Riddim | BOOM BAP #25 No.326

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BOOM BAP
THE LONG WAR
　
　Public EnemyのChuck Dはかつてヒップホップのことを"黒人のCNN"だと形容したが、それはQueensのラップ・デュオCNN（Capone & Noreaga）が結成されるかなり前の話だ。Capone（本名Kiam Holley。Queensbridge出身）とNoreaga（本名Victor Santiago。LeFrak City出身）は服役中に出会った。そして釈放後に伝説的なギャングの名前を冠して活動を始めた。1996年にPenalty Recordsと契約しデビュー作『The War Report』の制作にとりかかったのだが、Caponeはアルバム完成前、執行猶予中に武器を所有していたという理由で、また刑務所に送られてしまう。アルバムは50万枚を売る大ヒットを記録。ヒップホップの傑作として認められるようになった。
　
　それから13年後、RaekwonのIce Waterレーベルと契約したこのデュオは、デビュー作の続編『The War Report 2』の制作にとりかかっている。ニュー・シングル「Thug Planet」のプロモーション・ヴィデオの撮影のため、LeFrak Cityに向かう直前の２人に話をきくことができた。
　
●なぜ、新作が『TWR2』なのか？　傑作と呼ばれるアルバムに、あえて続編を作る理由は何だろう？
Noreaga（以下Ｎ）：確かに、オレはそのことをずっと考えていた。ただ、今のヒップホップにはこのアルバムが必要だと思うのさ。犬が家の中に閉じ込められて玄関のドアをひっかいているようなものだ。ヒップホップの現状がまさにそのような状態だと思う。ドアを開けさえすればもの凄いエネルギーで外の世界へ出ていくんだ。
Capone（以下C）：そのエネルギーをオレらは持っている。ドアは必ず開くさ。
N：『The War Report』を作った時に傑作と呼ばれるようになるとは全く思わなかった。Punについてよくきかれるけど、彼は単なる友達で"伝説的な男"とは思っていなかったな。それにオレたちが初めてスタジオで録音したのがあのアルバムだ。その結果が...
C：今でもリスナーの支持をしっかりと集めているのさ。
　
●CNNを結成した時が初めてのスタジオ・ワークだったのか？　また初めてラップを始めたのがCNNだったのか？
C：初めてラップをやったのがCNNさ。彼はPapiでオレはKiamだった。徐々に共にラッパーになろうと考えだしたんだ。服役中に「オレたち、将来Capone & Noreagaというデュオになろう」なんて計画はしていなかったよ。
　
●新作はどう？
N：実は『Report The War』というタイトルにして、デビュー作の曲を全てリメイクしようと思っていた。でも収録曲の曲名をアルバム･タイトルのようにオリジナルと逆にしようと考えていた。例えば「Illegal Life」は「Life Illegal」のように。でもそのアイディアはやめたよ。
C：最初はいいアイディアだと思ったんだが、オリジナリティに欠けるだろ？　オレたちはオリジナリティで勝負しているんだ。かつての戦争は「Desert Storm」だったが、今ではイラクとアフガニスタンで戦争をしている。戦争も以前とは性質が違う。イラクでの戦争と「Desert Storm」ではオレたちが受けている印象が違う。
N：しかし、戦争であることに変わりはない。
　
●ニューヨークのヒップホップ・シーンは他のエリアのそれと比べてどう？
C：ニューヨークはニューヨークであり続けるよ。でもCNNの新作がシーンを変える。なぜだか知っているか？　ニューヨーカーは"本物"を見極める目を持っているからな。
N：A.KeysとJay-Zがニューヨークのシーンを活気づけたのさ。Fat Joeのリリックにあるだろ？（iPhoneでFat Joeの曲をプレイしてビートにのせて頭を振りながら）Joeは好きだな。
　
●『The War Report』をリリースした当時、ニューヨークのヒップホップは危機に瀕していた？
N：その通りさ、あの時代のちゃちなダンス系のクラブ・ミュージックのことを、オレは本当に嫌いだった。
C：オレたちの音楽はそれとは正反対だからな。ま、オレは今、このアルバムを発表できることを非常に楽しみにしている。デビューから今までの経験、例えば、ライヴやスタジオでのレコーディングなどをこのアルバムに活かすことができた。前作はオレが裁判所に出頭しなければいけないなどの理由で、録音現場から離れなくてはならいことがたくさんあったからな。
N：'96年当時の気持ちを100％維持しながらアルバムを作ったよ。でも今回はデビュー当時のような困難な状況ではなかったから制作は順調だった。
C：経済的に余裕があることはいいことさ。それに今のオレたちは自分たちのヒップホップにおけるポジションを理解している。そのことがアルバム制作をスムーズにした。デビュー当時はほとんどの人々がオレたちのことを知らなかった。オレたち自身だって、PapiとKiamとしては何から何まで分っていても、CaponeとNoreagaというデュオとしての可能性は未知数だった。もし失敗したらすぐに忘れ去られてしまっただろうしね。でも今は違う。オレたちはCNNだ。いいニュースを知らせてやるよ。