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ACKEE&SALTFISH
再鎖国論
 
Interview by Hajime Oishi / Photo by Masashi Sakurai
 

 前作『Bredren』から3年ぶりとなるAckee & Saltfishの新作『再鎖国論』。センセーショナルなテーマが設定された本作だが、ここには右だ左だといった単純な構図には収まることのない彼らの思想が表現されている。Saltfishいわく「僕たちにとっての序章」。その内容について話を訊く。
 
●ここ数年は「Reggae Breeze」(毎年夏に彼らが主宰するレゲエ・フェスティヴァル。今年は8/28に開催)のオーガナイズもあって、なかなか制作に入れない状況があったんじゃないですか。
Ackee(以下A):一回終わると達成感でゆったりしちゃって、つい波乗りしちゃうんですよ(笑)。これはマズイぞという思いは前からあって、(アルバムの)構想もあったんで、今回形にしようと。
Saltfish(以下S):でも大変だよ(笑)。金儲けのためだけでできるようなもんじゃない。
 
●それでも続ける理由は?
S:やっぱり地元に(レゲエを)根付かせたいっていうのはあるよね。お客さんにどうやって見せられるか。日本人ありジャマイカ人ありで、間口を広げて見せてるつもりなんですよ。ジャマイカ人に恩返ししたい気持ちもあるのと、レゲエを普及したい。そこは変わらないね。
 
●前作からの3年の間で変わったことといえば、お2人とも常に着物を着用するようになりましたよね。
S:ま、趣味だよ、趣味(笑)。もう普通になっちゃったし、これで生活できるんだということが分かった。
A:別に(着物を)復活させるために着とるわけじゃなくて、好きだから着とる。それだけかな。
S:アメリカ人、イギリス人、中国人、それぞれに自分のプライドを持つべきだし、それを捉え直すべきだと思う。僕たちは自分たちのことしか歌わないけど、日本が優れていて他は駄目っていう思想じゃない。日本には日本が必要だって言ってる。簡単なことでしょ。勘違いする馬鹿は一杯おるけどね。今回のアルバムでも最初に言ってるけど、"言いたいやつには言わせとけ"ってこと。
 
●アルバムの構想はいつ位からあったんですか?
S:(09年2月のシングル)「櫻」が出る前ぐらいかな。先輩の家で話をしていて......その人は韓国人なんだけど......「日本はこれからどうしていけばいいんだろう?」「やっぱり再鎖国でしょ」「......それ!」っていう話になって。国は違っても、お互いを尊重しないといけない。優劣をつけた時点で話にならん。
A:"再鎖国"ってすごく惹き付ける言葉ではあると思うんだけど、経済をストップさせるとか国交を断絶させるとかそういう意味じゃなくて、まずは自分の心を鎖国させて、アイデンティティを見つめ直そうっていうこと。
S:アイデンティティの再確認。それを辿っていったんだよ。昭和、大正、明治......いい意味でも悪い意味でも、本当の日本はどこにあるのか。
 
●社会に対する違和感は、(2人が十代の頃に結成していたパンク・バンド)Rose Jetsの頃からあったんですよね?
S:うん、その頃は単なる悪ガキだったけどね。
A:パンクの時代は過激だったら何でもエエって感じで、建設的じゃなかったんだけど、この年になって"どうすればいいんだろう?"っていうことを考えるようになった。......ただ、ファーストを知ってる人は「前に戻ったね」って言っとる。「(誰が)向こう見ず」(1stアルバム収録曲)みたいな感じが。
 
●トラックはダークでハードコアなもので統一されてますね。
S:そう、ポップじゃなくてクールな感じ。メインテーマがポップじゃないからね(笑)。
A:アルバムのために用意したトラック。そこに歌詞を乗せていった感じだね。
 
●DJ Yutakaさんがトラックを提供してますね。
S:Yutakaさんはね、すごい長い付き合い。(前作収録の)「御法度」のリミックスもお願いしてたんだけど、今回もお願いして。Yutakaさんが作ってくれたトラックには槌で刀を打つ音は入ってなかったんですよ。刀匠に録らせてもらった音を僕が勝手に付けちゃった(笑)。どうしても槌の音でトラックを作りたかったから。Yutakaさんも「鳥肌が立った」って言っとったよ。
 
●今回は政治的なトピックも多いので、言葉のチョイスにも気を使ったんじゃないですか。
S:いや、全然気を使わんかった(笑)。
A:確かに「暴露」なんかはそうだけど。
S:あ、あれはちょっと含みを持たせとる。そのまま言っても格好よくないし、聴く側が感じてくれれば。
 
●テーマは具体的だけど、そのまま言ってしまうと......。
S:作文になっちゃう。そのまま言うよりもそのほうが詩的なわけで。
A:あとは韻で合わせていった。リリックの作り方は今まで通り。
S:(目の前のコップを見ながら)これについて書くのならば書くし、机についてならば、どう机についてどう語るか。何でもそういう風に考えるし、それが仕事だから。
A:空襲の歌(「名古屋大空襲65年目」)なんかは、新聞に載っていた空襲の体験談を読んですぐ歌にした。
S:その記事に「どんな形でも後世に残したい」と書いてあったんで、「だったら歌にするしかねぇだろ」と。それでその日に作って、その日のうちにYouTubeにアップして。
 
●では、今後の世の中がどう変わっていったらいいと思う?
A:日本に生まれた日本人として自分らしさを取り戻せたらいいと思う。今の状況が全部悪いって言ってるわけじゃないんだけど、残したほうがいいものはあるから。自分がやってきた根底の部分は大切にしたほうがいいんじゃないかと。
S:今の日本だと、そういう生活をしにくくなってるのは確かでしょ。今回のアルバムにしても誤解は招くと思うんだけど、聴いてもらえれば分かってもらえると思うんだけどね。
 

「再鎖國論」
Ackee & Saltfish
[錦Communications / NSKR-504]

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