MUSIC

鎮座DOPENESS & DOPING BAND

 
   

Text by 大石始 (Hajime Oishi)

2012年3月にRiddimOnlineに掲載された記事です。

そのスキルとオリジナリティーで他のラッパーを圧倒する鎮座DOPENESSが、近年ライヴを共にしているDOPING BANDとニュー・アルバム『だいぶ気持ちいいね』を完成させた。DOPING BANDのメンバーは、バンマス/パーカッションのIZPON(KINGDOM☆AFROCKS)を筆頭に、三根星太郎(ギター)、石黒祥司(ベース)、柿沼和成(ドラムス)という元・犬式の3人、女性ヴォーカリストのCHANMIKA、DJにDJ UPPERCUTという6人。イルリメやBUN BUN the MC、Leyona、SABO(KOCHITOLA HAGURETIC EMCEE'S)も参加したアルバムの内容について、鎮座DOPENESSとIZPONの2人に話を聞いた。

●このバンドが始まったのはいつからなんですか。

鎮座DOPENESS(以下、鎮):2010年にはスタートしてたっすね。スタッフと話してて、〈IZPONをバンマスにしてバンド組んでみたいねえ〉〈いいっすねえ〉ってことになって(笑)。勉強になりそうだったし、フェスにバンドで出てみたかったし。でも、いざバンドをやろうと思ってもどうやったらいいか分からなくて。そこでIZPON先生ならバッチリだろうと。

●IZPONさんが他のメンバーを集めたわけですが、元・犬式の3人に声をかけた理由はどこにあったんですか。

I

ZPON(以下、I):鎮くんも犬式の面々も西東京の人だし、フィーリングが合うだろうと。あとはバンドとしての変態性の高さ(笑)。どいつもこいつもド変態だから、そのへんもバッチリなんじゃないかと思ってね。

鎮:BUN BUN(the MC)さんのバックを犬式がやったライヴを観たことがあるんだけど、そのときはびっくりしたな。すごく自由だったし、犬式に持ってたイメージとはちょっと違ってた。彼らは根本的にものすごい音楽好きだし、フラット。みんな何でもできるから、リラックスして音を任せられる。

I:みんな上手いし、オリジナリティーもあるしね。

●DJをバックにパフォーマンスする場合とバンドで歌う場合とでは気持ちも違う?

鎮:そうっすね、〈できることが違う〉っていう感じ。あと、バンドの場合、いくら〈今日のライヴは良かったな〉と思ってても三根くんが〈イマイチだったな〉なんて言うこともあって。その逆もあるし、おもしろいっすよね。〈オレは自分のことしか考えずに音楽をやってきたんだな〉と思いましたよ。DOPING BANDは近所の友達が集まったわけじゃなくて、音楽で繋がった人たちだから修行にもなるし。

●そのあたりは(鎮座DOPENESSが参加する)KOCHITOLA HAGURETIC EMCEE'Sと違う?

鎮:全然違うっすね。KOCHITOLAの場合はお互いのことをよく知ってるから、みんながどういうところで満足するかっていうポイントも分かってるし、ライヴが終わったあとの感想もほとんど一緒だから。

●IZPONさんはどうですか、このバンドでのライヴは。

I:いやー、超楽しいっすよ。ライヴ中もゲラゲラ笑ってる(笑)。メンバー全員天然だから、どこを見てても飽きないっすよね。こういうバンドはなかなかないと思う。それに〈鎮座DOPENESS&DOPING BAND〉っていう名前だけど、別に鎮くんのリクエストを叶えるためだけにやってるわけじゃないから、みんながアイデアを出し合うんですよ。そういう意味でも単なるバックバンドじゃないし、いいバランスなんです。

●今回のアルバム『だいぶ気持ちいいね』についてなんですが、インタールードを挟む構成になってますよね。

I:〈ラジオ形式のアルバム〉っていうアイデアが最初に固まって、それから〈ラジオだったらお葉書コーナーもあるんじゃないか?〉とか〈架空のCMを入れよう〉とか想像が膨らんでいって。そういうインタールードの場合はオレらも〈50代のセッション・ミュージシャン〉っていう設定にして、ナレーションを付けやすいように自己主張の一切ない演奏をしました(笑)。

●そもそもラジオ形式っていうアイデアはどこから?

