text & Photo by Shizuo Ishii
横山忠正の個展が前回に続き目黒美術館区民ギャラリーで開催予定だ。今回のテーマが『WILL』だという。前回よりもさらに作品の質量ともに増幅、油彩だけではなく新たな作品も制作中という多忙な時間におじゃまして、今回の作品に対する思いを聞いてみた。
Riddim(以下、R):前の展覧会はちょうど3年前でしたっけ。
横山:3年、そうですね。
R:今回のテーマが『WILL』だそうですが、どういうことですか?
横山:前回が『ダブルクロス』で“独裁者を許さない”というのがテーマだったけど、今のこの世界情勢を見ると、なぜ暴君の独裁者が世界中で生まれてくるのか不思議でならなくてね。
R:間違いなくどんどん悪くなっています。
横山:本当にひどいよ。なぜそういう人を支持するのか。また支持する一人一人の責任がどの国の人にもあると思うんです。
R:その通りですが、それは多分、今まで存在しなかったメディア、要するにSNSが大きいと思う。
横山:なるほどね。
R:例えば横山さん自身がやってるSNS、Instagramのフォロワーはあまり多くはない。だけど、世の中にはウソというか虚構のSNSであってもすごくたくさんのフォロワーがいるSNSがあって、それが刺さってしまう層もいるわけです。かたよってる層といってもいい。もちろん今までのメディアだってある意味では全く中立ではなく、ウソも虚構もありかたよっていました。新聞だってテレビだってもちろんです。だけどそれらよりも特にSNSには実態すら見えないさまざまなSNSがあり、X、Instagram、Facebook、さらには個人がやってるYouTubeなどがあって、その中にはAIで台本から動画まで作ったものまであり情報や意見として客観的に正しいものだけじゃない、実は間違ってるもの、悪意があるもの、つまりダークなビジネスとしてやってる業者もある。それらがサーチアルゴリズムによって勝手に流れてくる情報もあり、その人にとって耳障りのよい都合のよい、または便利な情報が流れてくる時代になっちゃったんですよ。
横山:ですよね。
R:本当は360度の平均した情報が入ってくればいい。だけど、そんなことはもう無い時代になっちゃった。興味のある情報ばかりに触れさせられ、視野が狭くなってしまう危険がある時代になった。
横山:ですよね。だから要するに判断ができなくなってきてるっていうことなんですかね。
R:判断させられちゃってるってことですかね。
横山:仕掛けられちゃう。
R:洗脳されちゃう。だから、文春が暴いた高市早苗サイドが進次郎や対抗馬の悪口だけじゃなく自画自賛を巨額の予算を使って毎日100本とかアップして、それをオレたちは客観的だと思いこまさせられてしまう。そんなことはないはずだと僕らは一回ろ過して、自分なりのフィルターを通してものを判断できるけど、そうじゃない人もたくさん存在するってことですよね。以前なら福島原発の危険性を「だってTVが安全だって言ってるよ」って公言して信じてた層だよね
横山:そうですね。
R:その状況をずっと知らないまま、その間違ってる情報だと知らないまま生きてるのが一番まずいんですよ。だってトランプ大統領でいえば、客観的に外国の僕らから見たらいじめられてる層さえもが支持して投票してるみたいなもんじゃないですか。お前たちが支持してるのはマイアミのマール・ア・ラーゴの大豪邸でテレビ・ゲームのようにスクリーンを見ながらベネズエラへの軍事作戦の指示を出して、「人が死んでるんだぞ、その方法は絶対違うだろうよ」って僕らは思うわけです。
横山:おかしい世の中だよね。高市政権になる前は、自民党が裏金問題で、自民党を改めさせなければもうどうしようもないと、国民みんなが分かってたんじゃないかと思う。だけど、次の高市になったらあれだけの支持率があるっていうかさ。
R:そう、だからその支持率も、本当にどうやって、どういう会社がどんな人間を使ってどう構成した質問を、どういう方法できちっと調査集計した結果かを発表してくれたら納得もするけど、「何とか新聞の調査で70パーセントありますよ」って言われただけでは、そんなの信じられない、今やこの時代には。
横山:なるほどね。一人一人のそういう判断は、そういうものに流されないで、しっかりしてよっていう願いがある。
