(U KNOW)What the deal is
●今月のリユニオン
何とクール・キースとウルトラマグネティックが再結成してツアーを行っていた。結成当時から決してアンダーグランドのレベルから浮上する事がなかったが、サウス・ブロンクスでBDPのサウンドを作るのにも貢献したとされるセドGを含むオリジナル・メンバーのファンは多く存在している。その後、独特のキャリアを作って行ったクール・キース以外には、ティム・ドッグくらいしかソロはやっていなかった。だが、今回は一度限りかも知れないと言われているが、再結成ツアーを現在行っている。NYでは10/7、ブルックリンはサウスポーでライヴを行い、オヤジだらけのオーディエンスで男汁全開でした?
●今月のプレミア
"Louder Than A Bomb"というシカゴ地区のティーンを対象とした詩のコンペがあるのだが、それを題材としたドキュメンタリー映画が制作され、NYはロングアイランドのイーストハンプトンで10/7、試写された。フィルム・メイカーはグレッグ・ジェイコブ、ジョン・シスケルというTVでドキュメンタリー制作してたチーム。シカゴベースのプロダクションで、以前に9/11のNYの現状を扱ったドキュメンタリーを制作している。本編は、シカゴ周辺の貧しい地区出身の子供達が詩を通じて、人々に触れ合い、同じ様な境遇の子供達の詩にインスパイアされ、成長して行く姿をメインに見せるという趣向。ヒップホップにも通じるパンチラインを狙った詩から、古くはアフリカに戻るスタイルのストーリー性のある詩など、そのレベルにも驚くが、言葉のパワーに改めて思い知らされると同時に、今、アメリカはヒーリングの時期にきているとも感じた?
●今月の子供ショウ
"Yo Gabba Gabba"なる着ぐるみを使った子供向け番組があるのだが、そのシアター・ヴァージョンにビズ・マーキーを迎え、NYはレディオ・シティでライヴが行われた。数々のヒップホップ・アーティストに限らずミュージシャンが客演しているこの番組は、エレクトロ・ヒップホップ・サウンドを多用し、子供に言葉やモラルを教えるという趣向の番組だが、ビズ・マーキーも落ち着く先に落ち着いたという感じ。尚、キャラの一人はダボにそっくり?
●今月のディバージ
兄弟達が出所して、なんとも幸せなディバージ家の長男、エルが先日もケーブル局、ブラックエンターテイメント・チャンネルの毎年行うアワード・ショウで功労賞を受賞したのだが、ソロ・ライヴをNYはSOBで10/6に行った。往年のディバージの名曲から、モータウンでのソロ・アルバムからの曲など、たっぷり2時間のライヴに、恐らく同年代だと思われるファンから、若いヒップホップの世代までが知るメロディに会場は溶けていた。素晴らしい事に、その数日後のメリーJ.ブライジのNYのショウにエルがゲストで出演、シンガー同士の魂の絆は、現代も生きている?
●今月のアート・ショウ
もはや、その精力的な活動で、彼抜きでは考えられないNYのライターシーンであるが、ジェイムス・トップが主催するアート・ショウ、"グラフィティ・イン・エルバリオ"という最悪のタイトルのショウがアップタウン106丁目で行われた。Duro、Doms、アーチャー、キングビー、ステイハイ140、ノック、クライドなど、70年代から80年代にアップし始めたライターたちの作品を中心に、ヨーロッパや、最近と言っても90年代の若手の作品も飾られた。特にクライドなどは他界説もあり、元気な姿と現在も作品を作っているという嬉しいニュースでもあった?
●今月のアートショウ2
数ヶ月前にこのコラムでも訃報をお知らせしたラメルジーの回顧展が、ハーレムのAs Ifギャラリーで開催されている。10/9に始まったこの展覧会は、多くのラメルジーの音声と、キャンバス、オブジェなどで構成されている。特にオーディオなどは、多くのラッパーたちが新しいと思ってやっていた時代以前のもので、改めて先見の目というか、時代を超えていた人だったと痛感させられた。オープニングは、彼を知る多くのアーティスト、ミュージシャン、フィルム・メイカーなどが集まり、80年代のNYのシーンの層の厚さと、才能が現代も続いていると思った?
沼田 充司
DJ/プロデューサー。レーベル、ブダフェスト主宰。07年『Moca Only vs Numata』をリリース。ニューヨーク在住。(Photo by Tiger)