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MUSIC TO READ
PICKUP BOOKS - II - 渋谷ゆり

Text by Masataka Ishida
 

 『Riddim』07年5月号「Photo Issue」にも参加していた写真家、渋谷ゆりが、写真と文章で綴る旅の記録『Under Exposure Journal』を出版した。ニューヨークやジャマイカをはじめ、世界各地で撮影された写真には、レゲエやスケートボードに関するものも多い。
   
 初の1枚、#01に登場するのは、クイム・カルドナというスケーターが、消火栓の上を飛んでいる瞬間を捉えた写真。これは渋谷ゆりが大学生の頃、96年に初めて訪れたニューヨークで撮影したもので、いきなりカッコ良い。構図とかシャッターチャンスがばっちりだ。でもそういうことを超えたところに何かあるなと思ってエピソードを読むと、やっぱり。素敵な偶然の出会いが、この写真に真実味と奥行きを与えていたのだった。
 
 この部分は、ウェブ媒体『DEFRAG』に「Report New York City 1996」として公開されているので検索してチェックしてほしい(http:// www.mediadefrag.jp)。
 渋谷ゆりは、以後毎年ニューヨークに通うようになり、知り合ったスケーターたちのその後を追い続けた。自分でも日常的にスケートに乗ってニューヨークの街を移動しているとのこと。ニューヨークでの写真は特に、スケートボードからの視線で撮ってる感があってユニークだ。
 
 続く#02は、サンフランシスコでジン(D.I.Y.で作った少部数の作品集)を取り扱っている本屋。#03はネパールで出会ったミルク・ババ。#04はキューバ、#05と#06はジャマイカ、#07はエチオピアと、それぞれの場所で撮影された写真とエピソードが出てくる。そんな感じで#41まで続く。このうち計10話の舞台がジャマイカ。渋谷ゆりは今まで5回ジャマイカに行っているそうだ。
 
 アール・チナ・スミス、リコ・ロドリゲス、ラス・マイケル、ココ・ティ、オーガスタス・パブロのブッシュ・ドクターだったドクター・バガなども登場する。キングストンのダウンタウンでストレンジャー・コールにばったり会って写真を撮らせてもらい、そこでグラッドストーン・アンダーソンの連絡先を聞き出して会いに行ったりもしている。
 
 キングストンの街では、ルート・タクシーなども乗りこなしつつ、ひとりで行動することが多いのだという。それでも大きなトラブルに見舞われたことはない。キングストンに行ったことがある人なら判ると思うけど、これはもう単に運が良いというレベルの話ではない。ジャマイカでは、その場その場できっちりと人間関係を作れるかどうかでトラブルに巻き込まれる確率が大幅に変わることを、ぼくは経験的に知っている。渋谷ゆりは、きっちりと人間関係を作ってから写真を撮っているようだ。
 
 ペルーでは、クスコやマチュピチュのような世界遺産にも行っているが、そういう話はスルーして、海岸部の漁村でサーフィンした話になり、マリでは、トンブクトゥという世界遺産も訪ねたらしいが、それもスルーして、バマコ郊外の丘にあるラスタのコミュニティに行った話を綴っている。
 
 ブラジルの話で驚いたのは「リオ・デ・ジャネイロに滞在中、姿を見ない日はないくらいあちこちでスケーターを見かけた」というくだり。ぼくもリオに行ったことがあるけど、スケーターの存在にはまったく気づかなかった。
 
 同じ場所を訪ねても、人によってまったく違う風景が目に映っている。既成の価値観に惑わされずに、自分の目と感覚を大切にしながら旅をして、写真を撮影している姿が本全体からありありと浮かんできて大いに共感したのだった。
 
 この記事のために2時間ほど本人と話す機会があり、インドやネパールのババはジャマイカのラスタマンに似ているという感想が一致。やっぱりそうだよねと思った。
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"アンダー エクスポージャージャーナル"
渋谷ゆり 著
[Trasworld Japan]

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