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THE MAZE

RUFFN' TUFF
　
Text by Riddim
　

　Alton Ellisの一周忌にちなんで、DVDの再発が決定した映画『Ruffn' Tuff』。一周忌の直前となる10月9日、渋谷Uplink Factoryにて久々に上映会が開催された。
　
　ビルボードのアルバム・チャートでトップの座を奪取したJay-Zの『The Blueprint 3』はもう聴いただろうか？　金字塔的名盤『The Blueprint』の続編というトピックの他に、この夏リリースされた「D.O.A.(Death Of Auto-Tune)」があちこちで物議をかもしたこともあって手にした読者も多いだろう。もしここまで読んでピンと来ない人は、その『The Blueprint 3』に収録されている「Already Home」を改めて聴いて欲しい。Kanye Westがプロデュースし、ゲストにKid Cudiを迎えたチューンだが、イントロから飛び出すストリングスとそれに伴ってポロンと響くピアノの音を聴いて「えっ!?」とつい声を出しちゃいませんか？　
　
そう、この曲でGladstone "Gladdy" AndersonとHarry Mudieが72年にMoodiscよりリリースした名盤『It May Sound Silly』（80年代半ばにOverheatより『Caribbean Sunset』のタイトルでジャケットも変更して発売したこともある）収録の「Mad Mad Ivy」のイントロをバッチリとサンプリングしているのだ。Jay-ZとKanye Westと言えば、現在のブラック・ミュージック界（つまり世界のポピュラー・ミュージック界）の"2トップ"と言っても過言ではないだろう。その2トップがGladdyのこの隠れた名曲をピックアップするなんて、それは世界No.1バンドのThe Rolling StonesがHalf Pintの「Winsome」をカヴァーしたという事件に匹敵、いやそれ以上とも言えるかも（「Winsome」を「Too Rule」と改題し、86年作『Dirty Work』に収録）。
　
　と、前置きが長くなってしまったが、そのGladdyの証言が柱となっているドキュメント映画『Ruffn' Tuff』が、Alton Ellisの一周忌を機に再発されるというので、一晩限りのスペシャルな上映会が渋谷Uplink Factoryにて開催された。この日は本編の上映の他、監督の石井志津男とエディターの川勝正幸による対談、さらにAlton Ellisの未公開インタヴュー映像も上映された。
　
石井志津男（左）、川勝正幸（右）
　
　

Alton Ellis (Photo by Masataka Ishida)
　
　
　対談では94年に雑誌の取材でRankin Taxiと2週間ほどジャマイカに滞在したことがある川勝氏だからこそ肌で覚えているジャマイカでの取材の難しさの話題の他、Alton Ellisの撮影秘話、Leroy Sibblesが登場する美しい海辺でのシーンの裏話、そして石井が1981年に初めて日本に紹介した映画『Rockers』と現在『Rockers』の配給権をもち、今回上映会場となったUplinkとのつながりなど、濃過ぎる話は尽きない。
　
　本編上映後にボーナスとして上映されたAlton Ellisの未公開インタヴューは、その時代のその場に身を投じたAltonならではの含蓄のある実に興味深いもので、当日来場された観客だけしか見ることができないなんて実にもったいないもの。いつか陽の目をみることがあるのだろうか？
　
　さてこの『Ruffn' Tuff』、長らくお待たせしたが、DVDの発売日は11月25日。これを機にぜひお手元に。
　

　
「Ruffn' Tuff〜永遠のリディムの創造者たち」
監督：石井志津男
出演：グラッドストン"グラディ"アンダーソン、リン・テイト、U-ロイ、アルトン・エリス、ボブ・アンディ、ストレンジャー・コール、キング・タビー、高津直由 他
品　番：XQEY-2001
発売日：2009年11月25日
価　格：￥3,150（税込み）