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333    COLUMN    UK REPORT

Photo & Text by SIMON "MAVERICK" BUCKLAND
 

Gregory Isaacs & Dennis Brown
 
 Greetings friends,
●今月、最もショックだったことは、レゲエの伝説的アーティストGregory Isaacsの訃報だ。10月25日、彼は肺がんとの闘病の末に59歳で死去した。かつてのヒーローがまたいなくなってしまった。
 Isaacsは1960年代後半にレコーディング・キャリアをスタートした。ソロでリリースした「Another Heartache」の他、Rupie EdwardsプロデュースによるThe Concordsというグループの一員として数曲をリリースしている。今ではこれらのレコードがコレクターズ・アイテムとなり、馬鹿らしいほど高価な値段で取引されている。彼がレコーディング・アーティストとして成功を収めるようになったのは70年代初め頃だが、Rupie Edwardsの下でカットしたレコードのセールスが芳しくなかったので、Gregoryは友人のErrol Dunkleyと共にAfrican Museumレーベルと同名のレコード・ショップ(KingstonのCharles Streetに開店)を立ち上げ、その運営に心血を注いだ。当時、ジャマイカのシンガーが自分をこれほどコントロールする事は非常に珍しかった。Gregoryは自身のプロジェクトと並行してPete Weston、Augustus 'Gussie' Clarke、Phil Prattといったプロデューサーの下で質の良い曲を次々とリリースする。Prattがプロデュースした「All I Have Is Love」のブレイクにより、ジャマイカで彼の曲が次々とヒットしていく。そして、GGsレーベルのAlvin Ranglinがプロデュースした「Love Is Overdue」がそれまで彼の最大のヒットとなる。この曲こそ、ジャマイカの、そして国を跨いだレゲエ・ファンの間でGregoryをスターダムに押し上げる起爆剤になった。そしてNiney The ObserverやSidney 'Pioneer' Crooksプロデュース曲のヒットへと繋がっていく。
 77年発表のアルバム『Extra Classic』は、ラヴァーズとリアリティ・ミュージックをコンパイルした名作だ。Gregoryはこの作品によりアーティストとしての地位を確立する事になる。78年には、ストレートかつデリケートなテナー・ヴォイスで綴ったメッセージ・ソング主体のセルフ・プロデュース作『Mr. Isaacs』をリリースしその地位を確固たるものとした。
 Virgin Recordsはパンク・ミュージック好きな人々にレゲエが浸透しつつある事を知り(パンクは反人種差別運動と密接な関係にあった)、新しいレゲエ・リスナーをターゲットにすべく、新レーベルFront Lineを設立した。勿論この背景には、Islandと契約したMarleyがあっという間にスーパースターになってしまった事に触発されている。GregoryはFront Lineと契約し、『The Cool Ruler』『Soon Forward』というベストセラー・アルバム2作をリリースした。レゲエ・ブームに乗り遅れてしまった感のあるUKのCharismaレーベルは、Virginとの契約が切れたGregoryと組んで『Lonely Lover』『More Gregory』という2枚のアルバムを発売。この頃、彼は7インチや12インチで数々の名曲をリリースし、エスニック好きやハードコアなファンを満足させていた。また、82年にはTaxiのSly & Robbieプロデュースで傑作『Night Nurse』をIslandより発売している。Gregoryは、銃に関連した罪でジャマイカの悪名高きGeneral刑務所に短期間収監された。だが、この事で彼の名声に傷がつく事はなかった。釈放直後にレコーディングし、83年にリリースされた『Out Deh』(Island)により、彼は勝利を収めたヒーローのようにカム・バックを果たしたのだ。当時の彼は向かうところ敵なし、といった勢いだった。
 Gussie Clarkeプロデュースの『Private Beach Party』(85年)辺りからGregoryの美しく感情豊かな声が鼻声に変わってしまった。マスコミではあまり報道されなかったが、彼がドラッグ中毒ではないかという噂が音楽業界では流れていた。残念な事にドラッグ関連の逮捕が相次ぎ、その噂が本当だった事が証明されてしまう。そんな状況下でもGregoryは時々名曲をリリースしてはファンを喜ばせていたのだ。
 ダークな『One Man Against The World』の様に彼の内面的な心の葛藤を題材にした作品には優れたものが多い。Gussieは、Gregoryが新しくできた歌詞を他のプロデューサーのために歌ってしまう事を防ぐために、Gregoryがスタジオに入るまで新曲のリリックを教えなかったといった事もあったらしい。Gussieによる「Rumours(噂)」では、自身にまつわる悪い噂をテーマにして曲を作ってしまっている。Gussieプロデュースによるアルバムの質はどれも高く、バンド・サウンドへの原点復帰ともいえる『Private Lesson』(Acid Jazz)やデジタル・サウンドを駆使したRoy Francisによる『At Mixing Lab』等が制作された。
 活動後期にリリースした作品の質にはムラがあり、個人的な問題を絶えず抱えていたものの、Gregoryのファンはずっと誠意をもって彼を見守ってきた。彼のライヴの良さには定評がありいつも盛況だった。しかし、ここ10年ほど彼はライヴから遠ざかっていた。彼はドラッグから足を洗い、Londonで妻のリンダと子供達に囲まれながら比較的平和に暮らしていたようだ。
 
