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JAPANESE TRACK MAKERS NOW
 
Text by Yusaku Toriiminami
 

DADDY DRAGON
 ここ何年かに発表されたレゲエ作品のクレジットを見れば日本人トラック・メイカーの名が増えた事に気付くはず。しかもどれもクオリティは高水準だ。2009年現在の日本のトラック・メイカーをおさらいしておこう。
 
 本誌読者の面々には「何を今さら」といった感じの話かもしれないが、ご存知でない方のために少しおさらいしておくと、ダンスホール・レゲエにおいては多くの場合、まず"オケありき"で楽曲の制作が進められる。それはトラック・メイカーが普段から作り溜めていたストックだったり、プロデューサーがトラック・メイカーに発注して作ったものであったり、はたまた市販の7インチ・レコードの裏面に収められた"Version"であったり、楽曲そのものとは別に独立して存在する"○○リディム"を聴き、そこからインスピレーションを膨らませ作っていく。勿論中には先にリリックを書いて、それに合わせてオケを作ってもらうという場合もあるが、それでも曲のメロディ・ラインやフロウはオケに合わせて作っていく場合も多い。故にオケの持つ雰囲気の如何によって楽曲の印象は半分位決まってしまう、と言っても過言ではないだろう。そう考えると、曲を作るアーティスト達にとって、オケを作るトラック・メイカーの存在というのは非常に大きな存在である。
 
 だが、ここ数年拡大を続けてきた日本のレゲエ・シーンにおいて、サウンドやDJに比べその数は少なく、多くのアーティスト、プロデューサー達はジャマイカに向かい、トラック・メイカーのトラックを手に入れる事で楽曲の制作にあたる事が多かった。
 
 勿論国内でも優れたトラック・メイカーがいない訳ではなかった。90年代にはDub Master X、エマーソン北村、M.Kamishiro、Kan-Don、外池満広、アパッチ田中、佐川修、高橋健太郎、Hassie、Hase-T等が既に素晴しいトラックを残している。また、00年位を境目に多くのサウンドマンがトラック・メイキングに参加した作品をリリースするようになる。Red SpiderのJuniorによる『Sky is the Limit Vol.1』、元々Under Line Crewとして活動していたAruz StudioのZuraによる『Spiritual Climber』、Samurai Super Powerから派生したレーベルYa-Low Productionのシュリンピーがトラック制作をした『レゲエ野郎』等がその代表例だろう。また、『Life Style Records Compilation Vol.1』等のクレジットを確認する限り、現在Guan Chaiとのトラック・メイキング・ユニット、TC Movementsとしても活躍するMighty CrownのSami-Tがビート・プログラミングを始めたのもこの頃のようだ。
 
 さて、では09年現在のトラック・メイカーと言えば誰に注目すべきか。先にあげた先人達は勿論なのだが、今の日本のトラック・メイカーのレベルを味わうための好サンプルが丁度リリースされる。言わずと知れたレゲエ専門ショップRockers Islandのレーベル、Koyashi-Haikyuによる『Riddim Island』だ。ここでは「200%メイド・イン・ジャパンの軌跡」として5人のトラック・メイカー=Zura、Kon"MPC"Ken、MA$AMATIXXX、Daddy Dragon、そしてBackyaadie(a.k.a. Takafin)に白羽の矢を当てている。一人ひとり簡単に紹介してみよう。


KON "MPC" KEN
 
 全国最高峰のレゲエ・スタジオAruz StudioのオーナーでもあるZuraは「何を作ってもラガになるところがウリ」と本人が語る通り、レゲエ好きのツボをつくセンスが魅力。最近の仕事では、Ryo the Skywalker「Over Night Action」やChehon「韻波句徒」等の仕事が各方面で絶賛された。
 
 元Home GrownのMPC奏者、Kon"MPC"Kenは埃っぽい音が似合う職人肌のトラック・メイカーだ。アーティストからも"音のわかる"人物として信頼も厚い。彼名義の初作品集『拳POWA』収録のSami-T「Back Bitter」はシーンを震撼させた。
 
 次に紹介するはEnt Deal League擁するRacy BulletのセレクターでもあるMA$AMATIXXX。E.D.L.に共通する都会的な音の感触が魅力的。Hase-TとのユニットGifted Childsとしても多くの作品を残している。前述の2人よりも一世代ほど若く、正に日本の若手トップ・トラック・メイカーの一人だろう。
 
 MA$AMATIXXXが関東の若手トップならば、関西の若手トップはこの人、Daddy Dragon。今風のダークな厳ついトラックから、楽しげな雰囲気のミディアム、ビンギ調のトラックまでなんでもこなし、ハードコアな中にもどこかポップな印象のある音作りが魅力。自身のレーベルDragon Farmからもアルバム『Pride』を始め多くのヒット作を生み出している。
 
 そして、今回の参加トラック・メイカーの中でもひと際目を引くのが、BackyaadieことMighty Jam RockのTakafin。今までも自分達の作品や55Levelの楽曲においてトラック制作に関わってきた彼だが、トラック・メイカーとしては今回の作品で初めて注目を浴びる事になるのだろうか。トラック・メイカーとしてはまだまだキャリアは浅いが、聴いてなるほど、最先端なエッセンスを盛り込みながら、ライヴ映えしそうなかっこいいトラックを作っている。
 
 この他にも大阪泉州の重要地点、Natural Weaponのプロデュースを手掛けるFull Smoke Studioのたけしビート、Ya-Low Production等へのトラック提供でも知られる福耳StudioのAkahige、今年の夏にMoominの「Home」のリディムを提供したMi3、G-Governor Musicを始動させたばかりの元Guiding StarのG-Conqueror、Monkey Kenや風輪の作品でいなたくてかっこいいトラックを提供しているTerada等、腕のいいトラック・メイカーは他にも沢山いる。またHome GrownやJungle Roots、Alps Band、Super Trash、Skyline BandにChannel Links、Raw Technicaz、Chalisss Crew等のレゲエ・バンドやそのメンバーがトラックを制作しているパターンもかなりある。あと、この記事を書くにあたって何人かの方にアンケートをお願いし「注目しているトラック・メイカーは?」と質問したのだが、色んなところで名前があがったのが北海道出身のトラック・メイカーGahca。彼は日本での活躍よりも先に、長期滞在していたジャマイカでレーベルを打ち立て、人気アーティストの楽曲を手掛けラジオやダンスでヘヴィ・プレイされる、という一昔前なら夢物語だった事を既に成し遂げているという。日本国内での作品発表はこれからだが、注目せざるをえないだろう。
 
 トラック・メイカーによる色の違いは、作品を楽しむ上で視点としては大きなポイントのひとつだと思う。これは着うた等の配信では分らない、CDやレコードならではの音楽の楽しみ方だ。今回の作品をきっかけにブックレットに書かれたクレジットにも注目してもらい、ダウンロードだけじゃ味わいきれないレゲエの楽しみ方を味わってもらえたらと思う。

 

"Riddim Island"
V.A.
[Koyashi / KHCD-022]

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