ENT DEAL LEAGUE
MORE THAN WORDS
Text by Hajime Oishi / Photo by Riei Nakagawara
レペゼン東京ダウンタウン、Ent Deal Leagueがセカンド・アルバム『ABCDEnt.』を完成させた。近年はソロでの活動を精力的に展開する一方、Ent Deal Leagueとしてのライヴも積極的に展開してきた彼ら。その成長が刻み込まれた今作の内容をチェックしてみよう。
Micky Rich、Ken-U、Domino-Katというキャラクターの異なる3人からなるEnt Deal League。今回リリースされる彼らの新作『ABCDEnt.』は、前作『Downtown Movement』から約3年ぶりのアルバムとなる。
この3年の間に彼らを取り巻く状況は随分と変わった。まず大きかったのが、3人それぞれがソロ・アルバムをリリースしたこと。ソロ・アーティストとしての経験を積んだことによって、一人ひとりが大きく成長。結果として、チームとしての総力も格段に向上した。
「(ソロ・アルバムの制作は)スキルアップに繋がりましたね。曲作りのコツを掴めたというか」(Domino-Kat)
「レヴェル・アップしたと思います。今回アルバムを作るにあたって、リリック作りだったり、アイデアの練り込みは、前のアルバム以上にスムースに進みましたし」(Micky Rich)
また、Ent Deal League名義でのライヴを積み重ねることによって、ステージ上でのパフォーマンスもさらに練り上げられてきた。もちろん、この3年のうちにはRacy Bulletの盟友Burning Jariの死という悲しい出来事もあったが、それをチーム一丸となって乗り越えてきた彼らは、『ABCDEnt.』に3年分以上の成長を刻み込んできたのである。
「今回は3人でイチ・アーティストというのを意識したんで、それがより強く出たと思います」(Micky Rich)
「一枚のコンセプトを元に作ったというよりも、Ent Deal League自体がコンセプトになってて。だから、今回はバランスを意識しながら作ってるんですよね」(Ken-U)
「こんなにスリー・ザ・ハードウェイを作ったことはないですよ(笑)」(Micky Rich)という今作。かつての彼らのコンビネーションがラバダブの延長上にあったとすれば、ここにはショウケース的に練り上げられた3人の絡みがある。三者三様のパフォーマンスがひとつに結びつく時、そこにはEnt Deal Leagueというチームにしか生み出すことのできない力が発揮される----今回のアルバムではその事実が改めて証明されているのだ。
「皆さんにもよく言われるんですけど、オレらは本当にバラッバラだから、役割が自然にできてるんですよ。Dominoだったら爆発力、Kenちゃんは歌声で空気感を変える役割、オレはバランサーの部分を担う必要があって。それぞれソロでやる時とは違う側面を出せるんで、今回はそれを詰め込めたと思いますね」(Micky Rich)
僕がEnt Deal Leagueの音楽を愛しているのは、彼らが東京のダンスホールの現場を無骨なまでに描き続けているからだ。もっと言えば、太陽が光り輝く昼間ではなく、サウンドシステムから妖しいベースラインが鳴り響く東京の夜のワンシーン。彼らが描写し続けているのは、そんなありふれた日常である。
「そこはこれからも変わらないと思う。でも、そのうえで入り口を広げたいとも思ってるんですけど」(Domino-Kat)
「そう言ってもらえると嬉しいですね。(今回のアルバムも)そう作ったつもりだし、オレらがやると自然にそうなっちゃうんですよ。他のアーティストにはできないものをやりたいっていう気持ちもあるし」(Ken-U)
「やっぱり現場の楽しみを知って欲しくてやってるところもあるし、最近現場に来てない人が『Entを聴いてたら久しぶりに現場に行きたくなっちゃった』って思ってくれたら嬉しいですね」(Micky Rich)
Racy Bulletおよび周辺の仲間たちと共に毎週火曜日のダンスを実に9年もキープしているというEnt Deal League(現在は渋谷AMRAXにおいて、「Party Hard Tuesday」というタイトルで開催中)。かつては活きのいい若手としてシーンに殴り込みをかけた彼らもすでに短くないキャリアを積み重ねてきた。Micky Richは「ヤング・ヴェテランでもオールド・ヴェテランでもなく、オレらミドル・ヴェテランですからね(笑)」と笑うが、シーンでの立ち位置が変わってきたことにより、彼らの心境にも微妙な変化が生まれてきたようだ。
「これまではあんまり考えたことがなかったんですけど、先輩たちがよく言ってくれるんですよ。『お前らも影響力がある立場なんだから、そこいらへんは考えないと』って。でも、あくまで遊びなんで、説教臭くはならないようにしてます。遊び方を教えるというか、エデュケーションじゃなくて、一緒に遊んで学んでいこうよ、と」(Micky Rich)
『ABCDEnt.』というアルバム・タイトルについてKen-Uは「今までのEntと今のEnt、そして未来のEnt。もちろんまだまだ進行形ということもあるし、Aから始まってエンターテイメントを作り出していきたいという思いから付けました」と話す。Ent Deal Leagueとしてはメジャー・デビュー・アルバムながら、まったく気負うことなく、自身のルーツ=現場を見つめ直して充実したアルバムを完成させた彼ら。シーンの動向にも左右されず、ブレることなく我が道をゆく今の3人は実に頼もしい。
"ABCDEnt."
Ent Deal League
[Knife Edge / PCCA-03022]