THE 9MILES
SOMEDAY
Text by Takeshi Miyauchi / Artwork by Nakamura Amy
結成から早13年。メンバーの変遷を経て、充実の時を迎えつつあるThe 9miles。彼らが3作目となるフル・アルバム『Someday』をリリース。ヴォーカルのYasucoとリーダーの花田和繁に話を訊いた。
昨年10月の「Skaville Japan 2009」のステージで、久々に観ることが出来たThe 9miles。美しい歌声と力強いサウンドに気持ちよく揺れながら聴き入ったのが記憶に新しい──3年ぶり3作目となるフル・アルバム『Someday』は、現在の彼らの充実ぶりをそのままパッケージした作品だ。
花田:Ska In The Worldから出させてもらうことになって、時間を守るっていうこと以外はホントに自由にやらせてくれて。今の自分たちを思いきり発揮出来る状態で、それをそのままアルバムに残せたなって思います。
2007年にリリースされた前作『Belly Go-Round』でサポートを務めたドラムのZonitaとキーボードのかちむつみが正式にバンドに加わり、さらに自主企画のイヴェント「万感の思いを込めて」を定期的に企画し、そこでライヴPAを務めた大岩佳之もメンバーに迎え、バンド・サウンドとしての強化に手応えを感じているのだろう。彼らの音楽から感じられる心地良さは、ポップ・ミュージックのフィールドにそのまま置いてもしっかりと輝くはずだ。
しかしバンドとしての進化は表現の幅を広げる糧にしながらも、そのサウンドの奥にある頑なまま変わらない彼らの「核」は、本作でより強く表わされているように思える。それは、ヴォーカルYasucoの歌も同じく。彼女自身が紡ぐリリックからは意外なほどに力強いメッセージが飛び出すことがある。おそらく似たような内容の言葉を他のヴォーカリストが歌ったら、メッセージが強く伝わりすぎるかもしれないが、澄み切ったようなハイトーンの歌声がフィルターとなって、耳馴染みのいい表現へと昇華している。
Yasuco:たとえば綺麗なメロディがあって、そこに綺麗なトラックがのっても全然面白くないと思うんですよ。やっぱりそこは対になるものを作ってくれているから、私だけでは成り立たないし、そこに息を吹き込んでくれるのはやっぱりベースとドラムと上モノで。
花田:タイトル曲の「Someday(いつの日か)」や「宴」、あと「ツキが廻る頃」もすごく前向きな歌なんだけど、曲が出来た頃はバンドの状況としてはすごく悪い時で(笑)。これからどうしようか?っていうような時、僕はくじけちゃう傾向にあるんだけど、彼女はまったく逆で(笑)、こういう曲を彼女は作ってくるんですよね。デモの段階で何回も聴いて、その都度「明日もがんばろう!」みたいな気分になったり(笑)。がんばっていれば必ずいい時が来るよって、予言してるような......。
Yasuco:でも、実際その通りになってきましたよ(笑)。言葉に出すと実現するって言うじゃないですか?
花田:ほら、やっぱり女性は強いんですよ(笑)。
The 9milesが奏でるラヴァーズ・ロックは、力強く咲く野花のように、荒んだ時代を潤してくれるはずだ。
"Someday"
The 9miles
[Ska In The World / SIWI127]