Photo & Text by SIMON "MAVERICK" BUCKLAND
Smiley Culture & Asher Senator
Greetings Friends,
Greetings friends,
●Lorna GeeというDJ/MCを読者の皆さんご存じだろうか? 彼女はSmiley Culture、Tippa Irie、 Maxi Priestらと共に、1984年のLondonシーンに現れたアーティストで、Mad ProfessorのAriwaレーベルでルーツとラヴァーズの両スタイルでの成功を収めていた。1985年、86年にはBBCラジオのLondon Awardsで最優秀女性DJ賞を獲得し、一番のヒット曲「Gotta Find A Way」はUKレゲエ・チャートのトップに6週間も君臨していたのだ。当時のUKレゲエ業界は大盛況で競争も激しかった。そのLornaは最近の"寂しい"UKシーンで目立った活動をしていない。その理由は『Babymother』という1998年にChannel 4が制作した映画に脇役で出演して以来、俳優業に転向したからだ。彼女は2003年にWebber Douglas Academy of Dramatic Art(Webber Douglas演劇学校)を卒業。同校を卒業以来、数々のTVドラマ、TV映画、劇場公開映画、そしてなによりも彼女の名声を高めることになった舞台に出演した。なぜ僕が彼女のことを書いているのかって? 最近、カルト監督、Shane Meadows によるChannel 4の6部作ドラマに彼女が脇役で出演しているのをたまたま観たからだ。
●ジャマイカから発信される音楽の物理的な量が減っていくなか、世界各地で様々なレゲエ・ミュージックが生まれ、その数は増加の一途を辿っている。オリジナルのジャマイカン・レゲエに影響を受けた熱い志を持ったプロダクションが、まるで手入れの行き届いた庭に力強く生える雑草のように現れ始めている。これらのアーティストを全てチェックするには1日何時間ものネットサーフィンが必要だろう。だが、Facebookをよく活用している妻のお陰で、これから紹介するような知られざるグループを発見することができた。アイルランドのKerry Countyで活動しているAvatarというバンドはJames KennedyとTony O'Flahertyというミュージシャンにより旗揚げしたダブ・バンドで、彼らのレゲエに対するリスペクトがよく現れている8曲入のアルバム『Like River To Ocean』を発表している。彼らのスタイルは過去のジャマイカン・レゲエのコピーでもなく、UKのニュー・ルーツ系が変化したものでもない。アルバム収録曲は全てオリジナル。彼らが意識的にまたは自然に吸収した様々な音楽スタイルが反映されているのだ。これを文章で表現するのは難しいがやってみよう。ホーン・アレンジはどこか懐かしいブラス・バンドのようなフィーリングがあり、アフリカン・ロック風なギター・サウンドも特徴だ。リード・ギターには1950〜60年代のHank MarvinやBert Weedon、またErnest RanglinやLynn Taittの影響も聴くことができる。そして純粋なアイルランドの伝統音楽も忘れてはならない影響だ。ある時は日本のMute Beatのスローな曲が持つメランコリックなサウンドをも彷彿させる。彼らの音楽は非常にユニークでカテゴライズするのが難しいが、バンドとして彼らのスキルが優秀なのは明らかだ。是非www.myspace.com/avatarsoundsで聴いて欲しい。
Deborahe Glasgow
●前の2つの話題に関連して、少し昔のことについて書きたいと思う。かつてUKのDJ/MCはジャマイカのDJ/MCよりも一般的に質が低いと言われていた。しかし、1984年にその状況は一変することになる。UK独特のパトワ語とお国柄に則したテーマ(国内の政治ネタが多かった)をユーモラスに描いたリリックでPato Banton、Macka B、Phillip 'Papa' Levi、Asher Senatorらの曲が売れ始めたのだ。マスコミもよく彼らを取り上げ、僕も非常に興味を持っていた。彼らの曲は多数あったインディーズ・レーベルからリリースされ、賑やかなレゲエのクラブ/ライヴ・シーンに集まる若いリスナーの心をしっかり掴んでいた。これを見ていたGreensleevesの共同創始者でA&R担当のChris Cracknellは1985年にUKアーティストの専門レーベル、UK Bubblersを立ち上げる。同レーベルの大半の曲はCracknellによりプロデュースされ、London南部のBatterseaをベースにする元Reggae RegularのPatrick Doneganのスタジオで制作された。アーティスト生命が悲劇的に短かったDeborahe Glasgowは同レーベルで(AnnetteやTannoiといった知られざるヴォーカリストと共に)活躍したアーティストの1人だった。彼女はGreensleevesを代表するスターとなり、当時ホットなプロデューサーだったAugustus 'Gussie' Clarkeの下でジャマイカ・レコーディングさえも行った。Tippa Irieの「Hello Darling」と「Complain Neighbour」がヒットを飛ばし、「Hello〜」にいたってはUKポップ・チャートでトップ10内にランク・インした。思えばその頃がUK Bubblersの商業的成功のピークだっただろう。以上のような歴史を持つUK Bubblersのコンピが同レーベル創立25周年を記念してリリースされる。当時大活躍していたSaxon Soundの音源がメインだが、他の重要な曲も収録しているので聴いてみて欲しい。
●8月31日にNorma Dodd夫人が亡くなったのは残念なことだ。Clement 'Coxsone' Dodd(2004年没)の妻として夫と共にStudio Oneの伝説を創り上げた人だった。スタジオで録音に関わった人々にも人気があったらしい。Dodd家の人々にお悔やみの言葉を申し上げたい。彼女の死により、Studio One音源が今後どのように管理されていくのかがわからなくなってきた。ユニバーサルのようなレコード会社が権利の買収を提案したそうだが、Doddの家族は頑なに拒否しているらしい。彼らは金額ではなく、父の遺した音楽がリスペクトされるような環境を望んでいるというのだ。それなら、あまり知られていない曲をリマスターして限定アナログ盤としてリリースすべきだと僕は思う。これは高望みなのだろうか? 僕が生きているうちに、Judah Eskender TafariやDevon Russellの未発表アルバムを手にする日が来るのだろうか? おそらく難しいだろう...。
●「あの人は今?」の話題を続けるなら、Aqua Livi (かつてはLeviだった)はどうだろう? 陽気で才能があったルーツ系ヴォーカリストで、(僕の記憶が正しければ)Readingで活躍していたと思う。彼は80年代後半、盛んに有名アーティストのオープニング・アクトを務めていた。UKニュー・ルーツ・シーンはまだ生まれたばかりで、Aquaのようなアーティストのレコードはすぐに忘れ去られてしまった。だが、最近コレクター達があまり売れなかったルーツ系のレコードの奪い合いをしており、それらの価格も跳ね上がっている。Aqua Liviのことに話を戻そう。80年代後半に活躍したアーティストの多くがそうだったように、彼はUKルーツ・ステッパーズ・スタイルを踏襲し、そこそこの名声を得たのだった。そんなLiviが最近「Comma Comma」という10インチ・シングルをLondonのRoots Hitekレーベルからリリースした。このレコードは"いいレコード店なら"どこにでも置いてあるらしいのだが、2010年の現在では、ほとんどのレコード店、特に"いい店"はすでに閉店してしまっている。この文句の意味をどう理解すればいいのか正直悩むところだ。このレコード、インターネットで試聴できるので試してみることをオススメする。
Till Next Time, Take Care.............(訳/大塚正昭)
(訳/Masaaki Otsuka)