Photo & Text by SIMON "MAVERICK" BUCKLAND
●先月のリポートで書き忘れていたことがある。僕のかつての親友Devon Russell(13年前に亡くなってしまった)の息子Bruce 'Ras' Russell Londonがレゲエ・シーンに登場したのだ。Devonのことは家族で時折懐かしく思い出しているが、彼の息子には面識がなかった。そんな中BruceからFacebook経由のメールが突然、僕宛に届いた時には本当に驚いた。BBCへの音楽を作曲し、詩の朗読イヴェントで演奏、ワークショップを開催、2008年には友人のSpanna Dread and Shaka Pと共にNehemiah Soundsを結成するなど、文中で彼はレゲエ音楽界でどのような活動しているかを熱心に綴っている。Rasによれば、彼らの目的は、音楽を発展させ、教育に力を入れ、いわゆる"Love Culture"を世界に広めることらしい。また、彼らのファースト・アルバム『Fistful Of Dubs』は、生前Devon Russellの音楽を多数リリースしたUptempo Recordsより去年発売されている。かなりヘヴィなベース・ラインに、打ち込み系のリディム、エコーがかかった浮遊感のあるヴォーカルなど、彼らの音楽は万人受けするものではないが、リリックは方向性がしっかりと定まっている。それに労作であることが良く伝わってくる。Facebookでは彼らはかなりの人気者のようなので、色々とうまくいっているのだろう。エレクトロ・ダブ・ユニット、Profound Fairshare Unity Sound Systemとのコラボがメインのセカンド・アルバムもほぼ完成しているらしい。『Repatrilove』というタイトルの次作は10人のヴォーカリストをフューチャーしているというので興味深い。プロモ用音源を事前に入手できればいいのだが。とにかく連絡をくれてありがとう、Bruce!
●5月にはラップスターのNasとDamian 'Jr. Gong' Marleyの共作『Distant Relatives』がいよいよリリースされる。発売日が数カ月も延期され、様々な噂や憶測がネット上で飛び交っていた問題作を遂に聴くことができるのだ。アフリカを起源とするヒップホップとレゲエの融合がどれほどエキサイティングなものなのか非常に楽しみだ。
●Beres HammondのUKツアーは大成功に終わったようだ。僕の"スパイ"によれば(彼らからの情報はいつも信頼できる)過去2、3作のアルバムの出来がイマイチだったにもかかわらず、ソウルフルなヴェテラン・シンガーはその力量や魅力を一切失っていなかったようだ。Beres HammondはBuckland家にとっていつまでも素晴らしいシンガーであり続けるだろう。
●『Dragon's Den』(『マネーの虎』UK版)への登場でRegge Reggae Sauceが有名になったかつてのCoxsoneサウンドマン、Levi Rootsがピンチに陥っている。Leviの古くからの友人でNotting Hill Carnivalにおいて17年間もLeviと一緒に屋台を出していたTony BaileyがRegge Reggae Sauceは自分の発明だと主張し、Leviに対して300,000ポンドの損害賠償を求める裁判を起こしたのだ。LeviはBaileyに彼がTV番組に出演することは伝えていたが、番組のご意見番にはそれが彼の祖母から伝えられたレシピであるとウソをついたという噂が流れている。また、LeviはBaileyに用途不明の"大金"(金額は明らかにされていない)を支払ったという説もある。裁判沙汰になることはレゲエ・ビジネスではそれほど珍しいことではない。たとえば数年前には、Mighty Diamonds の曲(Leroy Sibblesのベースラインを利用してJackie Mittoが作ったStudio Oneリディム使用している)をMusical Youthがアレンジしたヒット曲「Pass The Duchie」に関わる複数の権利者が裁判で争った一件があった。ただ、今回は同じ裁判沙汰でも食品が関係している初のケースだろう。Leviは僕が1984〜5年の間、Brixtonに住んでいた時以来の友人だ。彼がこのもめごとからあまり深い傷を負わずに脱出できることを願っている。
●以前のリポートでも触れたジンバブエでのSizzlaのライヴが、彼にとって重大な懸案事項になりつつある。ジンバブエからの情報(信ぴょう性が決して高いとはいいがたい)によれば、Sizzlaは出演料のかわりとして土地を取得することに合意しており、地方の土地管理官が政府上層部からの指示で彼のための土地探しを開始しているというのだ。また、彼には農場がすでに用意されているという情報もある。Sizzlaのスポークスマンはそのような主張を全て否定。さらにSizzlaが犯したことのない犯罪によってジャマイカ政府から逃げているといった事実もないと断言した。スポークスマンによれば、ジンバブエはガーナや南アフリカなどをまわるアフリカ・ツアーの一環で、ジンバブエ側から発信されている情報はすべてメディアがSizzlaに犯罪者としてのイメージを植えつけるため、でっちあげたものだと主張した。Sizzlaはまず僕にきくべきだった。政府高官たちのみが富み、そして太っていく間、パンの耳だけをかじりながら生きていかなければならない人々のための無料ライヴ以外には、ジンバブエでは決してライヴを行ってはならないということを。
●4月に起こったアイスランドの火山噴火により空中に浮遊した火山灰がヨーロッパの航空網に混乱をもたらした。多数の旅行客やビジネス客が足止めを食らい、彼らはどんな方法でもいいから帰路につこうと大変だった。緻密に組まれたミュージシャンのツアー・スケジュールももちろん影響を受けた。フランスに拠点を置くエレクトロ系サウンドシステム/プロダクション・チームのStand-Highはこの影響によりメキシコでのフェスティヴァルへの参加を断念した。だた、彼らにとってメキシコに発つ前にフライトのキャンセルが始まったことが不幸中の幸いだったといえるだろう。フライトのキャンセルは、Stand-Highのようなヨーロッパの若いレゲエ・リスナーにとって伝説的なアーティストであるEek-A-Mouseにとってさらに深刻な影響を与えた。彼は、アムテルダムからアメリカに戻れなかったためにDare群での裁判に出頭できなかったのだ。その裁判は、彼が2008年8月に起こした情状酌量余地のない誘拐と、情状酌量余地のあるレイプに関するものだった。高等裁判所の裁判官Jerry TillettはMouseが出頭しなかったことに激怒し、Mouseの弁護士Phillip Hayesが申し出た60日間の裁判延期のリクエストを却下。さらにMouse(本名Ripton Hylton)の身柄の拘束を命令したのだ。僕はこのケースに関して2つの疑問がある。1つは証拠がそろっていながら、なぜ当局はHyltonを拘置所に拘束せずに18カ月も裁判を先延ばしにしたのかということ。もう1つは、アメリカの司法界が反ジャマイカ人風潮に傾いている今、なぜMouseがアメリカに戻ってこようとしているのかということだ。たとえ有罪だとしても、もし僕が彼だったら、帰国しようとは思わないだろう。Mouseよ、アムステルダムに留まるべきだ!
Till Next Time, Folks......................
(訳/Masaaki Otsuka)