MUSIC TO READ
PICKUP BOOKS - IV - エイコ
Text by Hajime Oishi / Illustraite by kads MIIDA
2001年から横浜で開催されているルーツ・レゲエ・ダンス「レゲエ夜」は、今年で9年目を迎える長寿ダンス。その主宰者Eikoによる、ユニークなルーツ・レゲエ読本『レゲエ夜手帖』が刊行。「レゲエ夜」の歴史からルーツ・レゲエの魅力までを丁寧に追った必読の内容だ。
80年代末、横浜は本牧の伝説的レゲエ・クラブ、Zemaに足を踏み入れたことをきっかけにレゲエの魅力にハマり、90年代初頭からは同じ横浜のレゲエ・クラブであるSuzyの運営に関与。99年の同店閉店までは店主として横浜レゲエ・シーンをつぶさに見つめてきたEiko。彼女を中心にして2001年からスタートしたルーツ・レゲエ・ダンスが「レゲエ夜」だ。
「単純に言えば、"なかったから始めた"っていうことですよね。例えば、LKJ(リントン・クウェシ・ジョンソン)が横浜でライヴをやっても、東京ほど(客が)入らないんですね。なんでだろう、こんな素晴らしいのに!って思ってたし、その魅力を伝えたいっていう思いは常にあって。やっぱりルーツ・レゲエは本質的な部分だし、そこは忘れないでいたいな、と。あと、みんなと同じことやっててもつまんないでしょ(笑)?
だから、もし「レゲエ夜」みたいなことをやってる人が他にいたら、そこに遊びに行くだけでも満足できたのかもしれないけど」
スタートから8年目を迎えた頃には開催100回を突破。今回刊行される『レゲエ夜手帖』は、このダンスに至るまでのEikoの道程や彼女を取り巻く様々な人間関係・出来事を描いたエッセイに加え、Mighty Massaによる感動的なジャマイカン・ミュージック・ストーリー、各地のルーツ系サウンドシステムの詳細な解説/紹介(若いサウンドマンは必読だ)、「レゲエ夜」クルーによるディスクガイドなども収められており、「レゲエ夜」を知らない人でも興味深く読み進められる内容となっている。興味深いのは、憲法九条に対して言及する箇所があったりと、単なる音楽紹介本に終わっていない点。
「Amazonで"まず自分のルーツについて考えた"っていうレヴューを書いてくれた人がいたんですけど、読んだ人がそう感じてくれるような本を作りたかったんです。私にしても、子供の頃から"何かおかしくない?"と思ってたことが、ルーツ・レゲエと出会って確信に変わったんです。そこを共感してもらえたら嬉しいし、レゲエやダンスホールを聴いているのならば、そういうことに興味を持ってもいいんじゃないかな、とは思う。やっぱりもともとレベル・ミュージックなわけだから」
とはいえ、「ま、自分たちが楽しみたいっていうのが基本だし、それは今も変わらないけどね」と笑うEiko。「レゲエ夜」の今後に関しては「ジワッと続けていきたいですね。20年も経てば年金生活に入るメンバーもいるし(笑)。60、70歳になっても続けられたら最高だよね」と話すが、「レゲエ夜」ならばそれも不可能ではないだろう。
なお、本書に先駆けてエクスクルーシヴ・トラックも収録されたコンピ『レゲエ夜 -Give Thanks-』(アール16やランキン・ジョー、Yoyo-CやMighty Massaら参加曲を収録)もリリース済み。『レゲエ夜手帖』のほうにはそれらの楽曲を使用したミックスCDも付いている。これらのCDを聴きながら、毎月第一金曜日、横浜EX Bodegaで繰り広げられている「レゲエ夜」の濃厚な空間に思いを馳せてみるのもいいかもしれない。
"レゲエ夜手帖"
Eiko著
[Todoroki]