鎮:2010年ぐらいにこのバンドでライヴ・アルバムを出そうっていう話があったんですよ。でも、スタジオで録音したものもあったから、そういうものを全部まとめてラジオ形式にしようと。要は(三木道三の)『MIKI FM』みたいな感じにしたかったんですけど、なぜかサイケ電波放送みたいな感じになっちゃった(笑)。

●曲は(鎮座DOPENESSの前作)『100%RAP』のDOPING BANDヴァージョンがメインですよね。

鎮:そうっすね。さっき言ったようにライヴ・アルバムを作るつもりだったから、本当は全部『100%RAP』のライヴ・ヴァージョンになるはずだったんですよ。それがスタジオでリメイクする方向になった。

I:原曲をみんなで聴きながら、どういうアレンジにするか話し合っていったんです。〈『100%RAP』の曲をそのままバンドでやってみました〉っていうだけのアレンジだったら新しく出す意味もないから、いろいろイジっていって。

●CHANMIKAさんの存在も効いてますね。

I:彼女はRICKIE-Gのコーラスもやってるんだけど、すごい実力派。それでいて人間的にもすごく大らかで。

鎮:教育テレビのお姉さんみたいな安心感がある(笑)。

I:インタールードのナレーションも全部彼女がフリースタイルでやってくれました。

●DJ UPPERCUTさんは鎮くんとも普段からやってますね。

鎮:そうっすね。DJを入れたほうがいいんじゃない?ってことで(笑)。

I:ヒップホップっぽく聴こえるんじゃないか?と思ってね(笑)。

鎮:バンドだけだとワールドミュージックのオルタナみたいになっちゃいそうだったから(笑)、スクラッチもあったほうがいいんじゃないかと。

I:お祭り感も出るし。

鎮:そうそう、このバンドで町内の祭りに出たいんすよ。夏祭りに呼んでほしいんですよね。

●櫓(やぐら)が組んである感じの。

鎮:うん、そういうところでやりたいっすね。どこかに小粋な市長とかいないっすかね?(笑)。

●小粋な市長(笑)。

鎮:でも、そこからっていう気がするんですよ。フェスに来るのはみんな音楽好きのお客さんじゃないですか。でも、このバンドではもっと音楽オンリーじゃない場所でもライヴをやりたい。おじいちゃん・おばあちゃんもくるようなところで。

●そもそも客層を限定しない曲を歌いたいっていう意識がある?

鎮:1年に1曲はそういうものもやりたいとは思ってますけどね。老若男女に伝わる歌というか。このバンドでは温泉街の宴会場みたいな場所でもやってみたいし、いろんなところでライヴをしたいと思ってるから、DOPING BANDのツールのひとつとして、そういう老若男女に伝わる歌があったほうがいいとは思ってるかな。

●なるほど。

鎮:最近、音楽が悪者にされる機会が多いじゃないですか、頭ごなしに。だから、音楽の気持ち良さを伝えたいんすよ。最近そういうことをよく考えるっすね。自分の好きなものを好きって言ったっていいわけだし、〈オレらは音楽でこう楽しんでるんだよ〉っていうところが伝われば……。

●アルバムを聞いてると、みんなだいぶ気持ちよさそうにやってますよね(笑)。

鎮:(笑)タイトルが決まるのも早かったっすよ。

●〈気持ちいいからこっちにおいでよ〉っていうノリなんですね、このバンドは。

鎮:そうそう。〈みんな参加して~!〉っていう感じっすね。