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THE MAZE

TUCKER
THE REAL MAN BEHIND THE SCENE
　
Interview by Shizuo "EC" Ishii / Photo by Toshiaki Ohba
　

　本誌でコラム「俺はMi Neva Know」を連載しているTucker。ご存知の通り、レゲエ専門店Rockers Islandを中心にウェブ・マガジン、レーベル、クラブ・イヴェントと全方位からレゲエ・ミュージックをフック・アップし続ける頼もしい存在だ。そこでTuckerとは15年来の知り合いであるECが彼に取材を申し出た。
　
●レゲエ・ビジネスのスタートは北海道からだよね？
Tucker（以下T）：そうですね。この仕事を始める前はNYに1年間程住んでいました。で、一度帰国して再びNYに行く時に札幌の友達と一緒にNYを基盤に洋服とかVPの12インチとかLPの輸入をやろうとしたんですけど、最初にNYに行ってた時にオーヴァーステイがあったため入国できなくて。しょうがないので1年間お金を貯めつつ事務所も借りて今度はNYに買い付けに行こうとしたんですが、また入国できなくて。そんでそれをパートナーに相談したら「ジャマイカに住んで7インチを送ればいい」と方向転換する事になって（笑）。それが94年の話ですね。
　
●ちょうどその頃、ジャマイカでOVERHEATの7インチの流通を任せていたSonic Soundsのジェイソンに紹介されて初めて会ったんだよね。まだそんなにジャマイカで日本人には出会わなかった時代だね。
T：そうですね、まだ日本人がジャマイカに住めるって感覚がなかった時代でしたね。僕の場合はアメリカが無理だったので、「ジャマイカか、その手もあるかな」って軽い気持ちでしたけど。で、実際にジャマイカに来てテックスとかに助けてもらいつつ、「このままいてみようかな」って（笑）。結局6年間ぐらい住んでました。
　
●ジャマイカではサウンド（Judgement）も精力的に活動していたよね？　
T：ジャマイカに来て割とすぐにジャロ（Killaman-jaro）のRickey Trooperと仲良くなって。彼はあの頃、まだ車を持ってなくて。僕はジャマイカに住んで1年後ぐらいにタクシー代がかかるから自分の車を買ったんですよ。そしたらTrooperが「これあったらダンス行くの楽なんちゃう？」って話になって、結局、毎週末ジャロ関連のダンスに一緒に行くようになって。
　
●オレもレンタカー借りて一人でスタジオに乗り付けてたけど、あの時代に日本人で車を運転してる奴なんて珍しかったもんね。
T：そうですね、大体みんなタクシーか徒歩でしたね。そうこうして3年が過ぎた頃ですかね、「お前もそろそろサウンドやった方がええんちゃう？」って話になって、実際、だいぶパトワも喋れるようになったし、またやろうってなって最初はジャロのダンスで飛び入りさせて貰ったけど、全然ダメでした（笑）。ただそうやって勉強させて貰ってる内に「こうやったら盛り上がんのやな」って覚えて行きましたけど。そうこうしている内にJudgementとして単独で動けるようになったんです。
　
●クラッシュも結構参戦してたよね。
T：そうですね。ジャマイカのサウンドが作ったカセットテープって思ってる以上に世界中に出回るんですよ。それを聴いたカナダやイギリスのプロモーターから連絡が入るようになって海外でもやれるようになって。99年にロンドンで開催された「Global Cup」ってクラッシュに参加して優勝したんですね。日本人だからダメもとで参加したんですけど、意外と吹っ切れてできたのかもしれませんね。
　
●ちょうどMighty CrownがNYの「World Clash」で優勝した年だね。それで、その年の年末（99年12月17日深夜）に"Riddim 200号記念イヴェント"の第２弾として「Celebration For The Heavy Weight Champions 〜Mighty Crown & Judgement」をClub Citta' でやったんだ。
T：そうなんですよ。（優勝が）うちだけだったら美味しかったんですけどね（笑）。
　
●でもその後、意外と早くJudgementの活動を止めちゃうんだよね。
