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BOOM BAP
WAKA FLOCKA FLAMEOUT
 
 Atlantaのダウンタウンにある豪華なOpera Night Clubでは第2回Soul Train Awardsのプレ・パーティが開かれていた。美しい肌を露出したセクシーな女性たちが氷を詰めた容器に高価なシャンパンを入れ、男たちの間をまわっている。Erykah Badu、Rick Ross、Slick Rick、Doug E. Freshら多数のスターも顔を揃えている。しかし、この街でいま一番有名なのは、Waka Flocka Flameだろう。このGucci Maneの愛弟子は、かつての問題児からミックステープのチャンピオン、そして実力派アーティストへと成長を遂げた。19歳のLex Lugerがプロデュースした「O Let's Do It」と「Hard In Da Paint」はクラブでよくかかるし、ストリートでも人気だ。最新シングル曲「No Hands」はBillboardのラップ・チャートで20位以内に入り、今秋にリリースされたばかりの初めてのソロ・アルバム『Flockaveli』は、同チャート初登場で6位にランク・インしている。
 
そんな彼だが、必ずしも順風満帆だった訳ではない。彼の潔いほどシンプルな音楽とリリカルなラッパーを否定するスタイルのため、多くのヒップホップ・ファンの理解を得られていないというのも事実だ。このある意味武士的ともいえるストイックなスタンスは、彼の実母がGucciとNicki Minajを育てたMizay Entertainmentの敏腕マネージャー、Deb Antneyであることを考えると驚きだ。WakaはHollis Queensでヒップホップの大物たちに日々接しながら育った。Juaquin Malphurs(Wakaの本名)は5歳までの毎年の誕生日をRun-DMCのDMCと共に祝っていたそうだ。「オレの母親の家で毎回デカいパーティをやったよ。Salt-n-Pepa や Run、LL Cool Jなんかも呼んでな」と彼は『VIBE』の取材に対して答える。「彼らはずっと音楽ビジネスに関わっている。いい面も悪い面も全て経験してきているのさ」

 
パープルのFaithパーカーを着たWakaは1017 Brick Squadの連中とともにフロント・ドアから会場に入った。彼の首は隙間なくタトゥーで埋め尽くされ、実物大の35mmカメラをかたどった巨大メダルをつけたゴールド・チェーンをぶら下げている。そんな風貌なので、観衆は彼に興味は持つものの決して近づこうとはしない。だが、ダンスホール・アーティストのBarbeeだけは例外で一緒に写真に収まっていた。

 
『Flockaveli』に収録されている「Karma」で「オレは何人もの黒人に対して盗みを働いた。その度にカルマ(宿命)を感じた」とラップしている。ただ彼は完全に悟りを開いたわけではないらしい。同曲で彼はAK-47型ピストル(おそらく弾丸が装填されてすぐ撃つことができる状態のもの)との宿命について語っている。アルバムの次の収録曲「Live By The Gun」の中で彼は「オレは銃によって死ぬ」とラップしている。このリリックが現実になりかけたことがあった。彼は2010年1月に地元の洗車場でBrick Squadのペンダントを盗まれ、その際に被弾した。銃弾は彼の右腕を貫通し肋骨および肺に損傷を与えたのだ。今年の3月にはAtlantaのアパレル・ショップでつかみ合いのケンカに巻き込まれ、発砲事件に発展した。また同じ月にはIndiana州GaryのWorld Of Skatesの外で、Wakaのライヴの後、8人のティーンネイジャーが撃たれるという事件も発生している。因みにこの件に関して彼は全く関係ない。このようにWakaにはトラブルがつきまとっているように見える。Los Angelesの治安の悪い通称"Jungle"と呼ばれているBaldwin Village地区で行われた「Hard In Da Paint」のヴィデオ撮影は、反ギャング法令を理由に警察が介入し打ち切られてしまった。

 
Wakaの足下には社会の悪行のようなものが次々に置かれ、彼はそれらを撥ね退けるいわば避雷針のような役割を担わされているようにも感じる。「Hard In The Paint」のパロディ・ヴィデオ「Head Of The State」ではObama大統領をマリファナ好きでBBQをがっつく非常にデカイ態度の人物"Baracka Flaka Flame"として描いている。この何百万回も視聴されたYouTubeヴィデオはヒップホップ・ファンが単なるユーモラスな風刺として作ったものだと思う。しかし、TwitterでBaracka Flaka Flameなる人物が11月の選挙でObamaの負け(民主党の敗北)を予言していたことを考えると、ヴィデオはTea Party(反Obama)陣営のプロパガンダだった可能性も否定できない。Wakaはこのヴィデオのことをあまりいいとは思っていないようだ。

 
「ノンビリしていると誰かにやられてしまう」と上機嫌のWakaは言う。だが彼の母親はかなりご機嫌斜めだ。プロモーター側が用意したどのエリアでも入ることができる関係者用リストバンドの数がWakaのスタッフの人数より少なかったので、彼女はかなり怒っているのだ。激しい言葉の応酬の後、Wakaと彼の母、そしてBrick Squadクルーは会場外へ出て行った。Arrested Developmentが90年代の大ヒット「Tennessee」を披露すべくステージに上がっていった。その頃、すでにWakaはストリートに戻っていたのだろう。

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