BOOM BAP
SUMFESTS ARE BETTER THAN OTHERS
ミドリ(註:本誌編集部員)はこれを聞いてビックリすると思う。「Reggae Sumfest」から帰ってきた直後、信頼していたオレのMacBookがクラッシュしてしまったのだ。Macのことならなんでも知っている知人のDavidがその原因について「Mac内部に水が浸入している」と判断したのだが、オレはそれが信じられなかった。ラムならまだしも、水ということは絶対にない。とにかく、クリーン・ルームでバイオハザードスーツを着用し、ハードディスクのデータを復活させてくれたDrive Saversの人々に感謝したい。彼らのおかげで一時は緊急事態宣言も出されたジャマイカから、この独占レポートを届けることができるのだから。今年の「Sumfest」は島にとってその傷を癒す大きな一歩になったと思う。
「Reggae Sumfest」はレゲエのフェスであるというのは、その名称からも一目瞭然。しかし今年で開催17年目を数えるこのフェスでは"インターナショナル"な出演者が重要な役割を担うようになってきた。今年はChris BrownとUsherというヒップホップとR&B界から2人のビッグネームが出演した。Breezyがジャマイカに着く前に、彼のフェス出演反対を唱える何者かがFacebookページで"署名"活動を始めていた。Rihannaとのダメージ大の破局が報道されてしまったChrisは、これ以上のイメージ悪化を懸念したのか、一度もインタヴューを受けずに、出演が終わるとすぐにジャマイカから引き揚げてしまった。これは非常に残念なことだと思う。彼は"International Night"の出演者の中でもっともジャマイカらしいアーティストだ。彼は最新のダンスを知っているし、DJのようなこともやってのける。おそらく彼が"Dancehall Night"に出演してもまったく問題がなかっただろう。"Dancehall Night"に出演しても恥ずかしい思いをしないトップUSアーティストは、彼ぐらいしかいないはずだ。
歴史的な"Dancehall Night"の後、Usher RaymondはMontego Bayの豪華なIberostarホテルでの記者会見に出席した。他には、ジャマイカのレゲエ/ソウル・シンガー、Gramps Morganや、「Reggae Sumfest」とジャマイカ観光局の関係者、Digicel、Red Stripe、Wisyncoのようなスポンサーの代表者らが出席していた。Usherはジャマイカ音楽と文化への愛着を説明した上、「『Sumfest』の観客は何か特別なことを期待していい」と言った。さらに「ジャマイカの音楽と文化の祭典である素晴らしいフェスに参加できることを誇りに思う。アメリカの音楽文化をジャマイカの人々とシェアできることをとても嬉しく感じている」と述べた。
今後もレゲエとのコラボを続けていくのかという質問に、Thunderclap やThe Rockawayといったダンスをスマッシュ・ヒット「Yeah」に取り入れたR&Bのスーパースターは、「もちろんだ」と答えた。「新作アルバムに収録の『Pull Up』を聴いてみればわかるように、オレの音楽にはジャマイカ音楽の影響が濃い。レゲエとヒップホップのコンビネーションは美しい。この2つの音楽は昔から相性が良かった。レゲエは、メッセージの力強さや、ドラム、キーボート、ギターといった楽器から発せられるエネルギーも凄い。レゲエを聴くことはオレにとって儀式のようなものだ。ヒップホップもメッセージ性が濃い音楽なので、この2つの音楽の融合はいい夫婦のようなものだ。R&B、ヒップホップ、レゲエ、ジャンルは何だってかまわない。歌い踊ることができ、パフォーマンスができる限り、オレはエンターテイナーであり続ける。自分のことを名誉ジャマイカ人と思っている。だからオレはいつも『Yeah man. So I'm coming home』と言ってるのさ」
Usherが予告したとおり、"International Night 2"はサプライズの連続だった。フレッシュなRomain Virgo、ソウルフルなヴォーカルが魅力のGramps Morganの後にはShaggyが登場。「Mr. Boombastic」 から 「Angel」まで一連のヒット曲を披露した。次にUsherがステージに上がり、オープニングに「Caught Up」を歌った。彼は最新技術を駆使したライテングと超絶スキルを持ったバックダンサーと共に素晴らしいショーを展開した。
「Lick a shot Gully God lick a shot」とUsherが言った時、何かが起こるという予感がした。その期待通りMavadoが登場。「So Special」などのヒット曲を歌い、会場はさらにヒート・アップした。だが、まだまだサプライズは続いた。なんとUsherはElephant Manをステージに招き、ステージの左側からはChris Brownを引っ張り出してきたのだ。Elephantが2人のR&Bとダンス・チャンピオンと共に「Nuh Linga」や「Gully Creeper」を披露。観客の熱狂は最高潮に達した。Elephant Manは「これが結束というものだ。これこそが愛だ。UsherとChris Brown、信じて欲しい。ジャマイカ人はおまえたちのことを自国民のように愛している」と言った。Usherは最後にヒット曲「OMG」でショーを締め括った。3人の大物が共演したショーに相応しいラストだった。