
Text by Naohiro Moro
後から聞いた話である。
その日その会場は、1500人以上の観客を呑み込んで、尚、5階まで通じる階段の全てのステップに人を並ばせていたという。
またある日のある会場は、通常のキャパシティの3倍以上を詰め込み、ある会場では、主催者に同会場での来年以降の同イヴェントの続行は不可能と思わせ、ある会場では夜10時開場の現場に午後3時から行列が出来ていたという。
「ソウル・レベル2001」に至っては、前売券発売開始1時間でソールド・アウトになったのだそうだ。
もちろん、今年の夏に全国各地で開催されたジャパニーズ・レゲエのイヴェントの話である。いずれの会場でも、キャパをオーバー、熱気ムンムン、観客は汗で全身ビショヌレ、それでも声援を送り続け、最前列のファンは、ドリンクの追加も、トイレにも行かず、つまりは一歩も動かず、最初から最後まで見届けてくれるのである。誰がエライって客が一番エライ。
今更大騒ぎする必要もなく、今年、ジャパニーズ・レゲエは大爆発した。このムーヴメントを支援してきた者にとっては、時間がかかった様な、早かった様なという感じだろう。去年までと何が違うって各メディアの扱いが違う。音専誌は当然、各ストリート系ファッション誌での特集。FMでのオンエアの増加。衛星系音楽チャンネルはもちろん、地上波のテレビでの露出の多さ。
まぁ、流行り廃りにアンテナを向けるのがマス・メディアなのだから、以前の扱いと現在が違って当然なのだが、この状況を慌てず騒がず、最善の選択をしながら、更に浸透させていきたいものだ。何がイヤってブーム扱いされるの程イヤなことはない。大切なことは今までと同じ。「良質な作品」と「いいライヴ」。これだけだ。
多くのジャンルに対して、レゲエは、その革新性を以て影響を与え続けてきた。ラップの発生を促し、ダブによってリミックスという発想を産み出し、ラスタの精神は多くのミュージシャンの音楽的良心の拠り所となり、ビート構築、音の定位においては、ドラムン・ベース、2・ステップ辺りにまで、その影響は顕著だ。しかし、影響を受けたものが洗練を帯びていくのに比べ、レゲエ自体はプリミティヴなまま、という側面も否めない。
それ故、レゲエそのものが、そのままに形で本格的に根を張るというケースは各国を見渡してもあまり見受けられないのだが、そう考えると、現在のジャパニーズ・レゲエ・ムーヴメントは異例だ。スゴイと思うのである。だって米国の音楽じゃないんだから、これは。ジャパニーズ・レゲエの、朴訥なまでの素直さ、ストレートな熱さ、気取らなさ、笑える部分、などが、迷走するこの時代に、刹那的に生きる若い世代にとって、共感できるメンタリティとして受け入れられた、ということなのだろうか。何よりもレゲエは「明るい」と言うことが出来るだろう。
で、「ソウル・レベル2001」なのだった。全国各地で開催されたジャパニーズ・レゲエのイヴェントを総括するかの如く、今年も日比谷野音が燃え上がる。出演は、ムーミン、プシンを筆頭に、待望のCDリリース直後のステージとなるジャンボ・マーチ、タカフィン、ボクサー・キッド。リョウ・ザ・スカイウォーカー、H・マン、パパ・B、コーン・ヘッド、ルードボーイ・フェイス、ファット・D、マジマン、ハンクン、キー・ロック。そして彼、三木道三。
MCは″パワー親父″ランキン・タクシーとDJバナ。バックを務めるのは当然、″ザ・ハーデスト・ワーキン・バンド″ホーム・グロウン。サウンド・バイ、タクシー・ハイファイ、サンセット、マイティ・ジャム・ロック。現在のシーンの、全てではないが、かっなりの精鋭がガチっと一堂に介する、ジャパニーズ・レゲエ最高峰のライヴ・コンサートである。
NO.2ヘ続く
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