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322    COLUMN    UK REPORT

Photo & Text by SIMON "MAVERICK" BUCKLAND
 

Anthony Johnson & His Friends
 
Greetings Friends,
 
●今年最後のリポートで訃報を伝えなければならいのは残念だ。小柄だったがパワフルで非常に表現力が豊かだったシンガー、Louisa Markが胃潰瘍の悪化により2009年10月16日、西アフリカのGambiaで亡くなった。彼女こそ、UK独自のLovers Rockというジャンルを創ったアーティストの一人だった。
 
Louisaは60年、West LondonのShepherds Bushでグレナダ出身の両親の下に生まれた。彼女は13歳の頃から、Dennis 'Blackbeard' BovellのSufferers Hi-Fiのゲストとして出演し、数々のサウンドシステム・バトルの勝利に貢献してきた。やがて、Bovellの競争相手でもあり、Brixtonを拠点とするSir Coxsone Soundを主宰していたLloyd Blackford(Lloydie Coxsoneとして知られている)がLouisaの才能を見い出し、East LondonのFour Acesクラブで開催されていた恒例のタレント・コンテスト「Star Search」へのエントリーを彼女に薦めたのだ。彼女はそのコンテストで10回連続優勝を果たした後、他の若い才能へチャンスを与えるために"自主的に"出場するのを止めた。それほど彼女の実力は圧倒的だった。
 
この小柄なシンガーを初めてスタジオに連れていったのもLloydie Coxsoneだった。彼は、Bovellのバンド、Matumbiにヘヴィなベースを全面に押し出したレゲエ・スタイルで「Caught You In A Lie」を演奏させ、彼女のヴォーカルを録音した。14歳とは思えない大人っぽいエモーショナルなコントラルトのヴォーカルは、極限まで無駄を削ぎ落としたシンプルなサウンドに見事にマッチ。75年にCoxsoneのSafariレーベルからダブ・プレートとしてリリースされ、その後にシングル・カットされた。レコードはUK中のカリブ人コミュニティにおいて発売後1週間で1万枚売れる程の爆発的なヒットを記録。UK発のレゲエ音楽として初めての大成功を収めたのだ。
 
ただ、幸先のいいデビューを飾ったとはいえ、ジャマイカ寄りのサウンドで歌い続けなければならなかった彼女はそれから77年までレコーディングをしなかった。2年ぶりにリリースされた「Keep It Like It Is」をプロデュースしたのはTrojanレーベルのClem Bushayだった。この新曲や、魅力的なステージ・パフォーマンスにより彼女の人気は急上昇する。そして、非の打ちどころがない彼女の3番目のヒット曲「Six Sixth Street」が発売された頃、彼女の音楽がUKレゲエ界において1つの革命的なムーヴメントを起こすまでになっていた。70年代では、Lovers RockがEnglandで一番売れているレゲエのサブ・ジャンルになったのだ。ジャマイカのプロデューサー達でさえも、盛り上がるUK市場に合わせ、UKリスナーのテイストに合わせた音楽制作をするようになったぐらいだ。だが、ちょうどその頃にLouisaは音楽業界(プロモーター、プロデューサー、海賊盤の流通)に対して病的といえる程の嫌悪感を抱くようになり、79年にリリースしたがあまり流行らなかったシングルを最後に音楽活動をストップしてしまう。
 
それから2年後、彼女は関係者に説得されて数曲を録音し、デビュー・アルバム『Breakout』をリリースする。しかし、彼女のレコーディング活動は80年代〜90年代には激減してしまう。また、頻繁にショーをキャンセルするディーヴァ(歌姫)としてのレッテルをも貼られてしまった。しかし、彼女がステージに立つ度に、オーディエンスは熱狂的に彼女を支持した。僕が彼女を最後に観たのは00年前後、故Victor Crossの家族のためのチャリティー・ショーだったと思う。感情を豊かに表現した彼女のステージに魅了されたことをよく覚えている。
 
EnglandでLovers Rockリバイバルが起こり始め、オリジナル・アーティストによるライヴやその楽曲に対しての関心が非常に盛り上がってきた矢先、Louisaは家族とともにGambiaに移住してしまう。05年の事だった。もし彼女がUKに留まっていれば、過去の成功をもとに稼ぐ事ができたかもしれない。つくづく、Louisa Markは音楽業界とそりが合わなかったアーティストだったと思う。その結果、早熟だった歌手としてのポテンシャルをフルに伸ばす事が出来ずにその一生を閉じてしまった。彼女のUKブラック・ミュージックへの貢献は計り知れない。彼女が現れなければLovers Rockというジャンル自体が存在しなかったかもしれないからだ。
 
●残念ながらプレビュー・イベントには行けなかったが、Kentのバンド、Intensifiedが彼らの活動の歴史を綴ったDVDをリリースする。熱心なスイス人監督によるドキュメンタリーは、インタヴューやライヴの模様などを収録し、現在は編集作業の山場を迎えているはずだ。DVDが完成し、発売が決定したらもっと詳しい内容をお伝えしよう。
 
●Jah Thomasのかつての愛弟子で、長い間North LondonのStoke Newingtonに住んでいるAnthony Johnsonが、Dennis Brownの有名曲「Tribulation」(オリジナルはDerrick Harriott)をヨーロッパのHearticalレーベルよりリリースした。JohnsonはDJ兼プロデューサー、Jah Thomasのもとで「Gunshot」というヒットを放ち、今回のシングルも彼の典型ともいえるシンプルなスタイルが評価され、Londonで好セールスを記録している。このレーベルについては、www.heartical.netでチェックできる。
 
●ヴォーカリスト&プロデューサーのWinston Rileyをこのレポートで最近取り上げていたので、その続きを。彼は17 North Parade(VPのサブ・レーベル)から2枚組CD『Quintessential Techniques』をリリースした。ただし、彼をヴォーカルにフューチャーしたTreasure Isleの2曲が収録されているので、ちょっと困惑してしまうのだが、基本的には彼がプロデュースした様々な曲を収録したコンピレーションだ。残念ながらこのコレクションには彼のモンスター級のヒット曲が収録されていないので、彼の仕事の全体像を把握するにはちょっと物足りない。したがって、Riley初心者にはあまりオススメできない。
 
●09年初頭にMaxi PriestがUB40に加入したが、これはあくまで一時的なものだったようだ。現在、彼らはUKのTVで盛んに宣伝している『Best Of Labour Of Love』と、まもなくリリース予定の『Labour Of Love IV』のプロモーションも兼ねたツアーの真っ最中。これと同時にAliがバンドから脱退し、AliとRobin Campbellのもう1人の兄弟、Duncanがメンバーに加わった。実は、Duncanは約30年前、バンドが結成された時に他のメンバーから誘いを受けていたのだ。新生UB40を聴けば、まるでDuncanがずっとメンバーだったかのように全く違和感がない。Duncanの声はAliに非常に似ているので、UB40のファンが心配する事は何もなし、新作の『Labour Of Love IV』でも昔からのテイストを継承している。だからこの新作、古いファンには受けがいい反面、昔からUB40が嫌いなリスナーの支持は得られないだろう。個人的に僕は彼らのホーン・セクションが好きなのだが。
 
Till Next Time, Take Care..............
(訳/Masaaki Otsuka)

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