BARBIE JAPAN
Interview by Hajime Oishi / Photo by Kitetsu Takamiya
Hemo+Moofireが送り出す注目のニューカマー、Barbie Japan。彼女が取り組むのは、トリニダード・トバゴのインド系住民の間で親しまれてきたインド調ソカ、チャットニーだ。そんな彼女のデビュー盤『I Love Trini』はトリニダードへの思いが凝縮された内容となった。プロデューサーのHemoと共に話を訊いた。
「小さい頃からモダン・バレエをやってたんですけど、高校を卒業したあたりからジャズやソウルのダンスを始めて。その後アフリカン・ダンスをやるようになってから、ソカとかカリブ海の音楽に触れる機会が多くなったんですね。ソカを初めて聴いた時に"何コレ?"っていう驚きがあって、それからソカ一直線です。
大きかったのはトリニダードに行った時の体験。実際にカーニヴァルに参加して......自分のなかの世界観が変わるぐらいの衝撃でした。向こうでデストラ(註:ソカのトップ・シンガー)のショウケースを観て、あまりの感動で涙が出てきちゃったんです。その時から"歌を歌いたい"っていう気持ちが強くなってきたんですけど、でも、どうやっていいか分からなくて。だから、歌を歌うようになったのはHemoさんと出会ったのがきっかけなんです」(Barbie Japan)
「ジャンルを広く伝えていくにはDJの力だけじゃ弱いと思うんですよ。それで、07年の秋に"とりあえず1曲作ってみよう!"ってことで無計画にトリニに行っちゃったんです。その頃から私もチャットニーにハマり始めていたので、"こういうのができたらいいね"とは話してましたね」(Hemo)
「最初はチャットニーも知らなかったんですよ。でも、私はもともと声が高いほうだし、もともとアフリカン・ダンスをやっていたので、タッサ(註:トリニダードのインド系打楽器)の音に惹き付けられたところもあったんですよね」(Barbie Japan)
「まずは"実際にトリニダードに行っていろいろ感じてみよう"っていうことですよね。"向こうのカルチャーを学んで、向こうの水を呑んで食べ物を食べないと曲なんて出来ないよ"と。今回の『I Love Trini』は、(完成するまでに)2年半かかりました。Barbieはまだまだ発展途上ですけど、向こうに行くたびに(曲を)作ってたらいつの間にか溜まってた感じなんですよ」(Hemo)
「今回のアートワークに関しても、トリニダードの良さを出しつつ、Barbieというアーティストのことも伝えなくちゃいけないんで、かなり悩みました。ちょっと間違えると、トリニダードのこともソカのことも私のことも誤解されちゃうので。
チャットニーやソカを広めたいという思い?......うん、強いですね。トリニダードの音楽自体まだまだ知られてないと思うし、トリニダードという国にこういう音楽があることをひとりでも多くの人に知ってもらって、なおかつ好きになってもらえたら嬉しいです」(Barbie Japan)
この短い文章でどこまで伝わるか分からないが、Barbie JapanとHemo+Moofireは真剣である。今回のアルバムの1曲目は「I Miss You」というメロウ・チューンだが(作曲はソカのトップ・ソングライターにしてロード・キチナーの息子であるカーネル・ロバーツ)、この曲は先頃急死したとある日本人に捧げられている。ココさんというその日本人女性はトリニの文化を日本に伝えることを夢にしていたのだが、Barbie JapanとHemoはその夢を現実のものとするために日夜奮闘しているところだ。
"I Love Trini"
Barbie Japan
[Bacchanal 45 / BACD-013]