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THE MAZE

"ジャマイカ・ロビンフッド物語"
Text by Reiko NAGASE SMITH
　
社会派デュオTwin of Twinsが、今ジャマイカで話題のDudus（ドゥダス）ネタで曲をリリースしてストライク。ドゥダスは泣く子も黙る西キングストンのドン、クリストファー・ドゥダス・コークのこと。
　
ドゥダスはガンジャとコカイン及び銃器密輸の疑いでアメリカから指名手配されており、アメリカ政府からジャマイカ政府に、ドゥダス送還の要請がされたのだ。
　
世界でも十指にはいるデンジャラスな親分、とされるドゥダス。もしアメリカに送還されたら、終身刑などの極刑に処されるであろうと推測される。
　
ドゥダスは現与党JLPのポリティカル・アクティヴィスト。「チャンピオンズ・イン・アクション」のプロモーターでもあり、エンタメ界で影響力が強く、ジャマイカのアーティストたちからこの上なくリスペクトされているビッグな存在である。
　
Twin of Twinsはこのチューン「The President」について、ドゥダスの有罪または無罪かを歌うのが目的ではなくて、政治的な動機で書いたチューンでもない、単にストリートの意見を歌にしたものだという。
　
Which Dudus dem a talk?（ドゥダスって、どのドゥダスのこと？）
A couldn't di president, the man set the order downtown（まさかプレジデントのことじゃないよな、あの、ダウンタウンを支配する......まさかな）
......"プレジデント"はドゥダスのもうひとつの呼び名である。
　
So how all of a sudden government a come frown（あれー、なんで突然政府は手のひら返したようにいやな顔するわけー）
Like dem tek Garden man dem fi clown（ギャーデン［＝陣地であるティヴァリ・ガーデンのこと］の男をピエロにしちゃうってわけー）
A wonder if dem know what kind of don dem a talk?（どのドンについて話してるんだろ、いいのかなーいいのかなー）
A nuh Don Corleon or Leroy Smart（プロデューサーのドン・コーレオンのことじゃないよな、同じドンでもリロイ・スマートでもないよなー）
　と、このややこしく繊細な話題にTwin of Twins流のユーモアでふれていく。
　
Think a road dem ago block when the being thing start from dem see prezzy might as well dem see coffin（考えてもみろよ、またロードブロックだよもしほんとうにそうなったらさ。棺桶いっぱい見るよ）
It look like dem waan overcrowd down a madden（葬儀屋がいっぱいになるっつーの）
A how dem a look fi Dudus and dem caan find Bin Laden.（やつらって、ビン・ラディンも探せないくせに、ドゥダスを渡せってどうよ）
......もしドゥダスがアメリカに引渡しされたら、キングストンのダウンタウンが荒れると言われる。ドゥダスは想像を絶する力をもった男、ダウンタウンの均衡は崩れ、ドゥダスがもたらした平和が台無しになる。
　
ヴェテラン・レゲエ・シンガー、ジャーＢことバニー・ウェイラーが、誰よりも先に「Don't Touch Di President（プレジデントに触れるな）」をリリース。バニー・ウェイラーはローカル・テレビ局の番組に出演しインタヴューを受け、ダウンタウン・キングストンがいかにドゥダスを必要としているか、を熱く語る。西キングストンで生まれ育ったジャーＢは真実を知っている。
　
現代ジャマイカのロビンフッドともいわれる貧乏人の味方、ドゥダス。

「法が裁かぬなら、俺が裁く」
　
悪政に苦しむ民衆の心を描いたこのロビンブッドの物語を、キングストンのダウンタウンにあてはめようとする。
　
ドゥダスの無罪を主張し、ドゥダスを支持するアーティストは多い。ドゥダスを引き渡さず、アメリカ様のご機嫌をそこねて国政に支障をきたらすか、引き渡してダウンタウンを血で染めるか（おおげさなようでおおげさじゃないかも、Who knows）、政府はそのクビに有刺鉄線を巻いてるような状態なのだ......などど言われているのだけど、ジャマイカ政府、どうでるかな。
　
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