EC:お疲れさま、「レゲエ祭」。振り返ってそういう話ってするの?
Simon:するかな…。でもこの時期ぐらいにちゃんと話すってのはあんまりないかな。
EC:どうなの? ぶっちゃけ15年てのは。さっき昔の『Riddim』(99年4月号)の記事を見てたらSimonが「いつかは武道館で」って言ってたよ。既に武道館を越えちゃったね。
Simon:その時は多分、ノリで。やっぱ「武道館=1万人」っていうのが一番デカいっていう気持ちだったと思うんで、いつかやりたいなっていう…。
EC:武道館の3倍行っちゃったんだから(笑)。
Simon:気づいたら(笑)。でも本当やれて良かったなって。でも、15年間やってきて、(サウンドを)辞めようと思った時期もあったんで…。
EC:えっ? それはどんな時?
Simon:いや、もう海外出て、確か99年に「World Clash」で優勝して、優勝したのはいいけど、そこから海外の人達の風当りが凄く強くて。色んな政治が働いてたっていうか、オレらの描いてたレゲエのシーンとは違うっていうか。つまり、きれいな部分も勿論だけど汚い部分も全部見えちゃった。360度本場のレゲエのスタイルが見えちゃって、ちょっとイヤになっちゃった時期があって。こういう事やってるのに何でこんなに落とされなきゃいけないんだって。まず肌の色がオレらだけ違うしね。Sami(-T)とも「どうしよっか?」って。オレらの思ってた世界と違うし、汚いっていうかリアルな部分を見過ぎちゃって、「どうなんだろう?」って時期も一回だけあってね。
EC:そうだよね、基本的にはジャマイカ・ローカルのものだからね。
Simon:島国根性というか(笑)、何でこんなジャパニーズ、東洋人に、ってのがあると思う。
EC:そう言えば、ジャマイカにいた時にテレビでMighty Crownが出てるのを偶然見たよ。不思議なもんだね、テレビつけたらたまたま。Simonがまた渋い顔してるんだ(笑)。クラッシュでもやったのかな? 結構カルチャー・ショックだったよ。だってジャマイカ人の国で、ジャマイカの音楽がかかる番組見てて、そしたらいきなり東洋人が出てくるんだ(笑)。まあ凄いよ、Mighty Crownのやってきた事は。
Simon:そう言ってもらえるとやった甲斐があるなあ。でも、早いような遅いような15年っていうか、「もうこんな経っちゃったの?」っていう。でも、15年っていっても結局それは人が評価してくれる事であってね。勿論、自分達は自分達なりの評価はするんだけど、本当は、評価ってオレら以外の、石井さんだったり、オーバーヒートだったり、サウンドマンだったり、アーティストだったり、全然違う人達だったりが評価してくれて初めて成り立つと思ってるし。
* * *
EC:5年前?…テクニクスのターンテーブルの30周年のイヴェントに出てもらったよね(「SL-1200 Night」のこと。02年11月17日、川崎Club Citta'にて開催)。
Simon:ありましたね、チッタで。
EC:それで、レゲエ代表でMighty Crownに出てもらって。
Simon:出演者が皆、ヒップホップでしたからね(その他出演はDilated Peoples、Beat Junkies、DJ Krush、DJ Muro、DJ Yutaka、DJ Nozawa、GM -Yoshi、DJ Shark。司会がRyu)。あの時、それまで会った事のなかった(DJ)YutakaさんともDJ Krushさんとも話せて良かった。あと海外だとDilated Peoplesもいて、それから…。
EC:Beat Junkiesだ。あいつら2階の楽屋からヴィデオ持って降りてきて、Mighty Crownをステージ袖から撮ってたんだよ。で、Beat Junkiesの奴らももう一度ちゃんとMighty Crownを見たいってなったみたいよ。
Simon:嬉しいっすね。あの後、サンフランシスコに行った時に電話かかってきて遊びにきてくれて、繋がったかなっていう。オレらも刺激になったっつうか、奴らのプレイ見ると凄いなみたいな。やっぱオレらの持ってないものを持ってるし、オレらも多分、彼らの持ってないものを持ってるし。そこでターンテーブルで通じ合えた。
EC:普段はあんまりラジオを聴かないんだけど、Beat Junkiesと言えば、つい最近、偶然J-Waveのスイッチいれたら「(Beat Junkiesの)RhettmaticがLAからライヴを…」とか「Beat Junkiesがどうのこうの…」って言ってんだよ。でも、ありえない偶然って実はいっぱいあるよね、あるでしょ?
