"Who's Time Now"
Text by Reiko NAGASE SMITH
カーテルさまから目が離せません。かつての恩師であるキラー様を「ハイネッケン・スタータイム・アーティスト」呼ばわりしてしまうなんて。
「ハイネッケン・スタータイム」は数年前まで定期的に行われていたオールディーズのショウで、スカやルーツ、'80年代ダンスホールのスターたちが出演する。
キラーがカーテルに向けて投げたチューンは「Chatta Box」、「Ungrateful Hellboy」、「Wata Chune」、カーテルを「むだ口小箱」と呼んでます。それを受けてカーテルが放った「Bounty's Killa」、カーテルに言わせれば、これは反撃じゃなくて「改正」なんだとか。相手のまちがった言い分を直してやったのさ、と。カーテルがボウンティをディスるときに言う「BOUNTY」は、アメリカ産の良品質なキッチンペーパーで、ジャマイカで人気の商品。
「......ボウンティは過去の時代の男、イマどきのやつらは俺と"床屋"を求めてる。やつはそれが気にくわないのさ。アライアンスも過去、いまはガザとガリだけさ。キラーはもういいよ。俺はジャメーカと世界に向けて曲をつくるよ。A Kartel and di barber time ya now」
「俺がキラーをディスしてたこの一年というもの、やつはなにも言い返さなかったじゃないか。リリックを書いてくれるやつがいないんだろう」
「もしキラーがWarしたいなら、マーシレスとかビーニ・マンとか、やつの時代のアーティストとやってくれよ」
ここまで盛り上がってくると人々の関心はクラッシュ、もちろん年末「スティング」のクラッシュを期待してしまう。なのにカーテルはキラー様とのクラッシュを全面否定。
「ボウンティとはクラッシュしないぜ。俺の最後のクラッシュの相手はニンジャマンだからな。『スティング』も、クラッシュじゃなくてクルーズ(注;豪華にいくという意味)でいくぞ」
そしてマヴァードとのクラッシュもやんわり否定している。Listen to Pon di Gaza
カーテルのこのコメントにボウンティは即リスポンスした。
「却下、却下、却下。お前とマヴァードがWarならWarでいいけど、俺の名前を出すなよ。お前のほうから投げてきて、Killa Cyan dis meってなんだよ、意味わかんねえ。俺様の今夏のステージを見ただろう」
8月の「レゲエ・サンフェス」では極上のパフォーマンスを見せつけたボウンティ・キラー。その後、キングストン郊外、ポートモアの「Champions in Action」でカーテルは観客のブーイングを受け、Gaza派はほぼ撃沈、アライアンスはボス。夏の「スティング」的なバッドマンのショウでの失敗は痛い。ボウンティは強気であらためてカーテルとのリリック・バトル勃発を宣言。
「......あいつをビッグにしてやったことが、今となって悔やまれる。ちょっとカラバー高校出身でインテリ気取りでいい気になりやがって」
カーテルが卒業したカラバー高校はキングストンの名門校で、スポーツも強い。
「俺の『Book, Book, Book』よりいいチューンもないくせに」
8月はベルリンの世界陸上で、昨年の北京オリンピック以上の活躍をみせたジャマイカ・チーム。金メダルと世界新記録を我がものにしたジャマイカのスーパー・スター、ボルトはカーテルとポートモア・エンパイアの大ファンで知られている。ボルトは世界陸上の公の場で、「Gaza Mi Seh」とつぶやき、カーテルはボルト応援チューンを出している。
10代の頃からボルトはカーテルの大ファンで、ジャ・ヴィンチをはじめポートモア・エンパイアがご贔屓。といってマヴァードやボウンティ・キラーに対抗しているわけではなく、ただただカーテルのファンなんだって言ってます。
カーテルの戦友となったビーニのこのチューンもヘヴィ・プレイ中。敵の敵は友だち繋がり。
Weh mi seh unu fi seh.
Ah Gaza mi seh.
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