Text by KOJI YAWATA Photo by SHIGETO MIYATA
2019年3月にRiddimOnlineに掲載された記事です。
いま世界中から最も注目を集めているレゲエ&ダンスホール・アーティストKOFFEEがメジャー進出、デビューEP『RAPTURE』をリリースした。デビューから2年も満たない中で世界進出を果たした期待の新星にスタートから現在、そして未来について語ってもらった。
●KOFFEE。本名MIKAYLA SIMPSON。2000年2月16日、ジャマイカ / スパニッシュ・タウン生まれ。
KOFFEE(以下、K):友達から『COFFEE』と呼ばれていました。それをスペルだけ変えてアーティスト名にしました。慣れている名前でしたし、コーヒーがジャマイカの特産物であることも少し思いました。
K:幼い頃からずっと教会に通っていて、そこで触れたゴスペルとかたくさんの音楽が自分の音楽の基礎になっていると思います。勿論、レゲエやダンスホールも好きでした。VYBZ KARTELとか、POPCAANとかも。中学三年生の時にCHRONIXXを聴き始めたことで、自分も何かに挑戦したいという気持ちが強くなりました。その時にこれから生きていく上で大切なものは音楽しかないと思いました。
●最初のきっかけはSNSだった。2017年にUSAIN BOLTをトリビュートした自作曲「Legend」を動画で投稿、それを見たUSAIN BOLT自身が拡散したことで広く知られることとなった。
それを機に通っていた学校の音楽教師の協力のもと、同年10月にデビュー曲「Burning」をリリースする。「Burning」は弱冠17歳の女子高生による躍動感に溢れたポジティヴなメッセージ・ソングとして話題を集め、合わせてプロモーション・ビデオが公開されるとその存在も世界へと伝わった。
K:その時点でWALSHY FIRE(MAJOR LAZER他)から連絡をもらっていました。COLUMBIA UK(メジャー・レーベル)もそのYouTubeを知って連絡をくれました。
●翌年、2018年の1月には〈FRANKIE MUSIC〉プロデュースによるセカンド・シングル「Raggamuffin」をリリース。ワン・ドロップに乗せたシング・ジェーとしてのスキルの高さ、そして女子高生の放つストレートなレゲエのスタイルに世界中のレゲエ・ファンは歓喜と驚愕、曲のスマッシュ・ヒットと共にKOFFEEは「レゲエの新生」「NEW SENSATION」としてブレイク、一躍シーンで最も注目される存在として世界から注目を集めることになった。
K:『Raggamuffin』がリリースされた同じ月にジャマイカで開催された『REBEL SALUTE』(野外フェス)で、COCOA TEAが私を同じステージに上げてくれたことで、ジャマイカだけではなく、その動画(ライブ・ストリーミング)が拡散され世界中の人に知られることになったと思います。COCOA TEAとはWALSHY FIREを通じて知り合っていました。COCOA TEAが私を紹介する機会を作ろうとしてくれて、自分のショーの時間を割いてステージに呼んでくれたことには感謝しています。
「Raggamuffin」OFFICIAL AUDIO: https://youtu.be/SVi0G_mnfmg
K:同じ時期にBBC 1XTRAのジャマイカ取材でCHRONIXXと共演させてもらったことも大きかったと思います。CHRONIXXは同じスパニッシュ・タウン出身ですけど、もともと知り合いとかではありませんでした。自分にとっては現在もですけど、憧れの存在でした。あの時は共通の知人を通じて知り合って共演させてもらうことになりました。その後もCHRONIXXのショーに出演させてもらったり、現在も色々な面でサポートしてもらっていますけど、『友達』と呼べるような間柄ではないです。一番インスピレーションを与えてもらっている存在だと思っています。
●2018年の夏前には正式にCOLUMBIA UKと契約。そして、そのメジャー第1弾シングル「Toast」を11月にリリース。WALSHY FIREプロデュースによるダンスホールの枠をはみ出たポジティヴなメッセージ・ソングは世界的にヒット、現在も拡散し続けている。