Simon:凄くいっぱいある。最近はもう「偶然じゃないな?」みたいに。つまりあんまり偶然はないっていう考えになってきてる。
EC:必然なんだよね。
Simon:そう、絶対なんかの理由で起こってるって思い始めてきた。
EC:絶対そうだよね。今回オレも映画(『Ruffn' Tuff』)作ったけどね、本当にさ、偶然だけとは言えない事がいっぱいあるね、それが天気だったり、たまたま皆がいたりね。でも、その偶然を、まあSimonもそうだと思うんだけど、ジャッジする力があるんだよね。
Simon:どうなんだろう? 感覚っていうか、オレらは全てがこれやったら面白いんじゃないかとか、喜ぶんじゃないかとか、楽しむんじゃないかっていうその感覚だけでやってきた15年だし。最初は自分達しか見えてないけど、段々お金を取れるようになってから「オレら対他人/他人対オレら」っていうスタンスが生まれてきた。だけど余裕過ぎても絶対喰われちゃうんで、世界行ったら常にチャレンジャー的なスタンスでいないとヤバイし、足元見られるし。海外は、レゲエ音楽自体がそうなんだけど、常にハングリー精神がないと上には行けいし、保てない。
* * *
Simon:そうそう、『Ruffn' Tuff』のパート2、石井さん、やろうよ(笑)。
EC:よく言うよ(笑)。
Simon:大変だった?
EC:いや、大変じゃなかったよ、やったその事については。素直にただ撮っただけだよ。でも、1日に3つアポ入れるのって無謀だったけど、でも、できたんだよね。
Simon:オレもそれは相当無謀だと思う(笑)。
EC:しかもその途中にミュージシャン集めて2曲くらいレコーディングもした。今考えたらメチャメチャなんだけどさ。
Simon:3つアポ取ったら1つはズレちゃうかな?
EC:「あれを10日で撮ったらOKだよ」って言ってくれると思うんだよ、ジャマイカを知ってる人にはね。乱暴なものなんだけど、理解してもらえると思う。本当に殆どアポなしっていうか、実際、アポ取っても、前の夜だし。しかもスタジオすら取ってなかった(笑)。もう行っちゃって、そのまんま撮れても撮れなくてもその状態のドキュメントにしようと思ってたの。そういう事は誰にも言わずにスタッフを連れてった(笑)。
Simon:かなり強引な(笑)。でも、ジャマイカならその方がいいものができたりするかも。予定立てても予定通り100%行くってのは絶対にない!(笑)
EC:そうでしょ? ダブ録るっていっても、アーティストがスタジオにいたから録るって感じじゃない。もちろん誰かを録りたいなっていうのはあって行くんだけどさ。
Simon:確かに、確かに。で、いない場合も結構あるんだよ。その代わりにこいつがいるみたいな(笑)。
EC:そうそう、だからそういう国でしょ?
Simon:間違いない(笑)。かなりそういう国。
EC:だから、あんまり決めてってガックリするよりは、決めないで楽しむっていうかね。
Simon:でも、こういう映画って今の聴き始めた子達にとっては絶対重要。エデュケーションを込めて誰かやってくれればって前から思ってたし。
EC:試写会にレゲエを全然聴かないパンクが大好きな友達が来てくれたんだよ。当然、全く登場人物とか分からないんだよね。でも、彼が翌日にメールをくれて、「サントラを3回聴いた」って言うんだよね。ホント嬉しかったよね。
Simon:結果が出たっていうか…。
EC:うん、まあ、たぶん一人だけどさ(笑)。
Simon:今、レゲエ界ってパンクあがりが多いっすね。オレもPapa-Bもアキ・ソル(Ackee & Saltfish)もそうだし、Home GrownのTancoもそうだし。だから結構音繋がりで「オォォー!」っていうのが絶対にある。
EC:そういう意味じゃレゲエってさ、感覚に訴えるんだよね。
Simon:そういうとこがある。あんまり計算されてないっていう…。そのラフさが良いのかな? 例えばジャマイカも今は機材もどんどんデジタル化してきて、特にプロツールスが入った事によってアナログでやってた人もデジタルになってきている。でもデジタルなんだけど、使い方がやっぱラフっていうか、そういう人が多い。
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