T：実際、サウンド・ビジネスって大変なんですよ。ツアーも大変ですけど、アーティストの裏の部分にも巻き込まれるじゃないですか？　見たくないものも見ますし、こっちの方にもズカズカ入ってくるし。あと上がつかえてると次の世代が出て来れないから、あるところで見切りはつけなきゃなって思ってました。そんな頃に丁度ビジネス・パートナーに子供が産まれて仕事から離れる事になって、それなら僕がRockers Islandをちゃんとやって行こうって思って2000年に日本に戻って来たんです。
　
●ジャマイカ時代からRockers Worldってレーベルもやってたけど、ここ数年はKoyashiってレーベルもスタートしてCDもリリースしているね。Don Corleonがプロデュースした作品を日本盤としてリリースしたり、プロモーションで来日させてライヴもやって...。これってオレも90年代前半にやってた事だけど、本当に大変なんだよね（笑）。
T：覚悟はしてたんですが本当に大変ですね。ただ僕自身がDonの作る音源が好きなんですよ。今ジャマイカってプロデューサーだけでなく国民全体がアメリカばかりを見てますから、ああした音を取り入れたのがお洒落だと思われているんですよ。でもDonとか（Christopher）Birchとか、Big Yardの（Robert）LivingstonとかSean Paulもそうだけど、世界でレゲエで勝負して実際にヒットした人の音楽を聴けば分かるんですが、自分達がどういった音楽をやればいいかちゃんと分かってて作っているんですね。だからDonの音楽を応援したいと言うか、彼の音楽を日本できっちりと紹介していかないとシーンがダメになるんじゃないかなって思ってやってるんですけどね。で、Donのところに所属しているPressure、Munga、Alaineのアルバムを出して、全員で揃ったところで日本に招聘してファンに観せといた方がいいかなと思ってこの夏やってみたんです。
　
●そうやってきっちりとCDを出している側として、ミックスCDってどう思ってる？
T：うちだと権利の取り易い音源もあるから、例えば『Don Corleon Mixed by Mighty Jam Rock』みたいなものをオフィシャルで作れば一番売れるんだろうけど、何となく違和感はありますね。もっと違うアプローチができるだろうと思ってます。あと俗に言う海賊盤のミックスCDは、日本ではラジオのレゲエ番組の代わりになってるのかなとも思います。実際それでレゲエが広まっていますから。日本でレゲエが好きな人ってレゲエ全体が好きなんですよ。だから一枚で色々聴けるミックスCDが好きなんでしょうね。それに入っていたAlaineの曲が好きだからAlaineの7インチとかアルバムを買う人ってレゲエ・ファンとして一段ランクが上の人なんですよ。ミックスCDがあるからそれで充分という人もいるし、そこから先をもっと聴きたいって人もいるし、実際のところ分からないですね。ただミックスCDばかり売れ過ぎると「お前ら、ちゃんと作品を買えよ！」って思いますけど（笑）。
　
●ウェブではショップの通販に加え、情報ページとしてRockers Channelもやってるよね。
T：本当はフリー・マガジンをやろうと思ってたんですけど、まず歴史ある『Riddim』があって、次にMighty Crownの『Strive』があって...「三番手かよ」って（笑）。じゃあウェブならまだ誰もやってないなってRockers Channelを始めたんです。当時『Bash Magazine』をやってた彼女達を誘ってスタートしました。彼女達も裏方をやりたいって言ってたし。「Rockers Paradise」も彼女達が立ち上げてくれて。そうやってRockers Islandを通じて自分の力を試して育っていって貰いたいですね。実際の話、"レゲエで食べてく"って言ったらアーティストやセレクターといったスポットライトが当たる側じゃないですか。でも "レゲエの裏方でも食っていける"っていうのを実証したいし、そんな人を育てていきたいと思ったんです。そういう意味でも幅広い事をやらなければならないんですね。
　
●そうやって色々な事をやっているけど、実際どの部分が好きなんだろ？
T：色々な事に手を出すと回らないんですけど、やっぱりレゲエについて総合的にやっていきたいんですね。勿論ショップは最初に出てきたものだし、Rockers Channelは媒体としてもそうだけど実際にインタヴューするのも面白いし、CDをリリースするのも、今までレゲエ界だけにいたのが、TsutayaやTower Recordsみたいな所と関係する事によって広がりができるし、どれが一番好きかは分からないですね。やっぱりレゲエに関わる事自体が好きなんでしょうね。

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