Raw Singles
Text by Takanori Ishikawa
1. Vybz Kartel / People's Cry (Tad's)
ゲットーの人々が苦境にあえいでいる現実を、具体例も交えてDJ。メロディアスなフロウでオートチューンも効いています。80年代ポップ風のリズム・パートが特徴の "Love & Joy" 使用。オリジナル・トラックでツボを心得たミックスも最高。
2. Bounty Killer / Social Responsibility (Greensleeves)
ライヴでのMCをそのまま使ったイントロで、Kartelの「Go Go Club」を批判。そのイントロ後には富裕層(政治家含む)を厳しく攻撃するDJを展開。彼等の責任を問うタイトル通りの内容です。ド迫力でうねるベース・ラインと畳み掛けるドラム。オリジナル・ジャグリン "Clean Sweep"。
3. Macka Diamond & Unicorn / Think Bout Mi (Notice)
今のところ、この曲のみに使われているオリジナル・トラックはシンプル&ダンサブルな仕上り。「あうんの呼吸」で聞かせる男女DJのコンビネーション。芸達者振りを存分に披露しながら.苦労が多い恋模様を歌っています。
4. Ding Dong / Responsible Parent (Notice)
こちらもオリジナル・トラック。ミディアム・テンポのR&B色の強いサウンド。よくドライヴするベース・ラインと小刻みなドラムのアンサンブルが適度なスピード感を演出。親として責任感がない人間を攻撃。「責任持てないなら子供なんて作るな」というチューン。
5. Busy Signal / Love Money (Stainless)
オレは必死に、まともに働いて、大金を稼ぐぜって内容のリリックス。独特のタイム感でライミング。見事です。オリジナル・ジャグリン "Stainless"。ミニマルなサウンドで延々と引っ張る構成が激クール。無駄の全くないシャープな音作りです。
6. Vybz Kartel / We Loving It (Stainless
こちらはHip Hop系のリズム・パターンとリズミカルなシンセ・ストリングスのリフを組み合せたトラック "Duffle Bag"。彼女は最高だ、愛してるぜって内容を歌うようなフロウも交えてスウィートにDJ。一種の女性アンセムでもあります。
7. Mr.Vegas / Dance Floor (Don Corleon)
オリジナル・ジャグリンの "Pulse"。ちょっとハイエナジー風味もある快速ダンスホール。今回もいなたい"ピコピコ"鳴るキーボードをミックスしたハイプでキャッチーなサウンド。Vegasも最初からハイテンションに弾けるダンス推進ソング。
8. Twin Of Twins / Dem A Try Bait Me Up (Greensleeves)
KartelとMovadoが抗争の真っただ中にあった時に、それをチャカしたリリックスで人気を博した曲がシングル・カット。メリハリの効いた90年代中頃風のトラック使用。B面には例のDudusネタ、「Which Dudus」を収録。
9. Wasp / Cry Fi Dem (Worrior Music)
不公平なシステムの為に苦闘を続けるゲットーの若者、人々。その嘆きを代弁するかのように切々とDJ。抑えめな表現とリズミカルなライミングが良いですね。アコースティック・ギターのメロウな響きが哀愁。キレの良いリズム・パートのオリジナル・トラックは地味ですが中毒性高し。
10. Khago / Love Stomach (Tad's)
"Classic" 使用。同トラック使用曲の中でもこの曲がジャマイカではFMでヘヴィ・プレイされているようです。塩辛い歌声で、しかし若々しくピリリとシングジェイ。愛し、愛されている彼女と共にこれからも有意義に生きて行こうという内容。
11. Queen Ifrica / Nine Out Ten (Tad's)
ヘヴィな2010年型ルーツ・トラック。キーボードがメロディアスに全体を彩っているのが今風ですね、落ち着いたバック・コーラスを従え、堂々たるシングジェイで男性を批判。「ウソばかりついて欺くのはいい加減にしろ」ってチューンです。
12. Mikey Spice / Walk The Streets (Joe Fraiser)
これは渋いところを持ってきましたね。Derrick Harriottのロックステディ名曲をカヴァー。オリジナルと趣きを異にしているのはMikeyのバリトン。これが良いんですね、また。グルーヴィーなバックの演奏もピッタリと寄り添っています。
13. Alborosie / Stepping Out (VP)
David HindsをフィーチャーしたSteel Pulse名作リメイク。バビロンを倒す為に立ち上がって闘え、というメッセージがこめられたリリック。ヘヴィに躍動するワン・ドロップに唸るホーンズ、ヴォーカルにユニゾンするベース・ライン等、サウンド面も文句無しの出来。
14. Winston Francic / Tracks Of My Tears (Soul Love)
Studio One時代から活躍を続けている超ヴェテラン・シンガーの新作。言わずと知れたSmokey Robinsonのクラッシック・カヴァー。オリジナルの良さを生かしたバッキングもいい感じ。衰え知らずの歌声と歌唱が何しろ素晴らしいのでチェックしてみてください。"何とかラヴァーズ"とかいう類いのものよりは全然良いと思いますよ。