれくらいやってるの?

J:毎週地元で廻しているよ。スキルを学びながら楽しんでる。怪我した1年後にターンテーブルを買ったから2年ぐらいかな。

●どうやってセレクターにハマったの?

J:もともと音楽が大好きで、CDと違ってレコードの方が実際に触れるし、そんな事してたらミキサーを買っちゃってミックスの仕方を覚えてって、、すごい楽しいよ。

●パンクとかは聞かなかったの?

J:もちろん、ちょっとスレイヤーとかブラック・フラッグを聞いた事もあったけど集めるってことはなかったね。レゲエは集めてる。CBに連絡して日本でも買ってもらって送ってくれたじゃない。

●では好きなレゲエ・アーティストは誰?

J:CBと一緒に見に行ったSizzlaだね。あとはベレス・ハモンド、ジャー・キュアー、それにサンチェスかな。

カーディエルはこのインタヴューの後、マット・ロドリゲスのバンドと共にレゲエ・セレクターとして来日し、帰国当日の忙しい中、突然、原宿のHeshdawgzに現れて、Sizzlaとカーディエルそして僕の3人の記念写真にサインして帰っていった。

●あの、、怪我について聞いても良い?

J:うん、なんでも聞いてよ。あれはオーストラリア・ツアーに行った時なんだけど道に迷ったんだ。2台の車で行動していて、僕とマット・ロドリゲス(プロ・スケーター)が乗っていた車が前の車に万が一はぐれた時の為にどうやって目的地へ行けば良いかを聞いてたんだ。最初は2人とも車の中にいたんだけど、僕は車から降りて前の車の横で友達と話しながら道を聞いていたんだけど、その車のドライバーが僕らが話しをしていたのに気付いていなくて突然走り出しちゃったんだ。それで僕が転んじゃったんだけど、その車は後ろにジェネレーターとかを積んでいるトレーラーを引っ張ってて、そのトレーラーに僕がひかれてしまったんだ。そういうわけさ、、、、、、、(沈黙)、、、、それからはスケートが出来てないんだ。スケートに乗る事は出来るけど、スケートスケートっていう事は出来てないよ。走れないんだ。だから走るスピード以上に速いスピードでスケートに乗れないんだよね、、、。

カーディエルはこの事故後、車椅子生活になり、数ヶ月後に足先が「ピクッ」と動き、持ち前の気力でリハビリを続けなんとか歩けるようになった。その時のカーディエルの言葉が「It’s On」だった。常に前向きな彼はこの言葉をTシャツにデザインしてスピットファイヤーから発売した。

●スケートにカムバック出来ると思う?

J:NO、、、たぶんNOだ。分からない。トライしているけどね。なぜか分からないけど走れないんだ。何かが元に戻らないんだ。二日に一回ジムに通ってるんだけど元に戻りそうもないんだ。おかしいんだ。スケートは出来るよ、でも以前の様にはいかないね。どうやってやるかは分かっているのに体が動いてくれない。

●体は痛むの?

J:いや、、、、頭が痛くなるね。フラストレーションが溜まるからかな。

●事故が起きてからメンタル的に変わったかい?

J:そりゃ、もちろんだ、「You just have to stay positive.」どんなに怒り狂ったって、それでは何も良い方向にはならないし、何も進展しない。だからポジティブでいなきゃいけないし、、、たぶんもっともっとポジティブにならないといけないかもな(笑)、だってそれはいいことだろう?たとえ何が起ころうとも人生はハードだし、生きている奴なら誰だってこの人生は常にハードだよ。僕は怪我をしているかもしれない。だが、そうじゃない人達だってもがいている何かはあるんだ、みんな一緒さ。so you got to be stay positive.

●じゃメッセージを最後に。

J:ママ、ダディー、ありがとう。それだけ。

このインタヴュー後もサクラメントの自宅や僕のHeshdawgzなどで何度か会っているが、いつ何処で会っても彼のフレンドリーで優しい態度に心が洗われる。ハイスピードでぶっ飛んでいる超人カーディエルは誰もが好きだ。だがこのインタビューの後は、スケートしていない“人間カーディエル”をもっと好きになった。