11月10日に西LondonのHarrow WealdにあるAll Saints教会で大規模な葬儀が行われ、多数のミュージシャン、友人、ファンが参列した。遺体はジャマイカへと運ばれ、11月20日にはKingstonで盛大な葬儀が行われたはずだ。独自のユーモアのセンスを持ち、親友に忠誠だったGregoryはレゲエ・レジェンドとして永遠に忘れられる事はないだろう。なぜなら彼のような人物はどこにも存在しないからだ。Joseph Hillがかつて彼の事を「One A Way」と言ったように、ドラッグ問題や謎に包まれた性格等でさえも、彼の伝説を更に強固なものにしている。レゲエを素晴しい音楽に育て上げたアーティストの一人を失う事はいつも悲しい。
 

Dixie Peach
●フランスのレゲエ・シーンで活躍しているアーティストを紹介する"義務"のようなものを今月は感じている。なぜなら、彼らは国外でも人気上昇中だからだ。ユニット名はStand High。Pupa Jim、Rootystep、McGyverという3人の熱心な若者により構成されたサウンドシステム/デジタル・ダブ・チームだ。結成当初は自分達のためだけに音楽を創っていたような彼らだったが、過去3年間でファンを確実に増やしてきた。30歳以下の若いオーディエンスが好きな曲を揃え(ステッパーズ・スタイルと80年代の打ち込み系レゲエ)、ネットや口コミ効果により、ノルウェーやメキシコといった遠方の国でのライヴを実現させている。
  Stand Highは最近、ようやく初アルバムをリリースした。ダブ&ヴォーカルのPupa Jimは、80年代中期〜後期に人気だったハイトーンDJの声(どのように彼がこの声を手に入れたのか分からないが!)の長所のみを合成したような素晴らしい声の持ち主だ。また彼は既に独自のスタイルとカリスマさえ身につけている。Stand Highはフランスで最も西に位置する港町のBrestで、2ヶ月に1度開催されるDub-A-Dub Residenceにレギュラー出演している。このイヴェントでは彼らの他に懐かしのUnityとJah Tubbyアーティストも出演し、イヴェントをより内容の濃いものにしている。Errol Bellot、Kenny Knots、そして最近観たショーではDixie Peach(彼を観るのは20年ぶり!)がStand Highと共にいい歌声を響かせていた。僕の言葉を信じて欲しい。遅かれ早かれ、彼らの名前を聞くことになると思う。実はPupa Jimが、近い将来日本に行く可能性がある、と言っているのだ。是非、MySpaceでStand Highのことをチェックしてみて欲しい。
 
Till Next Time, Take Care.......... 
 
(訳/Masaaki Otsuka)

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