Photo & Text by SIMON "MAVERICK" BUCKLAND
Michael Prophet
Greetings Friends,
●コカインの購入および流通の容疑で留置所に入れられているBuju Bantonのニュースは、このコラム執筆時点、依然としてレゲエ界のホット・ニュースだ。音楽業界は活発に彼を支持しているようだが、そんなことでアメリカの裁判所の判断が変るはずもないだろう。この"事件"がどのような結末を迎えるのかは、麻薬取締局担当官の宣誓供述書の正確さに依存している。皮肉なことに彼の最新アルバム『Rasta Got Soul』はGrammy賞のレゲエ・アルバム・カテゴリーにノミネートされ、そのセールスもこのスキャンダル報道がエスカレートする度合いと比例するように好調だそうだ。世界中のグッドラックを集めてBujuへ贈るべきだろう。彼はそれを必要としているのだ。
●2010年1月の悲しいニュースは、疲れ知らずのJesus DreadことVivian 'Yabby-U' Jacksonが動脈瘤破裂により63歳で死去したことだ。彼は常に病気と闘っていたが、強い意志と信念によって最もヘヴィで記憶に残るルーツ音楽をレコードに刻んだ。彼の音楽は讃歌のようで、預言的でもあり、そして雷のように衝撃的で力強かった。Wayne Wadeの12インチ「Jah Vengeance」は、彼の音楽を象徴するような1枚だ。Jackson自身による「Fire In A Kingston」、Willie Williams「Armagideon Man」、特徴的なTommy McCookのホーンとTubbysによるヘヴィなダブなど、ルーツ好き輩の血を騒がせるに十分な数々の曲を彼は残していった。僕は、彼の音楽がレゲエ史の中にそびえ立つ金字塔として認められたことを彼が知って、この世を去っていたことに救いを感じる。Vivian Jacksonはオリジネーターだったと断言できると思う。彼の素晴らしい音楽にまだ触れたことがなければ、1997年にBlood and Fireから発売された2枚組のCD『Jesus Dread 1972-1977』を薦める。
Dennis Brown
●以前は『The African and Reggae Beat』誌と呼ばれていた『The Beat』誌が最終号を発行した。僕の頭が髪の毛でフサフサしていた頃(!)、アメリカでレゲエの最重要情報源として君臨していた雑誌だった。Californiaが拠点だった『The Beat』は、音楽学者(またはMarley学者)のRoger Steffensがその地位を確立し、レゲエの情報に飢えていた当時のアメリカのファンの要求を満たしていた。創刊して間もない1980年代には、僕のところにも同誌が定期的に郵送されてきていた。1985年頃にはLondonに来たMinister Of Information ことCC Smithとも会ったこともある。たまたま見た同誌のウェブサイトに、彼女は「近年の編集チームの情熱は、新しくて面白いクリエイティヴな音楽(特にレゲエ)の少なさと同じように冷めていった」と記している。要するに音楽がつまらなくなってきたので、音楽に対して書く必要がなくなったということだ。今ではネットの普及により世界中の情報が簡単に手に入り、音楽の聴き方や売り方も同誌の創刊当時と比べるとずいぶん変化した。『The Beat』はその使命をかなり前に果たしており、最近は多少豪華であるフツーの音楽誌になってしまった。その結果、レゲエ・リスナーにとってはつまらない雑誌だったかもしれない。『The Beat』の休刊は止めることができなかったかもしれないが、30年ほど前にこの雑誌を発刊した当時の編集チームが、ジャマイカ音楽の幅広い認知に果たした役割に敬意を表したい。
●最近、Rennesで開催された素晴らしいパーティに行ってきた。友人のMatmutが入念な改修をしたRoots Ataoサウンドシステムでレコードをまわしてきたのだ。轟くヘヴィな低音にスウィートな中域、そして鋭い高音に観衆はワイルドに反応。最後の3時間は熱狂的だった。ちょっとしたセレクタ・バトルになり、重量級のチューンが次から次へとターンテーブルにのせられた。セレクタ兼プロデューサー、Stand Highによる UK Nu-Rootsにインスパイアされたフランス制作のダブに加え、Wayne Wade「Jah Vengeance」 (故 Yabby-Uへのトリビュートとして)、 Dennis Brown 「Life's Worth Living」、Earl Sixteen「African Tribesman」、Desi Roots「Weedfields」、Freddie McGregor 「Sergeant Brown」、 Michael Prophet「Let Not Your Heart Be Troubled」などが特に熱狂的に受け入れられた。満場一致でその夜のベスト曲に選出されたのはBeres Hammondの「When」だった。おそらく曲がかかったタイミング(デジタル時代のレゲエ数曲のあと)とオンリー・ワンの情熱的な絶品ヴォーカルが観客を強く動かしたのだろう。これはBeresのどちらかといえばマイナー・チューンだが、モダンとクラシックなスタイルが見事に融合された1曲。次回のセッションが実に楽しみだ。
(訳/Masaaki Otsuka)