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RING RING RING
 
【ポスト・グラフィティの再適応:質疑応答よりの巻】

質問:グラフィティはヒップホップ文化の四大要素のひとつだと思うんですが、音楽の影響についてはどのようにお考えでしょうか? グラフィティとヒップホップの関係について教えてください。
 
荏開津:当時のライターの人たちの話を調べる限りでは、ラップとグラフィティは関係あるっていう人と関係ないって言う人に分かれるんですね。四大要素とは、ラップとグラフィティとブレイキングとDJです。僕も四大要素について書いたことはありますが、ヒップホップというカルチャーの中に、ラップが音楽的要素としてあり、グラフィティがあり...ということです。ただそういう風に言ってしまうと、ヒップホップ・カルチャーとは一体何なのかという話になって非常に難しい。なぜ難しいのでしょうか? ひとつには、サブ・カルチャーというものは、資本主義と...とか、市場経済と...とか、そんな言葉を使わなくても、ある程度、不特定多数の人々に買ってもらうことによりどんどん定義がその当事者たちにとっても制御できないほど変わっていくからです。
 
そして、多くの場合、その人々っていうのは、若者だったりします。そうすると、ますます変化は激しくなるんです。18歳のときと25歳のときに考えていることは変わるのがある程度は自然であり、それが40歳になってもっと変わるのが自然だとも言えます。だが、それを頑強に否定することにより、生き方とする人がいます。この両者の間で何を言うことができるのか?ということが問題です。一体、何を言うことができるのでしょうか? 例えば、簡単に思いつくこともあります。ある程度以上の数のライターの人たちに調査をするとか、記録されているグラフィティの画像から、浮かび上がっていくことを連想的に記録していくこと、他のポップ・カルチャーとの関連を調べることです。
 
 僕の知る限りでは四大要素というのは、80年代から言われていたことですが、それよりもずっとあとになって、KRS1というヒップホップのラッパーとして歴史に名を残す人物が言ったことにより、彼が言ったことには誰も反論できる人がいないので(笑)、なかなか難しい。先程も言ったように、実際のライターには、関係がないという人、関係があるという人、いろいろな人がいると思うのですが、僕が友人たちのことも考えると、もっとも思わずにいられないのは、あるカルチャーと、ある年齢のときに出逢い、それを一生の生き方、としていった人たちについてです。他の人たちについては、僕も含めて、自分が楽しかったときのことを思い出すので、まずは十分に幸せと考えるべきではないでしょうか? なぜなら、それ以上のことは投資していないのですから。
 
質問:缶を扱うということはそんなに難しいことなんでしょうか? スプレー缶は工事現場とか、ホームセンターとかで簡単に手に入るものですが、それを使っていきなり書いてみるということは難しいことなんでしょうか。
荏開津:その話に関連しているかどうかわからないですが、アンドレアス・ベルグという人が、スウェーデンにおけるグラフィティについて文章を書いています。その中では、今日はあまり触れることはしなかったヴァンダリズム、非合法という側面、社会に対する破壊行為としてのグラフィティに触れています。スウェーデンに文化が入ると何でも中産階級化されてしまう、パンクが来たときもそうですが、そういった様々な文化に対してこの国は寛容であり、受け入れることでいろいろなものが生き続けていると言うんですね。ところがグラフィティはパンクとは違って、子供たちが直接的に非合法の活動をするものであって、あらゆるものが中産階級化されるスウェーデン社会にとってはいいテストだということを書いていた。彼は、グラフィティはヴァンダリズムであってそれ以外のものではない、という文章を書いています。
 
 何故こんな話をしたかというと、先程ホームセンターにスプレー缶は売っているものだ、とおっしゃいました。けれどもグラフィティ・ライターの間には昔から伝説として、グラフィティに使うスプレー缶は全部盗んだものでなければならないという考え方があります。ベルグが言っているのは、そうあってほしい、そうあるべきだ、なぜならグラフィティは本質的にヴァンダリズムだからだ、ということなんですね。 
ヴァンダリズムに関しては、ふたつあります。ひとつは、素朴な疑問として、ヴァンダリズムは禁じられてる、禁じられていることはやりたくなる、という人がいるということを知って、わたしはびっくりしたということです。やりたいことは、若い頃は、禁じられていようが禁じられていまいが一切関係ない、のが普通だと思っていました。もうひとつは、ヴァンダリズムに捉えられていると、グラフィティについての議論が進まない、と少なくともわたしは思っている、そうではない角度からまずは議論を進めたい、と考えている、ということです。
 
質問:ジャン=ミシェル・バスキアなどは後世に名前を残しているわけですが、そうではない人々、つまり無名の人たちの記録のようなものはあるのでしょうか?
荏開津:グラフィティの雑誌はいっぱい出ていまして、グラフィティを撮影してそれをいっぱい集めて、ほぼ自主流通で、というようなライター同士、あるいは当時者に近しい人たちの活動はあります。ライターの人たちのネットワークの規模は大きいです。ユニークな広がり方をしている。
 
質問:日本でやっているライヴ・ペインティングはグラフィティに連なる出自にあるんでしょうか? ムーヴメントになっているのでしょうか? 
荏開津:もちろん、そういったものが見れる場所もあります。ただ、ライヴ・ペインティングがどういうふうに評価されるべきかという批評はあまりないように思えます。
 
(これらは1/20、ヨコハマ・クリエイティヴシティ・センターにて行われたポスト・グラフティについてのトークの質疑応答を大幅に加筆して書かれました。当日の関係者、参加者の方に感謝します)
  
荏開津広
(One Hand Clappin')
これからずっと経って、未来の科学者が地層を発掘すると、世界中から、似たような色と形の判読し難いアルファベットの連続がビルディングにスプレイされていたことが発見されるのでしょうか?

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