BOOM BAP
WYCLEF JEAN : DON'T HAIT
毎年Labor DayウィークエンドにはNew York Cityがカリビアン・ミュージックのメッカになる。レゲエ、ソカ、そしてR&Bのビッグネーム・アーティストがクラブや公園、博物館の駐車場などでパフォーマンスを繰り広げるのだ。その中でも最大規模なのが、金曜日に行われたNYCのNo.1ヒップホップ・ラジオ局であるHot 97FMが主催する「On Da Reggae Tip」だ。
過去の「On Da Reggae Tip 」には、Hot 97でヘヴィ・ローテションとなったレゲエ・アーティストたちに加え、Alicia Keys、Puff Daddy、Chris Brownといったカリビアン・ミュージックをこよなく愛するR&Bのスターたちも出演している。ただ、今回出演したWyclef Jeanほどレゲエ・ミュージックをリスペクトしているアーティストは他にいないだろう。Fugeesの創立メンバーである彼の音楽にはカリビアン・ミュージックの影響が非常に濃い。
Mavadoの最新ダブ・プレートが流れる中、Wyclef Jeanが3階席まで擁する豪華なHammerstein Ballroomのステージに現れたこと自体、不思議なことではない。だがオレにとってこれが、彼がハイチの大統領への立候補を拒否されて以来、初めて観る彼のステージなのだ。彼はハイチに居住していなかったことが理由で立候補として認めてもらえなかった。さらに、立候補を表明したことをSean Pennに非難され、元FugeesのPraswellは別の候補者を強く推していた。Wyclefがこの世界的に報道された件について何かコメントするのか、または純粋に音楽を演奏するためにだけにステージに上がったのか、オレはそれを見極めたかった。その答えは意外にもすぐに判明した。
かつて一緒に活動していたLauryn Hill(彼女は長いブランクの後、今年の「Rock The Bells」のツアーに出演するなどライヴ活動を再開している)のヴォーカルをフィーチャーしたFugeesの名作「Ready Or Not」をCDで流した後、Wyclefはエレキ・ギターに手を伸ばしてヒット曲「911」を弾き始めた。そして彼の定番曲であるBob Marleyによる"自由への賛歌"「Redemption Song」を歌った。
しかし、その後に披露されたWyclefのオリジナル曲は、世界中のトップ・ニュースになりえる程の強烈な内容だった。"自由への賛歌"の余韻がスモーキーな空気に漂っている中、彼は「If I Was President」(もしオレが大統領だったら)という曲を歌い始めた。
「大勢の人々がオレのニュースを見ただろう。みんなオレのことをニュースで見たよな?」とWyclefはイントロで歌う。「もしオレが大統領だったら、金曜日に当選し、土曜日に暗殺され、日曜日に埋葬され、月曜日には仕事に復帰している」と、かなりキツい、ブードゥー教流のたとえが続く。そして彼はアドリブでこう歌った。「Sean Pennに伝えたいことがある。もしかしたら、お前はコカインを吸うのが忙しくてオレがハイチで何をやっていたかを見ていなかったかもしれない。Praswellにも伝えたいことがある。たとえお前がオレのことをサポートしてくれなくても、オレはお前のことが大好きだ。たとえ、お前がFugeesでたった8小節しか歌っていなくてもな。オレが大統領だったら...」と曲は続いた。次に彼はKreyol言語で長い間歌い、ステージから観客の上にダイブした。観客は彼のことをヒーローのように肩で支え、会場はまるでカーニバルのようにハイチ国旗が乱舞した。
2階のバルコニー席に登ったWyclefは胸を叩いて彼の人生の真の目的を明かした。それは政治家でもなくミュージシャンでもない、全く別のものだった。「世界には多数のエンターテイナーが存在する。だが、革命家はほんの僅かしか存在しない。Wyclefはエンターテイナーではない。有言実行あるのみだ。オレは革命家だ! 曲を流せ!」と彼は言い放った。そしてWyclefのセレクターがJr.Reidの感銘的な「One Blood」を流した。@Boomshotsでは素早く彼の言葉をツィート。フォロワーは一斉にWyclefを批判した。「大統領には相応しくない行動だ」といったリツィートが続々と届いた。この"事件"はCNNでもとりあげられたが、この件に関してSean Pennは沈黙を守っている。Praswellは直接的なコメントは避けたものの、「"復讐"という料理は冷たいまま運ばれてきた方が美味だ」とツィートしている。
Who the cap fit let them wear it. やりたい者にやらしておけばいい。(Bob Marley「Who The Cap Fit」の歌詞より)
Boomshots.comではWyclefのパフォーマンスを観ることができる。