K:『Toast』を通じて自分の音楽をより幅広く、特定の地域とかジャンルを超えたより多くの人達に届けたいという思いがあったので、それを実感できていることはとても嬉しく思っていますし、感謝しています。
K:一番大きく変わったことはジャマイカを離れて色々な国や街に行くようになったことです。ショーやプロモーションを通じて色々な人達に出会ったり、今まで見たことがなかったものを見たり、知ったりするようになったことです。それは自分にとっては素晴らしい経験で、今後もジャマイカを拠点に行けるところにはできる限り行ってみたいと思っています。
K:どんなに自分を取り巻く状況や環境が変わっても、自分のルーツを見失わないようにしようと思っています。毎朝、聖書を読んで瞑想することは自分にとっては変わらず大切にしていることですし、ジャマイカ出身、スパニッシュ・タウン出身であること、そこでの生活の中で学んだこと、謙虚であること、親切であること、感謝することの大切さは忘れないでいたいと思っています。自分自身でいられるために助けてくれるものは自分の身近なところにたくさんあるとも思っていますので、そうしたことに敏感であり続けたいと思っています。
●「Toast」の人気が拡大する中、2019年1月には第2弾シングル「Throne」をリリース。「Toast」と同様にWALSHY FIREがプロデュースした楽曲は、「Toast」とは打って変わったヘヴィーなルーツ・ロック。そして「Throne=王座を目指す」と宣言した楽曲だった。
「Throne」OFFICIAL VIDEO: https://youtu.be/jnJOO2cxEEQ
「Toast」OFFICIAL VIDEO: https://youtu.be/QOtyJCUTzC8
K:『Toast』が拡がって行く中で、自分自身がポジティヴなレゲエのアーティストであることを伝えるために早くリリースしたいと思いました。あと、王座を獲得するにはそれだけ多くの責任が伴う、それを全うしないと獲得することはできないという意味で、それは自分自身に向けたものでもあります。そして、レゲエはこれまでずっと男性を中心にして作られてきたシーンですけど、それに不満があるというのではなくて、ただ、現在は性別が問われる時代ではなく、女性でも才能があるなら王座を獲得する可能性を持っていることも伝えたかったんです。
●2019年3月、KOFFEEは「Raggamuffin」「Toast」「Throne」の既発3曲に、タイトル・トラック「Rapture」、「Blazin」の新曲2曲を加えた全5曲が収録されたデビューEP『RAPTURE』をリリース。WALSHY FIRE、LASAANA HARRIS / TEFLON ZINCFENCE他、ジャンルと国籍を超えたプロデューサー達と制作した昨年のブレイクから現在のKOFFEEを凝縮した内容となっている。
K:デビューEPですし、自分の存在や才能をできるだけ多くの人達、世界中の人達に伝えるものにしたいと思いました。そうできるように挑戦した作品と言えると思います。その中で、自分と同じだったり、近い世代の人達には特に聴いてもらいたいと思っています。それはレゲエやダンスホールがもっと可能性がある音楽であること、自分達の若い世代がそれをもっと広げていける可能性があること、そして、その音楽を通じてもっとポジティヴで希望のある世界、そして未来を創っていける可能性があることを知ってもらいたいと思っているからです。
K:まだ始まったばかりですけど、自分がここからこの先何年も活動していけるようにしたいと思っています。自分の作った曲が何世代にもわたって、多くの人達にずっと聴かれ続けていけるようにしたいと思っています。自分の作る音楽が、ジャマイカと世界に、そしてレゲエにとってポジティヴな影響を与え続けていけるものにしたいと思っています。学校も卒業しましたし、自分の専属バンドも結成しましたから、ここからツアー、ショー、フェス、色々な国や場所に自分の音楽を届けに行きたいと思っています。
『RAPTURE』RELEASE INFO: https://247reggae.com/releases/rapture-ep/