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THE MAZE

H-MAN×DJ KENNY
レゲエ馬鹿百科
　
Text by Takashi Futatsugi
Photo by (c) 2009 Mighty Crown Entertainment
　

H-Man、初のミックスCD!?　2002年より、年１枚のペースで過去７枚のフル・アルバムをリリースしている"レゲエ馬鹿道場師範"、その歩みを振り返るが如きベスト・ミックスを、ジャマイカのミックスCDマスター＝DJ Kennyが担当。これは、一体...!?　早速、師範に質問状をぶつけてみた。
　
質問その１。このタイミングでベスト・ミックスをリリースしようと思ったワケを教えてください（普通のベスト盤にはしたくなかった？）。また、その際にDJにリクエストしたことは何ですか？
　「正直、レーベル側のアイデアなんだけど、俺個人としても『いいんじゃない？』って気はあった。そう、何にせよやってくれるのはありがたいから。ベスト盤だったらどうだったんだろうね？でも、アルバムが10枚出てからのほうがいいのかもしれないね。まあ、どっちも自分から進んでやりたい！ってものでも無いしね。かと言って、『やる？』と言われたら断る理由も無い、と言うか、そもそも嫌では無いから。だから、俺からのリクエストは特にないね」
　
質問その２。DJ Kennyの印象を（実際に会った時の、また過去のミックス・テープに対しての）。それは上がってきたこのミックスCDを聴いて変わりましたか？
　「いや、もともと印象は何にも無いね。あんま知らなかったな。ミックスCDは１回も聴いたこと無かったしね。5月に来日した時も愛知と横浜で２回見たけど、個人的には『ふ〜ん』って感じ。日本語が分からないし、そもそも俺の歌を知らない訳だからどうなるかと思ったけど、上がってきたミックスを聴いた時は、思いのほか面白く出来てると思ったね」
　
質問その３。ミックス・テープ（CD）という文化に対して一言。また個人的に思い出深い、過去のミックス・テープは何ですか？　例えば、過去に参加した『Bumper Hit』や『Life Style』とかはどうですか？
　「ミックスCDはまず、お手軽でいいんじゃないの？　安いし、いっぱい入ってるから正規版より得だよね。Coji君のはよく聴くね。どれもこれも良いから。『Bumper Hit』とか『Life Style』はもちろんよく聴いてたな〜。ブーム前の勢いがあって面白かったしね」
　
なるほど......予想通り、H-Manはミックス／作品そのものに口を出していない様子。そもそも、自分の曲を他人がプレイするのにあーだこーだと言う方がおかしい、と。そんな潔さも流石！であるが、その声の主でさえ驚いたくらい、Kennyのミックスはイケてる、と。45曲それぞれのチューンについて、 日本語が分からないにも関わらず、「決して的外れじゃない持って行き方」を見せてくれるのは、事前の情報云々だけでは説明がつかない話、である。矢継ぎ早に現地最新ヒットをミックスしたブランニュー系のミックスCDを出していることで知られる"Eva Hype"ことDJ Kenny。彼は、実際に"JA No.1ミックス・マスター"の呼び声高き時の人であり、「日本語のレゲエをジャマイカンのヴァイブスで回したらどうなるのか？」という誰もが試したくても気が引けた実験を果たすには、最良の結果を出すに違いない人物。シュガー・マイノットのところや、ファイア・リンクスなどのサウンドにもいたという彼は、カセット・ニンジャでも修行（？）していたことがあり、ショーン・ポールやマヴァードとの交流の深さからも分かるように「ブランニューとそのダブに強い」セレクターとして、過去２回の来日、クラブ・ツアーも成功させている。彼の売りは、「ヴァイブス高いバンバン飛ばしてくミックス」なのだが、和の心を大切に、早口スタイルの時でさえ「ドクトクの間」を見せるH-Man、そのパンチライン＝言霊を肌身で感じたらしく......それが、的を得た構成、流れ、コマゲンにも繋がっている。そう、この日本のレゲエ人が書き、歌った言葉の数々・端々をジャマイカのレゲエ人が拾い、まるで『百科事典』のごとく編纂した本作は、恐らくは他の組み合わせでは不可能なくらいの化学反応を見せているのだ。
　
では、最後に...2010年の活動予定を。
「何とか凌いでいけたらいいと思います」
　
これはまた、『不退転』に続く強力作が生まれる前の謙虚な"予感"なのかも知れない（深読みもいいところ？）

　

"レゲエ馬鹿百科 Mixed by DJ Kenny"
H-Man
[Overheat / XQEY-1004]