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THE MAZE

"Transition クロス、アングリ、オノラブル"
Text by Reiko NAGASE SMITH
　
The Voice Of The Soil Of Jamaica.
　
「ジャマイカの土壌からの声」と言われるボウンティの、「クロス、アングリ、ミゼラブル」なリリックスは、苦難と怒りでうちのめされた、プア・ピープルを代表する声。ときにはトゥー・マッチでバッド・ワードが噴出し、その行き過ぎたパフォーマンスでボウンティが逮捕される事件まで起こったほど。だけどこれが決してネガティヴなメッセージではないことは、ファンや仲間はよーくわかってる。その真意に反して、レゲエに暴力的なイメージをつけないよう見直し、これからは、「クロス、アングリ、オノラブル」にスローガンをかえて、前向きにやっていくぜ、と名言をのこした我らの番長です。ここに新しいキラー様の誕生です。ボウンティ・キラーが自ら「Trandition」とよぶ「変還」ぶり、バッドマンから脱イメージするってどういうこと？
　
バッドマンのイメージを脱して、Cross, Angry, Miserable／苦、怒、惨のスローガン打ち切りを宣言したのは、モンティゴ・ベイで開催された今夏の「レゲエ・サンフェス」でのステージ上です。キラー番長は、そのパフォーマンスと20年にわたるジャマイカ音楽への貢献に対して、「サンフェス」主催者から特別賞を授与されました。その際に、ジャマイカのローカル・テレビでも放映されたボウンティ・キラーのドキュメンタリー・フィルム『Path To Greatness』が素晴らしい。18年間ダンスホール街道を走破してきたキラー番長が、20歳のときからの映像と共に、こう自分を語っています。
　
「ボウンティ・キラーは大将、ボウンティ・キラーはリーダー、ボウンティ・キラーは偉大なる父。そして常に、プア・ピープルの代弁者」
　
「俺が出てきた頃は、ジャミーズだけがDJの登竜門だったんだ」
　
このドキュメンタリーでは、ジャミーさんをはじめ、トニー・マタロン、シャギー、アライアンス出身のウェイン・マーシャルらアーティストたちがそれぞれの想いでキラー番長を語ります。ジャミーズ時代や伝説の「スティング '93」の映像など、ラダマーシ。People Deaaaad。ピーポーデーッ。
　信じたことにひるまず立ち向かい、誰にも指図されることなく、世界を舞台にわが道を貫いてきたボウンティ・キラー。ダンスホール史上最大最長のアイコン。このドキュメンタリー、You Tubeでも見られます。
　
その後、アイリーFMの女性パーソナリティー、エリース・ケリーの人気番組『イージー・スキャンキン・ショー』にキラー番長が出演。キラー独占インタヴューで洩らした御言葉が大きな反響をよんでいます。
「政府はインナーシティー地区のドンたちを撤退させるすべし。Shotta（シャタ＝ガンマンのこと）はガンをやめるべし。アーティストはみなユナイトすべし。そしてユースのために何かすべし」

　
ボウンティ・キラーの新しいスローガンは、ビッグワードばかりで、「えろー、やろー、伸びよう、知ろう、覚えよう、気づこう！」。いいじゃん。ワー・ロード＝War Lord将軍の名前も変えようかなあということで、もっとふさわしい名前を募集中。
　その後、ジャマイカ独立記念日の週末に行われたビッグなショー「フリー・ローデッド」で、長年のライバルで犬猿の仲とされたビーニ・マンとステージを共有し、永久的ユナイト宣言をここにしました。
　「長い間いろんなことがあってForgettable＝忘れられないこともあるけど、Forgivable＝許せてしまえるし、Livable（生き甲斐のあること）でいたいよね」
　変還後のキラー様は更にビッグワード多発です。
　
　「ビーニは孫までいる身だし、俺はゴッドファーザーだし、いつまでも21歳のままじゃないしよ。俺は38歳、ビーニは37歳と3/4。大切なことは心身ともにヘルシーで生きることだよ」
　そしてふたりは固く手を握り合い、「国家非常事態発令も終わりにして、国家エンターテイメント発令といこうじゃないか」
　Peace。
　
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