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328    ARTISTS    CHEHON

CHEHON
ROAD TO ISLAND
 
Interview by Norie Okabe / Photo by Yoshifumi Egami
 

 抜群のライミング術と強力なパンチラインで極上グルーヴを生み出すDJ、Chehonの3rdアルバムが完成した。Chozen Leeとの「Midoriのせいで」などお馴染み曲から、Hifanaとのタッグ曲、野郎Productionプロデュース、Laden & Micky Rich客演曲など、注目のブランニューまで全12曲。シーンで常に熱い視線を注がれる男の"今"は、いかに?
 
 『Road to island』----最新作のタイトルは、現在のChehonの心情を実にうまく表現している。これは、彼の「いろんな国に行って、いろんな文化、いろんな語学を学びたい」という願望であり、「将来的には日本を旅立つ」意思を表明したもの。「どこか行っちゃうんですか?」と聞いたら、彼は「どこか行っちゃいますよ、いつになるかわからないすけど(笑)」と笑った。どうしてまた、その境地に辿り着いたのか。
 
「よく言えば、慣れてきた。悪く言えば飽きちゃった、自分の曲に。同じ生活で刺激がないと、結局、同じリリックしか書けないんですよね。で、どうしたらええか考えたときに、生活環境を変えたり、せっかく興味があるんやから他の国に行ったほうがええんちゃうかなって。そう考え始めたのはセカンド終わったくらいのころ。それまではやること全部が新しくて、環境がガラッと変わったんですけど、いざ3枚目作ろうってなったときに、これまでと同じ感じになりそうやな、と。それやったら次のステージへの意思表示みたいな内容にしようと考えて」
 
 思えば、先行シングルのタイトルは「Challeng-er」だった。「飽きが来ないとは限らないならば/飽きさせないようにTry」というフレーズは、前出のコメントそのものだし、「コレは何かが起こりそうな予感がしてもうたまらないのさ」というサビは、"次"のヴィジョンを思い描いての言葉だろう。そのDVDに収録されていたインタヴューで、「自分の"引き出し"をもっと増やしたい」と語っていたことも、そこにつながってくる。
 
「今回は、引き出しを増やすためにトラック・メーカーをガラッと変えてみたり、ジャマイカには3回行って、そこで新しい刺激を受けたり......。ほかのジャンルのアーティストの曲もよく聞いてました。ジャンルは違っても、そこでグッとくる音楽と出合えれば新しい引き出しになる。で、それを自分色に改良すれば新しい曲につながる。そうやって何か変えようと努力してましたね」
 
 "Road to"つまり道の途中。そこに今作の一番の魅力がある。「理想はスゲエ高望み。最高にかっこいい自分を思い描いてるけど、今は全然その自分に追いつけてない。だから、モヤモヤしてる感じ」と本人が語る、その"葛藤"こそが実はいい味を出していたりする。
 
 Daddy Dragon産の疾走感あふれるリディムで、「走る走る走る/つまづいても立てる立てる立てる」と畳み掛け、決してリタイアしないと自分に言い聞かせる「A-1 Runner」、大仏によるド変化球オケ=ビートなしのサビで「自分が正しいわけじゃない/けれどやらなきゃ何も始まらない」と喋り、「頂上目指して上昇」を狙う「Gamble Racer」など、"ここではないどこか"へ辿り着くための力強い宣誓が随所に刻まれている。
 
「葛藤は、そう簡単に解消されないでしょう。答えが出るのは、アルバム10枚目くらいじゃないですか。そのくらい深い(笑)」と言うが、それほどまでストイックに自らを進化させようとする想い、そしてそれを感情的に歌にぶつける様は、なんとも泥臭くて、人間臭くて、胸を打つ。
 
 今作は、そうした泥臭い生き様を描いた楽曲が大半を占める分、より男臭さが増しているのも印象的だ。「自分の生活や身なり、雰囲気に合った歌を歌えていると思う」と言う通り、リリックの説得力は増しているし、きれいごと無用なChehonらしい、とにかくグサグサと"刺さる"言葉が連発。
 
「ふだんから刺さる言葉を探してるんです。結局、みんなグサッと芯のある言葉に惹かれるし、それを求めてる。それやったら、歌の頭からケツまで"グサグサグサ"にしたら最高すよね。単純な発想なんですけど、それは常に心がけてる。けど、完璧にはいかないのも事実。全部"グサ"やったらめちゃくちゃな内容になるでしょ。話の流れがあってこその"グサ"やったりするから、持っていき方も大事」
 
 つまり、ストーリー性や感情の波を作るということか。その点においては「SABAKI〜Caan Friend Again〜」がすごい。裏切った人間について淡々と語るのだが、その怒りの表現力が迫力モノ。
 
「『お前に未来はないだろう』って、"だろう"を付けてあげたのが俺のやさしさかな(笑)」
 
 全編通して「どうも同じ言い回しが多い。中身が一緒」と自分に厳しいChehonだが、何を言うか、彼の綴る生き様からは味わい深い人間性がちゃんと見えてくる。だからこそ、そこで紡がれるストーリーには、色彩が生まれ、奥行きが生まれ、独自性を帯びてくる。彼の歌に感情移入できるのは、そのせいかもしれない。
 
「自分にしか作られへんようなストーリーは大事ですよね。映画監督でいうたら、その人の得意分野があって、そこで勝負するみたいな。スピルバーグはスピルバーグの世界があるけど、毎作品テーマは違うでしょ。だから俺やったら、自分の芯となるもの、自分のスタイルっていうのはあって、けど毎回アルバムのテーマは違うっていう。そこを確立したいですね。これは、まだまだ序章なんで」
 
 さて、『Road to island』の物語を締め括るのは、その名も「Sayonara Japan」。ジャマイカ在住のGacha×Panchoによるハートウォーミングなオケに乗せて歌うのは、海の向こう=未知なる世界への想い。さよならジャパンって......やはり旅立つんですか?
 
「日本にいなくなっても応援してください(笑)。絶対やめずにどこかでDJやってるんで」。
 
「マイク一本でどこでもいったる」----それがChehonの根底にある精神。本作は、そんな"高み"をひたすら目指す彼の決意表明であり、これから続くだろう長いDJ人生における重要な序章作なのだ。
 

「Road to island」(初回限定盤)
Chehon
[Ariola / BVCL102-103]
 

「Road to island」(通常盤)
Chehon
[Ariola / BVCL102-104]

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