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RHYMESTER
MANIFESTO
 
Text by Hiroshi Egaitsu / Photo by Makoto Okuguchi
 

 ライムスターがオフィスにやってきた! 取材に来た、答えた! オリコンのチャートで週間では5位(2/15付)、デイリーでは3位(2/3付)、という快挙を成し遂げた。最新アルバム『マニフェスト』は、タイトルからして、知っている人なら彼らの意気込みが分かるはず。ともかくおめでたい、祝福気分満載!
  
 インタヴューのために準備している最中、彼らのアルバムがヒット・チャートの3位にランク・インしたという報せを知った。
 
宇多丸「クラブ・サーキットを回ったのもあるよね。回る前はね、正直、もう少し、もう少しね、俺らは過去の人なのかな?とか思ったりしてたしね」
 
 ライムスターはMummy-D、宇多丸、そしてDJ Jinからなる日本のヒップホップ・グループ・ヴェテランの1人である。彼らは1993年にファースト・アルバム『俺に言わせりゃ』を ファイル・レコードからリリースするが、1980年代後半には宇多丸とMummy-Dの姿は東京のクラブではよく見かけることができた。彼らの結成は1989年。
 
DJ Jin「武道館のライヴを終えて、そのあとはクラブ・サーキットだけにしたことで、ライムスターを客観視できた」
  
 彼ら自身の曲「スーロー・ラーナー」(アルバム『グレイ・ゾーン』に収録)にこんなリリックがある。......_ライオンは未だ目を覚まさない/山は今しばし動かない......(Mummy-D)、......これはガラクタ? はたまた真のゲージツ/ひとつ確かなのは、こいつは全て自己流......(宇多丸)。
 
Mummy-D「おれたちは全然そういう気はなかったけどね」
 
 そういう気、というのは、この自らの誇りも含めての"スロー・ラーナー"たちが2007年の武道館ライヴの後の活動休止、を指す。当時、インタヴューしていた僕は、彼らが事実上の活動を停止するのだ、と思っていた。
 
Mummy-D「休業した方がさ、アーティスト・エゴとかあるでしょ、自分はこういうのやりたい、とかさ」
宇多丸「そういうのもありますよ(軽い感じで)、ソロでできるから、逆にライムスターでないとできないことを、ライムスターでやらないとって、とかね」
Mummy-D「あと直感的に、ちょっと休まないとダメだな、と思ってたのはあるけどね」
DJ Jin「まぁ、ちょうどソロの仕事もできるし、ということだったんですけどね」
Mummy-D「あの当時さ、ヒップホップって想像するものが、ほんとうにひとつじゃなくなってて、みんなの頭の中にいろいろなヒップホップ像があってさ、俺らも次のアルバムできるけど、そのヴィジョンが明確じゃなかった、と思う。で、すごく努力しても、風が吹いてないときって、その楽曲とか作品になんの説得力も波及力もなかったりするもんで、そういう時を待って、自分たちの言いたいことが出てくるのを待つっていうのもあったし、あと俺らの存在や言葉をもう1回求めるときがあるだろう、と言ってね」
 
 何回も繰り返して書くが、ヒップホップが多様化することには賛成。しかし、輸入文化として始まった日本のヒップホップは、当初からハイブリッドで、しかも2007年にはヒップホップの液状化はこの国ではっきりしていた。ポップ・チャートでのセールスとクレディビリティを得るために、その液状化を促進していたアーティストたちは、言葉での説明や、もしくは、自分たちのポップなトラックにコアなアーティストを起用する実践で自らを正当化しようとしていた。
 
宇多丸「俺は(活動休止は)流されてね(爆笑)。いや、半分は冗談じゃなくてね、今の"風"の話だけどね」
 
 ライムスターは、3人の話を聞けば聞くほど、各メンバーの関心領域の違いが際立つ。しかし、同時に共通性としてファンクネスの進化としてのヒップホップが浮き上がってくる。そうした意味で、今回のアルバムはライムスターのファンクがその完成度を日本のヒップホップ・シーンの中で、極めたものだと言えるのではないか? そして、そうしたことに音楽の聞き手とは敏感なのではないか?(だから3位にチャートしたのでは?)
 
DJ Jin「そういうことは届けたい、と思ってます。得体の知れない怪物、ってよくヒップホップのこと言うんですが、このクル、来ル感じ? 得体の知れない感じ? こういう音楽がもっと世の中の多くの人に届けば、オモロいことになるんじゃないの?とは思うから」
 
 つけくわえれば、今回のアルバムは人々に開かれている。液状化が起こった日本のヒップホップ・シーンで、意識的なアーティストにとって大きい課題は、むろん、ヒップホップであること、とより多くの人々に聞いてほしい、という何かを創造するのなら、ほとんど誰しもが持っている願いの両立だろう。それをライムスターは数字で結果を出したのだ。
 
Mummy-D「韻を踏むためにでてきた言葉、とは今回は思ってない。気持ちから、ソウルから出てきた言葉であって、韻を踏むためにテクニカルな意味で出て来た言葉じゃないんだ、っていうある種の曲ではそういう風にはとってほしかった。ライミングなんて俺ら出来るしさ。英語詩だって、そんなに踏みまくればいいって訳じゃないじゃない?」
 
 真面目な感じとギャグが混じっているのは......
 
宇多丸「でも、それはこの3人がそういう人なんじゃない? 人間が」
DJ Jin「『ONCE AGAIN』を録音したでしょ? その直後にやったのが『付和Ride On』ですからね」
Mummy-D「俺、どっちかだけで音楽やるなんて耐えられないよ」
宇多丸「あー、おどけ続けるのもね......」
Mummy-D「おどけ続けるのもきついしさ......」
 
 ちなみに、結成20周年でオリコン・チャート3位を極めた、ライムスターの方のライヴのプレッシャーをはらう秘訣、それはその後の打ち上げのイメトレだそうです。プロってこういうことだと思う、いや、ほんとう。


  
Rhymester "King Of Stage Vol.8〜「マニフェスト」Release Tour 2010"

●4/23(金)Zepp Sappro
●4/25(日)Zepp Nagoya
●4/28(水)Zepp Osaka
●4/29(木)Zepp Fukuoka
●5/7(金)Zepp Tokyo
[開場]18:00[開演]19:00[料金]¥4,200(税込/ドリンク代別)
[HP]www.rhymester.jp
 

 

 

"Manifesto"
Rhymester
[Ki/oon / KSCL 1546-7]

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