
Photo by Sho Kikuchi
-NO.2-
この「ソウル・レベル」が開催される様になって今年で2年目。昨年のライヴはCD化、2月にリリースされ、思えばそれが今年の最初の爆弾となった。「ジャパニーズ・レゲエのライヴは面白い」。CDを購入し、それを認識する機会を得たリスナーが会場に足を運ぶという図式が、現在のシーン拡張に寄与していた部分は少なくないはずだ。ならばこの先、このイヴェントが継続して開催されていくものなのか、どの様に発展していくのか、いくべきなのか、その重要性について考えてみた。
まずひとつに、ジャパニーズ・レゲエのライヴの規範として、最高水準を提供する存在の必要性、ということが考えられる。
承知の通り、現在、夏の大規模レゲエ・イヴェントは、横浜、札幌、豊橋、大阪、などで開催されている。今年はこれに沖縄が加わり、盛上りに拍車をかけた訳だが、こうしたジャマイカにおける「スティング」形式のライヴが実現する様になった背景には、ホーム・グロウン・バンド、そして彼等のライヴ・エンジニアリングを担当している野沢氏の存在無くして語ることは不可能である。その論拠としては、98年辺りからのホーム・グロウンの台頭と、シーンの盛上りが、比例する様に符合している点が挙げられる。彼等の演奏力、それをサポートするライヴ・エンジニアリングがあってこそ、各地のイヴェントのクォリティはキープされていると言っても過言ではないだろう。
乱暴な言い方をすれば、質のいいショウを提供してくれる存在があって、簡単にいいイヴェントが開催できる様になった。それが「ジャパニーズ・レゲエのライヴは面白い」という、いいイメージを広範囲に知らしめたのだが、各地で会場のキャパを遥かに越えてしまうことの多かった今年の動員は、主催者側の予測を越えてしまうほど急激にシーンが盛り上がったという部分があったものの、ある意味、現在のシーンのイヴェント制作の成熟度の問題点を露呈してしまった部分も否めない。
そうした問題のあった部分を補正し、事前事後のパブリッシング等も含めて、完璧にオーガナイスされたジャパニーズ・レゲエ最高峰のライヴ・コンサートが存在することは、やっぱり重要だろう。ソウル・レベルはそうした存在に成り得るし、実際、昨年はそうした役割を既に果たしているとも思う。
また、今後の重要な役割として、シーンを啓発し、新しいスタイルや可能性を提示をしていく存在の必要性、ということも考えられるだろう。
今年も各地で熱く盛り上がったレゲエ・フェスだが、出演者の顔触れが、どうしても似てきてしまうという側面もある。唯一、沖縄のみが、ドライ&ヘビーや、キーコ、ケツメイシなども出演させ、現在、自分のバンドで活動をしているため、主催者サイドにバンド・チェンジ出来る態勢がなければこうしたイヴェントに出演しにくくなっているアキ&ソルトフィッシュまでもが、そのラインナップに加わった。
盛り沢山の内容で、5〜6時間ブッ通しのイヴェントも非常に面白いし、その熱さは最大の魅力なのだが、各々の持ち時間が10分、15分しかないショウで、アーティストの本質は理解し得るのものなのだろうか。そうしたスタイルのみが受け入れられた場合、そこからのアーティストの成長もあるのだろうか。今が悪いとは全然思わない。ただ、本来、シーンはこうした「スティング」形式のショウケイス・ライヴによって間口を広げ、より豊かな音楽性を持ったピンで活動できるアーティストを輩出し、各々の単独ライヴの需要を高めていくべきなのだろうと思う。
既に単独で世界を表現できるアーティストが出演しにくいというのであれば、それは本末転倒だ。また同じレゲエの中にもいろいろなスタイルがあるということも置き去りにしていきたくない事実だ。現に福岡で毎年行われている「サンセット・ライヴ」は、レゲエを含むミクスチャー・イヴェントなのだが、ダンスホール以外のレゲエ・ミュージシャンに素晴らしい現場を提供していると聞く。単純にダンスホール・レゲエだけではミュージシャンの数が足らない。
しかし、実はレゲエ界には優れたミュージシャンが既に多くいることも知られていない。もちろん、今は過渡期なのだが、影響力の強いイヴェントが、そういった在り方を提示していくことによって、イノヴェーションも可能になっていくのではないだろうか。
最後に、イヴェントは観客が育てていくものなのではないだろうか、ということ。
最初の方にも書いた通り、ジャパニーズ・レゲエのイヴェントも、アーティストも、良質な観客によって支えられてきたのだ。汗をたっぷりかいて満足したがっている観客に応えるために、アーティストも力を尽くす。今年もより多くの人が「ソウル・レベル」を楽しんでいって欲しい。今年のこのひと夏を経過したジャパニーズ・レゲエ・オールスターズの姿を見届けて欲しい。そして、その楽しさを多くの人に伝えていって欲しい。
「ソウル・レベル」がジャパニーズ・レゲエ最高峰のライヴ・コンサートであり続けられる様に、見つめていって頂きたい。そんなザワザワとした胸騒ぎを抱きながら、10月14日に日比谷野音で会いましょう。
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