(U KNOW)What the deal is
さて、アメリカ議会選挙で共和党が圧勝したのだが、それに反してオバマの支持率が上がっている。しかしながら、オバマがやってきた事をこれから共和党が覆そうとしているのは火を見るより明らかで、多くのメディアは、保険会社がパワーを奪還したとも書いている。貧富の差が広がり、多くの国民が保険すら払えないこの国で、労働力を確保出来ないなら、海外に頼り、病気をしたら医者にかからず、死ねという事なんでしょうか? 健康も贅沢品になってしまった?
●今月のアニヴァーサリー
ズールー・ネイションによる毎年恒例のアニヴァーサリーが今年も地元ブロンクスで行われた。今年はパリ、フランクフルトでも同時に開催されたこのイヴェントだが、聖地NYではガウチョズ・ジムというバスケットボールのコートで行われた。その最初のライヴに、チャブロック、PMD、ジャスト・アイス、ブラック・ロブ、ソウル・フラワー、Aプライム、ラス・コフィ、そしてなんと、ジミー・スパイサーが老体に鞭を打って登場。会場に驚きと感動を与えた。彼を知らない若い読者には、多分、パフ・ダディやメイノがサンプルした「Money」が馴染みがあるのかもしれないが、ジミー・スパイサーは、最初にメイジャー・レーベルとサインしたラッパーの一人で、Enjoyやデフ・ジャムも渡り歩いた強者である。しかしながら80年代後半からその姿を消し、死亡説もあった。リスペクト。そして最終日の11/14のライヴは会場をダウンタウンはS.O.Bに移し、Xクラン、アイシス、YZ!(彼を憶えているかい?)、パラダイス、ラッカ、ロクサーヌ・シャンテ、ラージプロ、グランド・プーバ、サダトX、PMDが登場、飛び入りでクラッシュ・クルーも?
●今月のフィルム・フェスト
ロックステディのジョージ・フェイブルは近年、フィルムにも参入していて、このコラムでもしばしば彼の作品を紹介して来た。その彼の作品のみを上映するというフェスティヴァルが本人企画によってNYはブロンクスで11/6に行われた。長編の『アパッチライン』はジョニー・ロドリゲスとの共同監督で、ヒップホップ以前にNYを驚愕させ、映画『ウォーリアーズ』のインスピレーションにもなった60年代のストリート・ギャング達の証言によって構成されているドキュメンタリーで、本編を中心に、短編の『ラスト・Bボーイ・イン・NY』、『ヴィシン・スプリー』が同時上映された。なぜかBボーイ・バトルがおまけにあり、私は苦笑しまったのだが?
●今月の新刊
『How To Wreck A Nice Beach』というヴォコーダーの歴史をまじめに追い、それがどうヒップホップに結びついていったかという興味深い本が出版された。この本の著者はデイヴ・トンプキンスなるヴォコーダーの研究者である。1928年に開発され、軍部の電話の盗聴防止、傍受に使用されていたというこの機材だが、やはり我々には、ザップのロジャーやクラフトワークなどが使用していたロボットの声が馴染み深い。現在では、オートチューンなるエフェクターに名を変え、ポップスやヒップホップで乱用され、ラッパー、ジェイZに死刑宣告される程、浸透している?
●今月の写真展
ライル・オワーコなる写真家の「ブームボックス・プロジェクト」なる展覧会がダウンタウン、マンハッタンのクリック・ギャラリーで行われている。東京でビクターのラジカセを買ったのをきっかけに始まったというこのプロジェクトでは、彼自身が所有するラジカセと、多くのBボーイが所有するラジカセの写真が展示されている。同時に同名の本もリリースされ、アドロック、スパイク・リー、ファブ5フレディなどのコメントも掲載されている。このカルチャーには欠かせない存在だったあまりポータブルではない巨大なラジカセが、現代では電話に変わってしまったというのは、なんとも寂しい事ですな?
沼田 充司
DJ/プロデューサー。レーベル、ブダフェスト主宰。07年『Moca Only vs Numata』をリリース。ニューヨーク在住。(Photo by Tiger)