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TERRY THE AKI-06
WORLD OF T-MUSIC
 
Text by Takashi Futatsugi / Photo by Kurofin
 

 2007年に他界した関西アンダーグラウンド界のカリスマ、TERRY THE AKI-06。彼の死後、彼を偲び、そして彼の意思を継ごうとする歌が数多くリリースされ、そうした曲から彼の存在を知った読者も多いだろう。8月18日に彼のコンプリート・ベスト・アルバムが二種類リリースされたこの機会に、彼の軌跡を振り返ってみよう。
 
 「数え切れずに遺した強烈な情熱は語り継ぐForever...」
 『拳POWA』収録のNANJAMANとのコンビ曲「Just One Life」で、そんなフレーズを放っていたBOXER KIDは、前号のJTB個別インタヴューの際にも「何回でも言いますけど...」と前置きしながら、 TERRY THE AKI-06からもらったもの、そのコネクションや、カルチャー・ショック、そして"壁を作らない生き方"の大きさについて語ってくれた。付き合い方の違いこそはあれ、それは、「My Town」で自分の想いを綴ったJUMBO MAATCHや、「スープレックスパーティー」に参加したBACK YAADIEにしても同じだろう。
 
また「Ever Green」を"彼"に捧げたRYO the SKYWALKERや、先日の「Highest Mountain 2010」('06年にBOOGIE MANのステージの客演で登場した故人へのアーティスト、サウンドからのトリビュート、対するオーディエンスの"テリ山サイン"がどれだけ多かったか!) で、「最高の"癒やし"を...」と、あのオケで歌いだしたNG HEAD、いわずもがなラガラボ(Aruz Studio制作の「Zamurai Rock!」もあった)のBOOGIE MANにVADER、また「栄光に近道なし」の精神を引き継ぎ、それを曲にしたCHEHONに、TERRYと共にかつてそのフレーズをタイトルにした楽曲を作っていたBEAR MANは中断していたその曲を「Come Together〜栄光に近道なし〜」として完成させた。
 
また、先に「R.I.P. TERRY THE AKI-06」を発表していた卍LINE、そしてMONTA(もんたよしのり)と、「ありがとう」を披露したBIG BEARは、同じく彼が所属するサウンド/レーベル=SCORPION INTEANATIONAL RECORDSよりリリースした待望のフル・アルバムにも、韻踏合組合/420メンバーのHIDADDYとのコンビでの裏庭讃歌「テリヤマイク」、そしてかつてBEAR MAN、TONY the WEEDを呼び込んでの「正念場(Still Rolling TMS Ver.)」も披露していたトムヤムサムライとの「Syounenba」も収められたばかりだ(ちなみにトムヤムサムライは、TERRYの「ナイナイマネー」のPVをバンコクで撮影した田中雄一郎ことICEMANが率いる、TERRYの遺志を継いだ国際派ヒップホップ・ユニット。その田中監督は、BIG BEARとJUMBO MAATCHの「Rudeboy Blues」のPVも手がけている)。
 
 '07年8月5日、34歳の若さであの世へと旅立った彼が愛され続ける理由は沢山ある。セレクター兼MCのTERRY MANとして94年頃から活動を開始した彼は、真のフリーダムライダーとして"ジャンルに縛られず"にオリジナルな表現方法を早くから確立、数々のユニットで活躍することとなる。アメリカ人、ブラジル人MCを含む人種無差別多国籍軍、BONGA STARZから、その流れを汲む神戸代表=TAKE-T、そしてTERRYのライヴを支えてきたDJ ハンマーナオとのジョインティーナ、そして韻踏合組合や、SHINGO★西成、秘密結社、BAKA BROTHERSでもコンビを組むBAKA de GUESS?、LARGE PROPHITSらと結成した420FAMILYは、クルー・アルバムもリリースし関西ヒップホップ・シーンの一大勢力となった。
 
TERRYが先導した同集団は、「裏庭」(WORD SWINGAZのRYW発案のキーワード)を拠り所に、「420PARTY」などの現場で岡山のYOUTHや、22&GAZZILA、HI-KINGといった次世代のラッパーや、グラフィティライターらを巻き込んでいく('06年に解散。今年春に復活)。その中心にいた彼の行動力=バイタリティ、そして裏庭のリアルな描写にこだわりながら、常にニュー・ワードを配信し、ユニークな押韻が光るスキルフルなラップから、ヒューマニティに溢れたグッとくる歌まで、様々なスタイルで魅せてくれた彼は、仲間と音楽を大切にする比類なきハイグレード・マニアであり、それだけに計り知れない"求心力"を持っていた。
 
 かねてからレゲエ・シーンとリンクしていた彼は、そうした独自の動きと幅広い交遊録を遺作となるP2ndソロ・アルバム『正念場』にも注ぎ込んでいた。また、同作の"癒やし"路線の終盤を占めていたSKYLINE BANDのオリジナル・ラガ・ハープ=TONY the WEEDとの"テリトニー"もその大きな成果、である。
 
 '05年に設立し、現在もその創始者の志を受け継いでいる420RECORDZのプロデュースで組まれたこの2種のベスト・ワークスは、ソロからユニット、代表曲からレア・ヴァージョン、そしてPVからライヴまで、TERRYのこだわりを詰め込んだ CD+DVD("映像へのこだわり"も、中野裕之が監督を務めたジャマイカ・ロケの1st PVの頃から凄かった)、となっている。まさにジャンルを超越した表現者だった彼は、北は札幌(NCBB)から南はタイ(タイタニウム)までを繋げ、06=大阪アンダーグラウンド・シーン、そのピープル・ツリーの象徴としてリスペクトされ続けている。それは420主催のイベントであったり、前文にも書いた彼と縁のあるアーティストの作品からも感じ取る事ができる。今回届けられたこのベスト・ワークスは、裏庭ビギナーにも最適な「T-MUZIK」の何たるかを感じ取れる永久保存盤だ。音楽を道楽、つまり"おつまみ感覚や"と歌いながらプロ意識は人一倍高かった「本物」の彼の熱い想いの記録。次の世代、つまり少年たちに、自分の言葉、やり方で「夢を叶えろ!」と唱えてきたそのメッセージの数々は決して枯れることはない。


 

「T-MUZIK Vol.1」
TERRY THE AKI-06
[Tokuma Japan / TKCA-73546]
 
 

「T-MUZIK Vol.2」
TERRY THE AKI-06
[Tokuma Japan / TKCA-73547]
 
 
TERRY THE AKI-06 ORIGINAL ALBUM
 

2006年作品
「裏庭独走最前線」
TERRY THE AKI-06
[420RECORDZ / FTO-420]
 
 

2007年作品
「正念場」
TERRY THE AKI-06
[420RECORDZ / FTO-T831]
 
 

2008年作品
「てりとに」
テリトニー
[420RECORDZ / FTO-0688]

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