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BOOM BAP
CHILLIN' WITH WALE
 
ワシントンD.C.でアメリカ合衆国大統領バラク・オバマの次に働き者なのは、彼しかいないと言っても過言ではない。本名Olubawale Victor Folarinとして生を受けたラッパー=Waleは、D.C.でクラブ・ヒットとなった「Dig Dug (Shake It)」と共に06年にシーンに出現し、5つのフル・ミックス・テープをリリースした(『Paint A Picture』『Hate Is The New Love』[共に06年]、『100 Miles And Running』[07年]、『The Mixtabe About Nothing』[08年。TVシチュエーション・コメディ番組『Seinfeld』を題材にしたコンセプト・アルバム]、そして新作の『Back To The Feature』)。インターネット上にフリーな音源が氾濫している近況の中、Waleは新しいファンを掴み離さぬよう、より一層の努力を惜しまない(Waleは"All Day"と韻を踏めるよう"ワーレイ"と読む。"Whale"="ウェール"="鯨"とは発音が違う)。
 
Waleの初期の多くのトラックは、ワシントンD.C.ならではのGo-Goサウンドが特徴だった。しかしWaleは、観客を魅了するためには何だってトライする意志があった。Interscope/Allidoからリリースされた彼のデビュー・アルバム『Attention Deficit』からのリード・シングル「Chillin'」を聴いて欲しい。マイアミのビートメイカー、Cool & Dreが制作プロデュースしたこの曲は、Streamの69年のヒット曲「Na Na Hey Hey Kiss Him Goodbye」をサンプリングし加工したトラックだが、彼のラップはまるで全てを壁に投げつけてそこに何が残るのか確かめているようだ(Lady Gagaが歌うフックも印象的)。もしかしたらこのユーロ・ホップ的作品によって、彼をローカル・ヒーローからスーパー・スターへ続く道のチケットを手に入れるかもしれない。
 
Waleは「Lady Gagaがこの曲にもたらした"バッドガール的なヴァイブス"が気に入った」と語る。実はこの曲にGagaを起用したらどうかと提案したのは彼のマネージャーDaniel Weisman 。Danielは「誰がいいかと思いながらInterscopeのアーティスト・リストを見てたんだけど、まずNelly Furtadoを候補にあげて、Gwen Stefaniも視野に入れて...でもGwenと共演するのは簡単じゃないし...って思ってた時にGagaはどうかなと思いついたんだ。『Just Dance』をカナダでプッシュし始めてた頃だったから、まだ彼女の歌は誰も聴いた事がなくてね。彼女のPVを見ていたら、あの容姿や行動はWaleと合うんじゃないかと思ったんだ」と語っている。
 
Lady Gaga自身はプロデューサーのMark Ronson(Jay-Zのミックス・テープ『Fade To Black』やLily Allen、Amy Winehouseのヒット曲を手がけている)の功績を語っている(因みにMarkのレーベルAllidoとWaleが契約を結んでいる)。「ツアー中にMarkから電話があって、『Chillin' 』の共演とフックを書いて欲しいって誘ってくれたの」とGagaは語る。「そのトラックを聴いた時、夢中になれる何かがあると思ったの。まずWaleと一緒に作業して、レコーディングはMarkとも一緒。Waleは才能に溢れているばかりか、ルーツにも精通していて羨ましいわ」との事。
 
逆にWaleはGagaについて、「ある意味、彼女と俺は似ている。彼女はとても変わっていて、ある意味俺もそうだ。パーティを盛り上げるために、友達を皆誘いたくなる様な女性だよ」と語っている。
 
Waleのデビュー・アルバム『Attention Deficit』について彼はこう述懐する。
「いろんな楽曲を今回やったけど、2曲位録音を終えた時かな、レコード会社の奴らに『もっとシングル的な曲が必要だ』って言われたんだ。ただし彼らは俺を説得しなければいけなかったけどな。俺のリリックは本当に複雑なんだよ。聴いた人が『え、今何て言ったの?』って歌詞が気になっちゃうぐらいの曲が好きだからね。でも、彼らが言う通り、もう少し遊びが必要かなって、ある日気付いたんだ。実際、このアルバムに入れようとした曲はどれも物語性が強くて意味深な題材ばかりだから、逆に自分をさらけ出す楽曲を入れる必要があるかなって。アルバムを出すからには注目を集める曲がなければいけないしね。つまりパーティに行ったら必ず掛かっている様なシングル的な曲が必要だったんだ。それで、Coolが幾つかトラックを聴かせてくれて、これだ!って思ってすぐ『Chillin' 』を書き始めたんだ」
 
ワシントンD.C.を常にレペゼンし、HipHopの勢力図に見落とされがちなメリーランド州のプリンス・ジョージ郡やヴァージニア州のモンゴメリー郡といった地元をこよなく愛するWale。だから彼はデビューする時にも地元を忘れなかった。NYのHot 97ではなく、地元D.C.のWKYS 93.9で「Chillin'」を初披露したのだ。
 
「実はその前日、Jay-Zと一緒で。マネージャーが金曜日のHot 97でこの曲をお披露目した方がいいって言う奴がいたんだけど、俺は『違う! 自分の地元が最初だ』って言ったんだ。そしたらJayも『そうだ、D.C.でやるべきだ』って。俺としては地元のラジオ局もHot 97と同様に認めて欲しいんだ」
 
今後、彼の富と名声への道に何が起こるか分からないが、Waleはいつでも地元に戻れるってことを知っている。
  
TEXT BY ROB KENNER
アメリカの『VIBe』マガジン、VIBE MEDIA GROUPのエディター・アット・ラージとしてREGGAEコラムを執筆中。HIP HOP/REGGAEに深い愛情を持つ。
Website → www.boomshots.com

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