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THE MAZE

(U KNOW)What the deal is
　
　秋をすっ飛ばして既に冬な感じのNYですが、皆様いかがお過ごしでしょうか？　この号が発行されている頃には、今のNY市長選が終わっていると思うのですが、まあ誰がなってもここまで腐ったリンゴはどうにもならないという話です。個人的な希望としては、オバマのあおりを受け、庶民の救世主みたいな人が今の悪徳社長ブルームバーグの代わりになってくれればと思っています。ブルームバーグは、社長ゲームの延長でNYをおもちゃ代わりにして、不動産屋と結託し、大企業に便宜をはかり、NYをニューヨーカーから取り上げ、街を巨大なショッピングモールに変えてしまったという悪行の限りを尽くし、ロック・バンドもラッパーもライターもDJも大企業と関わらないとブレイク出来ないという、結果を生み出した。変形した共産主義とも言えるそのNYらしくない環境は、老舗を廃業に追い込み、アートも糞もない浄化された街が残った。誰か奴を狙撃してくれないか？

●今月の訃報
「ターンテーブリスト」という言葉は腑に落ちないが、それが台頭した頃の90年代のDJバトルでしのぎを削り、ヒップホップにおいてのDJ（Dee Jayと書くべきか）を体現したロック・レイダーが、心不全で9／19に死去した。クラヴマガなるマーシャル・アーツ（武術）のひとつをこの２年間勉強していた彼だが、その練習中の事故が原因とみられる。95年にニューヨーク出身の初のDMC／テクニクスのDJバトルのチャンプの栄冠に輝き、ハーレムの地元をレップし、自身のグループ、Eブラザースのプロダクションを手がけ、ショウ・ビズとAG、ロードフィネス、クールＧラップなどのDJをつとめ、最近はバスタ・ライムスのツアーDJとして世界を回っていた。99年に"グランドマスター"という称号を、どこでどう得たのか分からないが取り、自身のDJバトルもオーガナイズしていた。9／24に地元ハーレムのマウント二ボー教会で、葬式が行われ、２人の娘と妻、多くの友人、ヒップホップ・コミュニティに見送られた。37歳だった。10／22にBBキング・ブルース・クラブで、旧友のDJ達、自身のDJチーム、エクスキューショナーズ達によるトリビュートも行われる。現代のヒップホップ界もこういった悲しい出来事がないとDJの存在すらも忘れている？
　
●今月のリユニオン
いつ解散したのか知らなかったが、オーガナイズド・コンフュージョンのリユニオンが、9／25、BBキングで行われた。前座にはこれまた久しいプア・ライチャス・ティーチャーズが元気な姿をみせ、ワイズ・インテリジェントの現在のヒップホップ・シーンを懸念するテーマのフリースタイルは今も有効で、新鮮な内容だった。そして主賓のライヴは、新旧の曲を取り混ぜ、ファロー・モンチのソロからの曲も含んだ一時間あまりのショウだったが、ショウの主導権というか、エネルギーを最も発散していたのは、プリンス・ポーで、やはり彼のグループだったというか、ファローはあくまでもサポートに回っている感は隠せなかった？
　
●今月のアートショウ
今月というか、恥ずかしながらわたしのレーダーに引っかかっていなかっただけなのだが、７月からダウンタウンはニューミュージアムで行われているのがエモリー・ダグラスの個展である。この名前を聞いてピンと来る人は、昔ほど少なくはないのだろうが、彼は60年代からブラック・パンサー党の機関誌のアートワークで、黒人を中心とした革命のヴィジュアルを担当してきた。その独特なタッチのイラストや、コラージュ、アートワーク自体が革命的で、現在の多くのデザイナーたちにも多大なる影響を与えているのは、間違いない？
　
●今月のショウ
あまり大企業の宣伝には関わりたくないのだが、10／15、ブルックリンのギターセンターという楽器屋チェーン店のオープニングにクールハーク、グランドマスター・フラッシュ、シオドロ、ジャジー・ジェイ、DXT、ジェイC（！）、スティーヴD、ロブ・スイフトがプレイするという驚くべきイヴェントがあった。バカバカしいのが、会場に駆けつけたファンにセラトが当たるという抽選で、パイオニア達もアナログを捨てている人も居たが、渋い顔が目立った？
　　
沼田 充司
DJ／プロデューサー。 レーベル＜ブダフェスト＞主宰。 雑誌『ブラスト』でも執筆中。 ニューヨーク在住。 [Photo by Tiger]