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332    ARTISTS    MICKY RICH

MICKY RICH
 
Interview by Norie Okabe / Photo by Masashi Sakurai
 

 東京のダンスホール・シーンで強固な地盤を創り上げてきたMicky Richがメジャー・フィールドへ進出。通算3枚目となるアルバム『Yell』はネクスト・レベルを痛感させる渾身作だ。Ken-U、Domino-Kat、Akane、Barbie Japan、そして高校時代からの旧友DAI-HARD(N.C.B.B)など強力タッグも冴え渡る。
 
●今回はめずらしくノー・コンセプトで制作を開始したとか。
Micky Rich(以下M):やりたいことが次々浮かんできて、どうにも一つのコンセプトにまとまらない感じがしたんですよ。だったら、もう好き勝手に作ってみようじゃないか、と。で、10曲作り終えて並べてみたときに、なんとなく"応援"っていうテーマが見えてきて。気づいたら、Domino(-Kat)とやってる曲も「Yell」じゃんっていう(笑)。タイトルもその流れで決めた感じですね。
 
●陰陽で言うと、陽にふりきった印象があります。
M:自分が完全に陽のテンションだったっていうのもあるけど(笑)、そこだけは最初から意識していたかも。俺の中のポジティヴな気持ち、あったかい部分を表現して、自分もみんなも元気になるようなアルバムにしたいっていう。暗い出来事はけっこうあったんですよ。でもそれをバネにして強く生きていきたい。そういう表現法に切り替えられたというか。
 
●3枚目だからこそ辿り着けた境地があるんでしょうね。「つかもうぜ」の歌詞に「デカイシステムにDancehall/家族のSmileにMy home」とありますが、後半はそれこそ"今"を象徴した言葉か、と。
M:親になって、30歳過ぎて、やっぱりマイ・ホームは夢ですよ。Rankin(Taxi)さんに「甘くないぞ」と忠告されましたけど(笑)。そこを目指していかないとっていう、これはもう自分との約束ですよね。
 
●子供への愛を綴った曲(「Angel〜ボクらの宝物〜」)もありますね。Mickyさんの曲に、まさか"機関車トーマス"という単語が出てくるとは!
M:完全に親バカです(笑)。でも、最近子供に対する暴力事件が多くて、色々考えさせられることがあるから、今の時代性とマッチする歌になったのかな。この子は天使だって思っちゃうくらい愛しく感じる瞬間をいつまでも大切にしたいし、みんなにもそうあってほしいという願いを感じ取ってもらえれば。
 
●「Unity」も、めずらしいテーマでは?
M:いつもパーティだギャルだとか言ってる人間だからね(笑)。だけど、最近は音楽の世界にしても日本という国にしても、みんなが1つになったらもっとおもしろいことができるのにって感じることが多くて。そんなときに、いつもバラバラな仲間がすごく1つになった瞬間みたいのがあって感動したんですよね。それを忘れないように作った歌。
 
●おかしな言い方ですけど新陳代謝がいいなと感じました。新しいことを取り入れて、どんどん循環していくっていう姿勢がしっかり提示されたアルバム。
M:停滞するのが大嫌いなんです。特に東京は常に新しいものを追い求める街だし、歌い手もそこを表現していかないと。今は循環しすぎて、むしろ"Come Down"とか"Answer"とか、往年のトラックに興味が向いてる。そこでまた新しいことができるんじゃないかとかね。
 
●最後に、メジャーでやることについて意識したことは?
M:特にないかな。でも昔と明らかに違うのは"間口を広げたい"っていう意識があること。レゲエはジャマイカン・ポップス。共感できることが大事な音楽だと思う。だから自分も日本語でそこを追及したいし、それは今回意識した部分でもある。理想は、大きなザルですくって、落ちてきた人達は全員ダンスホール(クラブ)にいました、みたいな状況(笑)。やっぱり自分はダンスホールが一番なんですよ。


 

「Yell」
Micky Rich
[Tokuma Japan / TKCA-73557]
 

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