R:そういう横山さんの思いが、今回の作品の中にあるんですね。
横山:そう。それが意思、『WILL』っていう今回のタイトルです。前回のテーマ「独裁者を許さない」だったから、もっと一人一人がしっかりしろ、こんな世の中になってるのは、オレたち、あなたたちのせいだよ、一人一人の責任があるんだよ、自覚してほしいという想い。ただ流されていくような状態で世の中が動いていては、結局どうしようもない。振り回されないで、一人一人の意思をとにかく自覚してほしい。今回の絵は、十字の所で光がクロスしてる作品が結構あるんです。
R:真ん中にクロスがあるってことですね。
横山:それは、周囲のノイジーな駄目な世界を形にしたんです。これだけ吹き荒れているモノをシンボリックな形に表現したんだけど、駄目だけど“かすかな光はあるよ”、“かすかな希望はあるよ”みたいなことの表現かな。ただずっと作ってきて最後のほうにそれが大きくなったということかな、言葉で言うとちょっとね。荒れる現代を僕なりに形にした「意思」が交ってかすかな希望みたいなものを持ってることが伝わればいいな。
R:そして今回はペインティングだけじゃなくて、CDも出すんですよね。横山さんは80年代前半にはThe SpoilというニューウエーヴJAZZバンドを率いてNYでライブしたりアルバムも出していました。
横山:そう、久しぶりに音楽も発表します。絵画だけでは伝わりにくいことを音にも託してみました。音楽と両方を作っています。このノイジーな世界をサウンドにしようって考えたんです。ノイジーな絵とノイジーな音で。日常生活の中で聞こえてくるいろいろなノイズを録音して、それをリズムの中に取り込んだらものすごくノイジーなトラックになったんです。それはとても現代的というか、今のこの世の中がノイジーなもので構成されているということをまず組み立てて、その上にアバンギャルドなサックスを乗せていくというやり方です。歩く音とか、ドアの音とか、とにかく気持ちいい音ではなくて、普段の生活の中で気にも留めない音を全部録音して、それをリズムの中に全部取り込みました。
R:とても面白いです。
横山:そういう組み立て方は、僕が今までやってた音楽の方法とは全く異なって、絵画を組み立てるような感じで一つのサウンドにしたのが、今回のCDですね。だから決して心地いいアンビエントみたいなものを目指したわけじゃないけど、出来上がった音を聞くと実はそれが現代を表現しているから心地良くなっていくという、そんなバランスかなって感じ。最初はいろいろ録音して、なかなかうまくいかなかったけど、出来上がってみたら現代のノイジーな音の世界で生きているんだということかな。
R:まさに現代ですね。
横山:そう。だから落ち着くような心地いいものなんて、何一つないんじゃないかみたいな、だけど普段生活している中での当たり前の音だから、別に気にも留めないけど、ノイジーな世界に我々は生きてるんだということを曲として、作品として作ってみました。
R:そのCD作品はかなり豪華なんですよね。CDだけじゃなくて作品も入っていて、すべて1点もので購入もできて、リミテッド盤とノーマル盤があってとても購入しやすい設定になってるんですよね。記念TシャツはRiddimがコラボして、すでに完売したんですが、会場でまた予約できるようにします。
横山:色々やってるけどずっと同じなんです。特攻花(前回インタヴュー参照)のこともそうだし、結局表現しようとしてるコンセプトはずっと同じなんです。音楽だったり、油彩画だったり、コラージュみたいなものへだったりと、どんどん変化はしてるけど、ただ表現が違うだけのことで常に変化していくというのが現代なんじゃないかなって気がする。常に変化して、ノイジーで、何が真実なのかも分からないような時代だから、一人一人の“意思”というものをもう一回、自分自身で確認してという願いかな。
横山忠正 『WILL』
入場無料
会場:目黒区美術館区民ギャラリー(東京都目黒区目黒2-4-36)
期間: 2026年6月23日(火)〜28日(日)
(6/23)14:00〜18:00 (6/28)10:00〜14:00
前回のRiddimインタヴュー
https://overheat.com/contents/yokoyama/
●横山忠正WEB: http://www.tadamasayokoyama.com


