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GYPTIAN
HOLD ON
 
Text by Minako Ikeshiro / Photo by Marvin Bartley
 

 しばらくUSのメーン・ストリームへのクロス・オーヴァー・ヒットがなかったダンスホール・シーンに風穴を開けた形になったのが、ジプシャンの「Hold You」だ。NYのHot97から火がついたこともあり、NYでのヘヴィロテ率はぶっち切りだ。その勢いで、2年ぶり3作目となる同名アルバムを完成、精力的にプロモ・ツアーを展開している彼を電話でキャッチした。
 
 04年から05年にかけてのワン・ドロップ・ブームで、リッチー・スパイスやI・ウェイン、ジャー・キュアーなど、の非・説教系のラスタ・シンガーが人気を集めてから5年が過ぎた。一発屋に近い人もいれば、安定した人気を持つ人もいるが、今年に入ってネクスト・レヴェルに到達したのはひとりだけ。ジプシャンだ。「Serious Time」と「Mama」のヒットで人気者の仲間入りをし、VPからコンスタントに2枚のアルバムを発表、レゲエ圏内ではよく知られた存在の彼が、「Hold You」の特大ヒットでUSでホットな存在になっている。まず、彼を巡る状況がどう変わりつつあるか、確認した。
 
「確実に変わってきているね。最初は曲が一人歩きをしている感じで、みんな誰が歌っているのか知らなかったんだ。"あの曲、よく聴くけど誰が歌っているんだ?"みたいな感じで。今は、段々俺の存在も知られて来たところだよ。自分としては理想的な展開だと思う。スタジオでがんばった成果が、そのまま現れたわけだから」
 
 前作『I Can Feel Your Pain』にも収録された「Beautiful Lady」のように、ロマンティックな中に少し官能的なトーンを挟むのが得意。「Hold You」も、「抱きしめて欲しい」とも、もっと直接的な意味にも取れるフックがあるのが話題になっている。ジプシャン本人に確認したら、「俺の多才なところが出ただけだよ」と上手にはぐらかされた。
 
「音楽は毎日のように新しいものが出て来る。新しい才能、新しいリディム、新しいファン...だから自分もどんどん新しいものを出して、その時流に乗って行かないといけないと思っているんだ」
 
 デビュー当時から、ふわっとした捉えどころのない雰囲気を持つ人だったが、ここに来て、今年最大のクロス・オーヴァー・ヒットの歌い手としての自覚を強く持つようになった印象を受けた。
 
「今、レゲエ全体であまり動きがないから、俺のヒットには大きな責任が課せられていると思っている。だから、一生懸命やらないといけないし、やらないといけないことが山積みなんだ。俺自身、もっと多様性を持って、もっと迅速に動いて、もっと大胆にならないといけない」
 
 なんだかワールド・カップの出場選手のような台詞を、ジプシャンは何気なく口にする。物静かなタイプだが、うちに秘めたものはアツいのかも知れない。
 
 新作の特徴としては、"Punnany"など有名リディムを使用したり、レゲエ・クラシックを意識したりした曲が目立つ。
 
「あれは、俺のアイディアだよ。よく知られたリディムや曲を俺が仕立て直すのはユニークで、今までの俺の曲とは違う感じになるだろうと思ったから、やってみたかったんだ。それから、みんなに次の動きを簡単に読まれるのはあまり好きじゃないのもあるね」
 
「Na Na Na」や「Drive Me Crazy」など、楽器の音色を重視した曲からは、ジプシャンのミュージシャン・シップが感じられる。ミュージシャンと一緒にスタジオに入ったのだろうか。
 
「コンピュータも使っているけれど、本物の楽器も使っているよ。俺はミュージシャンと一緒に仕事をするのが好きだから。今回、メーンでプロデュースをしているのは俺とジョン・FXで、楽器もFXが弾いている」
 
 キングストン北部のセント・アンドリューの出身。ラスタファリアンの父親とクリスチャンの母親を持ち、「俺は生まれつきのラスタだよ」と言い切る。それなのに、ラスタ讃歌をほとんど歌わない理由を尋ねた。
 
「オール・マイティの力は、全面的に信じているよ。だけど、例えば同じ環境で育っても、7人の兄弟がいたら、7人とも違う考え方をするようになるだろ。それと同じなんだ。俺は新しいタイプ(のラスタ)なんだよ。俺はファンが聴いて喜んでくれることを歌いたいんだ」
 
 次のシングル予定曲、「Nah Let Go」はメロディーラインがポップ寄りで、ショーン・キングストンのヒット曲を少し彷彿とさせる。それを遠回しに指摘したら、全面的に反撃された。
 
「レゲエとR&Bを構成している要素はほとんど同じで、R&Bでやっていることでレゲエにないものはひとつもないと俺は思っている。ラップだってもともとはレゲエのトースティングから始まったわけだし。ダディ・U・ロイやブリガディア・ジェリー、ジョジー・ウェルズたちがパイオニアで、全部レゲエから始まったんだ。歌の間にDJやラップが入るのだって、俺たちが最初に始めたわけだし。俺たちがマネをしているんではなく、彼らが俺たちのマネをしているんだ」
 
 ...失礼しました。また、「海外とのアーティストとの共演の話はいろいろ来ているけれど、本決まりになっていないから、まだ名前は出せない」とも。
 
 本格デビューから5年、フロント・ランナーになったジプシャンは、クロス・オーヴァー・ヒットの成功を楽しみつつ、「レゲエ/ジャマイカ代表」を強く自覚している模様。サード・アルバム『Hold You』からは、甘い歌声の合間に、グッと逞しくなったジプシャンを感じってみよう。

 

「Hold On」
Gyptian
[VP / VP1867]

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